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【エリック】(真相ルート)

11 訓練! 訓練!! 訓練!!!

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「ベルナデット様。今ので恋歌と言えますか? もっとこう、抑えられない恋情を全面に出して下さい」

「抑えられない恋情……はい。やってみます」

 あれから私はコンラッド君と特訓をしているのですが……。
 コンラッド君はレアリテ国の国立音楽学園という世界でもトップクラスの学園をすでに主席に近い成績で卒業し、さらには私の指導のためにやってきたと正体を明かした途端。

 コンラッド君は豹変しました……。

 私はサミュエル先生以上に厳しい練習に連日、真っ白になっていた。
 私とコンラッド君の練習を見ていた他の生徒はみんな蜘蛛の子を散らすように去って行った。

+++++

「つ、疲れました……」

 私は音楽学院から戻るとドサッと、ソファー倒れるように座り込み隣に座った兄の肩に遠慮なく頭を置いて甘えた。

「じゃあ、キス訓練は少しにするか?」

 兄に腰を抱き寄せられて甘えていると、兄にキス訓練のことを言われ、私は少しだけムッとした。

「キス訓練って、私が女王を継ぐ者として宣言する時に必要な儀式だったんですね……通りで恋愛小説のように甘い雰囲気にならないはずです!!
 私だけドキドキして損しました!! お兄様にとってはただの儀式の練習だったなんて!! 酷いです!!」

 ヴァイオリンの練習で疲れていることもあって私はつい兄に当たってしまった。
 すると兄が何かを考えて真剣な顔を見せた。

「甘い雰囲気か……。ん~~~。そうだな~~。ん~~。ベル……。
 だがキスが気持ちいいということを覚えてしまうと、他の人の前でベルの可愛いキスで蕩けた顔を晒すことになるだろう?
 初めて廊下でキスをした時つい本気のキスをしてしまってお前の瞳がウルウル濡れ、トロトロと可愛くとけてしまいそうな顔になった時、他の人間にこんなベルの顔を見られるのかと思うと、私は恐怖を覚えたんだ。
 出来れば私はベルのそいう顔は誰にも見せたくはないのだ。
 だからその……本気のキスではなく……しばらくはキス訓練で耐えてくれないだろうか?」

 確かに初めて兄と廊下でキスをした時、立てなくなってしまうほどだったが、まさかあの時、ウルウル、トロトロとしていたなんて!!!

 恥ずかし過ぎる!!

 私は恥ずかしく過ぎて顔を真っ赤にして頭を抱えた。
 それを見た兄が困ったように顔を覗きこんできた。

「やはり、気持ちいいキスもしたいか?」

 私は顔を上げて全力で首を振った。

「いえ!! キス訓練のままで充分です!!」

 すると兄がほっとした顔をした。

「よかった。ようやく使用人の前では平気でできるようになったが、当日は何百人もの人に見られるからな……」

 それを聞いて私は今度は青くなってしまった。

「何百……」

(そうか……だから兄は今まで敢えて人前でキス訓練してたんだ……)

 結局全ては私のためだが、どこか釈然としなかった。
 
(それにしたって、私だけドキドキして、兄にとっては練習だったなんて!!)

 兄が私のためにしてくれているのは、わかってはいるのだが、やっぱり私ばかりがキスにドキドキして恥ずかしいし、寂しい。

「お兄様は、そんなキスでいいのですか?」

 私が複雑な想いで尋ねると、兄が優しく微笑んだ。

「私もつらいから、このキス披露が終わったらお願いがあるんだ。聞いてくれるか? ベル」

「なんですか?」

 私が兄の方を見ると兄が私の耳に唇を寄せた。

「ベル………(・・・・・・・・)」

 私はその願いを聞いた途端立ち上がると、ベットに潜り込んだ。
 兄が私を追ってベットの端に座ったが、どうしても顔を見せられなかった。

「ダメか?」

 兄の切なそうな声に、私は顔を少しだけ出すと小声で言った。

「………………わかりました」

 すると兄に布団越しに抱きしめられた後、兄は少しだけ出た私のおでこにキスをして蕩けそうな笑顔と甘い声で囁いた。

「楽しみにしている。ではな……おやすみ」

 そう言うと、兄は部屋から出て行った。
 私は兄が居なくなるとそっとベットから出て窓の外を眺めた。

 そして兄の願いを思い出して小さく呟いた。


「…………エリック……好き」


ーー……兄の願い……それは。


『ベル、私の名前を呼んで。好きだと言って。一晩中キスしていたい。狂おしい程……君が……欲しいんだ』


 初めて呼んだ愛しい人の名前はとても甘美で私は一瞬で全身の力が抜けてしまった。
 
ーー……早くその日が来るといい。

 私はそう願ってしまっていた。






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