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【エリック】(真相ルート)

13  アトルワ公爵領にて

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 卒業式が終わると私たちは隣国に行くことになった。
 隣国にはアトルワ公爵領から出ている汽船で移動することになるらしい。
 レアリテ国行きの蒸気船の出発は早朝なので、私たちは公爵領の屋敷に宿泊することになったのだ。

「いらっしゃい、ベルナデット!! エリック!!」

 私たちがアトルワ公爵領の屋敷に到着するとこの屋敷を管理してくれているセドリック様が笑顔で迎えてくれた。

「こんにちは! セドリック様。お世話になります」

 私がお礼を言うとセドリック様は嬉しそうに微笑んでくれた。

「こんにちは。ふふふ、なんだかここにベルナデットがいるのは不思議だな。疲れただろ? 部屋に案内するよ」

「お願い致します」

 私と兄はセドリック様に部屋に案内してもらった。
 まず、私の部屋に案内された。

「ここだよ。好きに使って」

「はい」

 私は部屋に入って、窓の外の景色に目を奪われてしまった。

「わ~~~♡ 凄い!!」

 窓からは美しく管理されているバラ園が見えた。
 するとセドリック様が笑顔を向けながら言った。

「後で散歩してみるかい?」

「ぜひ!!」

 私が頷くと兄が慌てた様子で話に入ってきた。

「私も一緒に行くからな」

 私はなぜ兄がそんなに慌てているのかわからずに首を傾げたが、すぐに笑顔を見せた。

「はい。もちろんです」

 私と兄のやり取りを見ていたセドリック様が小さく笑った。

「ふふふ。じゃあ、荷物の整理が終わって一息ついたら行こうか」

「はい」

 セドリック様と兄が部屋を出ると私は荷物の整理はそこそこにバルコニーに出た。

「わ~綺麗」

 バラ園には見事な程の赤いバラが咲き乱れ、バラの芳香がここまで漂ってきていた。
 
(いい匂いね~)

 私はゆっくりと目を閉じた。
 
 するとドアがノックされ、「どうぞ」と返事をすると兄とセドリック様が部屋に入って来た。

「ベルナデットの声が聞こえたからお邪魔したんだ。バラ園に行くかい?」

「はいぜひ!!」

 こうして私たちはバラ園に向かった。

+++++

「凄い!! 真っ赤なバラがこんなに!!」

 目の前には真っ赤なバラが咲き乱れていた。
 まるでその尊厳な姿を見せつけるように咲く姿は圧巻だった。

「確かにこれは見事だな」

 兄も大輪のバラを見ながら目を細めた。
 私は何気なくセドリック様に尋ねた。

「セドリック様は赤いバラがお好きなのですか?」

 私の問いかけにセドリック様は切なそうな笑顔を見せた。

「大切な人に赤いバラを贈ると約束したんだ」

「まぁ!! 素敵ですね!!」

 私が目を輝かせるとセドリック様は困ったように言った。

「そう……かな?」

「はい」

(バラを大切な人に贈るなんてセドリック様は素敵だわ~~贈られる方もこんなに美しいバラを貰ったら嬉しいでしょうね~~~)

 私がうっとりしていると、兄が急に顔色を変えた。

「もしかして、あの時の3本のために……」

 兄が3本と呟いて顔を青くした。
 私は不思議に思ったが、ふと頭の中に浮かんできた。

「赤いバラを3本贈るというのは確か……『愛している』って意味ですよね」

「知ってるのか?」

「覚えているのかい?」

 兄とセドリック様が驚いたように言った。
 私はそんな2人の反応に驚いて、戸惑いながら答えた。

「ええ。どうしてでしょうか……知っていました」

 すると兄がゴクリと息を飲んだ。

「では、ベル。『赤いバラを108本』はどんな意味だ?」

「そうですね……『永遠108(とわ)の愛を君に、私と結婚してください』だったと思います」
 
 私はなぜそんなことを知っているのかわからなかったが、すぐに口から出ていた。
 知っていたことがそんなにも驚きなのか兄もセドリック様も石のように固まってしまった。

「(では……セドリックが言ったベルが『お嫁さんになる』と言ったのはこういうことだったのか……2人はすでにあの時に結婚の約束をしていたのか……)」

 兄が呆然を立ち尽くし、初めに意識を戻したのはセドリック様だった。
 セドリック様は美しく微笑んでくれた。

「ベルナデット、今の君は誰からこの赤いバラが欲しいんだい?」

 私はそう聞かれて少しだけ悩んで答えた。

「私は……バラはいりません。だってこんなに綺麗に咲いているんですもの!! 切ってしまうなんてもったいないです。それにバラを貰っても貰わなくても、私はお兄様を愛しているので……いつか結婚したいと思っていますので……」

「あはははは!!」

 するとセドリック様はとても楽しそうに笑った。
 私はどうしてセドリック様がそんなにも笑うのか理解が出来なかった。
 困ってしまって、兄に助けを求めるために兄の方を見ると私は隕石でも落ちてきたのかというくらいの衝撃を受けた。

「お、お、お、お兄様?! ど、ど、どうされたですか????」

 気が付くとお兄様の目からは涙が次々と流れてきた。
 ピクリとも動かず、涙を流し続ける兄の姿に私はオロオロするしかなかったが、セドリック様が兄の肩をポンと叩いた。

「エリックとベルナデットの間には特別な物など何もいらないみたいだ。……妬けるな」

 セドリック様の言葉に兄はさらに涙を流した。

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