上 下
95 / 145
【エリック】(真相ルート)

6 真相

しおりを挟む


 その日の夜。

 私は兄と夕食を済ませると父の帰りを待つことにした。どうしても、兄の一存で話せない内容らしい。
 ……兄よ。一体、どんな秘密を隠しているんだい? 私は聞くのが怖いよ!!

 父がお城から見たこともない男性と一緒に戻って来た。

「今戻ったよ。待たせて悪かったね」

「おかえりなさいませ」

 私は頭を下げると、父の隣にいた男性に視線を向けると、男性と目が合ってにっこりと微笑まれた。

「ベルナデット本当に大きくなったな~~。本当にあの方によく似てるな~」

(私を知っているの??)

 私が不思議そうに見ていたことに気づいて、父が困ったように笑った。

「そうか……ベルは覚えていないのか? セドリックだよ。私の弟だ」

(父の弟?! 若くない??)
 
 年はどう見ても兄と同じくらいだった。
 私が穴の開くほど男性を見ていると、男性が冗談っぽく悲しいそうな顔をした。

「覚えてないんだ~。大きくなったら僕のお嫁さんになるって言ってたのにな~、僕はちゃんと約束を守って君が卒業するまで待ってたのに……悲しいな~」

「え?」

 私が固まっていると、兄が溜息をついた。

「そんな昔のことを言って困らせないで下さい。それに約束なんてしていない。あなたが勝手に言っていただけだ。それに、あなたなんでしょ? 急にコンラッドなんて寄越して、ベルを混乱するように仕向けたのは……」

「な~んだ。バレてたんだ。でも、知りたいと思ったタイミングで現れた方がドラマティックだろ? それに僕がいきなり行くより、コンラッドに行ってもらって覚悟した方がベルナデットにとってもいいだろ?」

 父の弟が、「ふふふ」と楽しそうに笑った。

「そんなことで、コンラッドを動かすなんて一体どんな弱みを握っているですか」

 兄が心底嫌そうな顔で父の弟を見ながら言った。

「別に~何も。コンラッドが親切なだけだよ~~~♪ 
 そんなことより、早くベルナデットに教えてあげようよ。
 ……エリックにまんまと乗せられて選んでしまった彼女の道をさ♪ 
 すでにクリストフ殿下との婚約も破棄されたんだ。もう戻れない彼女の選んだ道を……ね?」

 父の弟が少しだけ怒りを含んだ目で冗談っぽく言った。

(あれ? セドリック様もしかして怒ってるの?)

「っく……人聞きが悪いことを!!」

 普段兄は誰かに声を荒げることはほとんどないが、今日は声を荒げていた。

「事実だろ? 何も知らない孤独な彼女を翻弄して説明もないまま篭絡したのはさ」

(え? え? え? 何? 何なの? この2人仲が悪いの??)

 私がハラハラしていると、父が溜息をついた。

「そこまでにしておけ。ベルナデット、君のことを知りたいのだろう? 
 本当は卒業式が終わってから伝えるはずだったが、ここ最近のベルナデットとエリックの様子を報告したら、あの方からのお許しも出たしね」

(ここ最近の私たちって……)

 私は頭の中にここ最近の兄との様子を思い浮かべた。

ーー……サロンで膝乗りキス三昧。

ーー……寝室のベットで朝からキス三昧。

ーー……学校に行く前にエントランスでキス三昧。

ーー……帰って来て部屋まで我慢できずにそのままエントランスでキス三昧。

ーー……寝る前までキス三昧。

 私はここ最近の所業に思わず土下座をしたくなった。

(公爵家で働く皆様!! 風紀が悪くてごめんなさい!!)

 私が呆然としていると、兄にそっと手を繋がれた。

「ベル、行くぞ。一緒に考えてくれるのだろ?」

 兄が不安そうな顔を隠して笑顔で話しかけてくれた。
 自分だって不安なのに精一杯その不安を隠して私のために笑ってくれる兄に私は思わず手をきつく握り返した。

「ええ、もちろんです」

そうして、私たちはサロンへと向かったのだった。

+++

 サロンに着くと、私の隣には兄。そして、私の前には父、そして父の隣に父の弟という風に座った。
父はお茶の準備をさせずに、すぐに人払いをして私の顔を真剣に見て言った。

「ベルナデット。いえ、ベルナデット様。
 あなたはレアリテ国38代目女王である、ブリジット女王陛下のご息女で在らせられます」

・・・・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・え?


父の言葉を理解出来ずに私は石のように固まってしまった。
目の前には、真剣な父の顔。その隣には怖いくらいに私を見つめる父の弟であるセドリック様の顔。

私はギギギと音がしそうな様子で首を兄に向けると兄も心配そうな顔で私を見ていた。


ーー……これは冗談じゃないな。


みんなの真剣な様子にこの話がドッキリや冗談といった類の話ではない事を悟り、私はもう一度父の言葉を思い出した。

『あなたはレアリテ国38代目女王である、ブリジット女王陛下のご息女で在らせられます』

女王陛下のご息女?!

あれ? ご息女って娘ってことよね。

つまり……女王陛下の娘?

え? ……誰が?

・・・・・・・・・・・私が?!

私が女王陛下の娘? 



「ええええええ~~~~~~~!!!」


私の大きな声は屋敷中に響き渡っていたのだった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。 お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。 これからどうやって暮らしていけばいいのか…… 子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに…… そして………

乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

雨夜 零
恋愛
ある日...スファルニア公爵家で大事件が起きた スファルニア公爵家長女のシエル・スファルニア(0歳)が何者かに誘拐されたのだ この事は、王都でも話題となり公爵家が賞金を賭け大捜索が行われたが一向に見つからなかった... その12年後彼女は......転生した記憶を取り戻しゆったりスローライフをしていた!? たまたまその光景を見た兄に連れていかれ学園に入ったことで気づく ここが... 乙女ゲームの世界だと これは、乙女ゲームに転生したモブ令嬢と彼女に恋した攻略対象の話

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

処理中です...