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【エリック】(真相ルート)

14  極上の演奏会へようこそ

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 バラ園で涙を流し続ける兄に私はすっかり動揺して、声をかけた。

「え~~と……ああ!! お兄様、何か弾きましょうか?」

 私が声をかけると、セドリック様が楽しそうに笑った。

「いいね!! 私もベルの演奏を聴きたいと思っていたんだ!! 聴かせてくれ!! エリックも聴きたいだろ?!」

 私たちが大袈裟に声を上げると兄が小さく笑った。

「はは。2人とも動揺しすぎだ。でもそうだな……ここで奏でるのにピッタリの曲があるな」

「ああ!! そうですね」

 私が頷くと兄がセドリック様の方を見た。

「セドリック、久しぶりに歌ってくれるか?」

「え?」

 兄の言葉に私は驚いてセドリック様を見ると兄が説明してくれた。

「セドリックはレアリテ国の声楽科の先生が太鼓判を押すほどのテノール歌手なんだ」

「えええ~~~~!! ぜひ、ぜひ聴きたいです!!」

 私がセドリック様に期待の籠った瞳を向けるとセドリック様が頭を掻いた。

「困ったな……でも、こんな機会もうないかもしれないし、久しぶりに本気で歌おうかな」

「ぜひ!!」

 それから私たちはバラ園で私たちのための演奏会を行った。

~~♪ザァ~~♪アイン~~♪クルナァルプ~アイン~~♪ラァシュイン~~♪

 セドリック様の歌声はとても力強くそして、優しく私たちを包んでくれた。

(ああ、やっぱり人の声も美しいわ……)

 私のヴァイオリンと兄のチェロとセドリック様の歌声にまるでバラまで生き生きと輝きを増した気がした。

 これが幸福なのだと、そう思えた瞬間だった。

+++++

 それから私たちは、3人でたくさん話をして、たくさん笑った。
 時間が過ぎ去るのが早くて、私たちはついつい話過ぎてしまった。
 まるで離れていた時間を埋めるかのように……。

 長い間話をして、もう月がだいぶ高くにのぼってしまった。
 話は尽きずに名残惜しいが明日は早いのでそろそろ寝る時間だった。

「おやすみ。良い夢を」

 セドリック様がサロンで私たちを見送ってくれた。

「おやすみなさい。セドリック様」

「おやすみ」

 セドリック様と別れて私と兄は部屋に戻った。
 私の部屋に着くと兄が呟いた。

「ベル……少しいいか?」

「はい」

 私たちはバルコニーに向かった。
 月明かりに照らされたバラは昼間とは違ってとても神秘的で幻想的な雰囲気だった。

「ベル……私はいつもどこかで怯えていたように思う」

「怯える? 何に怯えるのですか?」

 兄が月明かりに照らされて切なそうな壮絶に色気のある瞳を向けてきた。



「……運命」



 私はコツンと兄の肩に自分の頭を乗せた。

「それには私も怯えています。かなり怖いです。怖すぎてつらいです……でも」

 私は兄を見上げて笑いながら話を続けた。

「お兄様となら、なんとかなるんじゃないかとも思います」

 すると兄が驚いた顔をした後、嬉しそうに目を細めて私の頭に自分の頭をくっつけた。

「そうか」

「はい」

 そうして2人で小さく笑った。

+++++

 次の日。

 私たちはセドリック様に見送られて、無事に蒸気船に乗り込んだのだった。




【セドリック エピソード出現】 Episode CLOSE(・・・coming soon) 

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