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【エリック】(真相ルート)

3 水面下での計画

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「あ、そうだ言い忘れていた。
ベルと殿下の婚約は近く解消される予定だ。」

「……え?」

兄は何気なく私に爆弾を落とした。

「私を夫にするのだろう? 当然ではないか」

「そうですね~。いくらベルナデット様と言えど、一国の王子とエリックの両方を配偶者にすることは出来ないでしょうからね~」

ルーカス様も「うんうん」と頷いていた。

「あ、いえ。婚約破棄など、そんなことができるのですか?」

私が尋ねるとルーカス様が「ふふふ」と笑った。

「大丈夫ですよ。すでにいつでも婚約破棄の流れになるように準備してございます。
国民も、国王陛下も、ベルナデット様も、新しい御婚約者様もみんな幸せになる最高の円満婚約破棄です!!」

「みんな幸せになる円満な婚約破棄……」

私は思わずルーカス様の言葉を復唱してしまった。

「まぁ、悲しむ人がいるというのなら、それは嫉妬にかられ、あなたの活動範囲を年々制限しようと躍起になっていた彼だけでしょうね~」

ルーカス様は両手の手のひらを広げると、手を上に上げて首を傾けた。

「え? そんな方がいらっしゃるのですか?」

するとルーカス様は美しく笑った。

「はい。あまりにも愛を手放す恐怖に怯えてしまったために、誰よりも嫉妬深くなってしまった。
絶対に逃がさないように誰にも見られないように閉じ込めようとした。
ですが、そのせいで大切で大事で自分の全てだったカナリアに逃げられてしまった哀れな青年がね、いるんですよ」

「そ、そうですか?」

私には嫉妬深いという人が誰なのか全くわからなかった。

「嫉妬深いというと、お兄様のように思うのですが?」

私はつい、思ったことを口に出してしまった。
すると兄は困ったように笑い、ルーカス様は楽しそうに笑った。

「あはは。確かにエリックは嫉妬深いですがね……」

するとルーカス様は切なそうに笑った。

「この男は、あなたを閉じ込めようとしたことは一度もないのですよ? ベルナデッド様?」

「え?」

ルーカス様が目を細めて私を慈しむような優し気な瞳を向けてくれた。

「ふふふ。いつも、どんな時でも、あなたを最優先にし、ただあなたの幸せのためだけに動く。自分のことなんてお構いなし。見てるこちらがイライラするくらい献身的でした。
だから私もね、力を貸したのです。」

ルーカス様の言葉に兄は耳を真っ赤にして、会話を止めに入った。

「ルーカス。余計なことを言うな。
今回の報酬に目の前でベルの演奏を聴くために来たのだろう?
無駄口を叩いていると、曲を聞く時間が減るぞ?」

「それはいけませんね!!」

ルーカス様が大げさに嘆くようなお姿を作って見せた。

どうやら、私はここでヴァイオリンを弾くために呼ばれたらしい。
それに気が付けば、私のヴァイオリンはすでに部屋に準備してあった。
しかも、大量の楽譜も用意してあった。

(さすが……お兄様。用意がいいわ……)


私は楽譜を数冊、手に取るとルーカス様に向かって微笑んだ。

「リクエストはありますか?」

「いいのですか?」

するとルーカス様は胸元から、とても長い紙を出された。

「どうか、この中の曲からお願いします!! 上から順番に聴きたいという希望の強い曲です!!」

私はルーカス様のリクエストに目をうつした。

(うっ!! 練習無しでこれを? 中々……鬼なリクエストね……)

上位の曲はどれも数日は弾き込んでから望みたい曲ばかりだった。

私はリクエストのトップに書かれている楽譜を手に取った。

「おお~~~!! それを弾いて頂けるなんて!! 暗躍、頑張ってよかった!!」

(ん? 暗躍? 今、一般的ではない単語を聞いたような?)

私が首を捻っていると、ルーカス様の後ろに兄が座った。
兄は私の持つ楽譜を見るとそわそわしていた。

(ふふふ。お兄様、この曲好きだもんね)

私は、ヴァイオリンを構えた。

「では」

私はヴァイオリンを夢中で弾いた。
ルーカス様も兄も音の世界に入ってくれていたように思った。

ふと兄の視線を感じて目を向けるとまるで溶けてしまいそうな顔で私を見ていた。
私もそれに答えるように音色で愛を返した。

その日私は延々と曲を弾き続けた。
ルーカス様は飽きることもなく聴き続けてくれた。

弾き終わると、ルーカス様に涙を流されて感謝された。
直接、感謝されたり感想を言われることは少ないので私まで泣いてしまった。

「ベルナデット様!! また必ずあなたの演奏を聞きに行きます!!」

「ふふふ。ありがとうございます」

そう言って、ルーカス様をお見送りした。
私は見送った後、2人になると兄の背に抱きついた。

「ど、どうしたのだ? 突然」

お兄様は驚いていたが、私はお兄様を離す気はなかった。
どうしても聞きたいことがあったのだ。

「ルーカス様のおっしゃっていた、ご自分を犠牲にするとはなんです?
それはたまにお兄様が数日間いなくなっていたことと関係あるのですか?」

すると兄が小さく笑った。

「いや。私がいなくなっていたのは、私のためだ」

「え?」

私は兄の顔を見ようと手を緩めた。
その瞬間兄に抱き上げられた。

「ちょっと!! お兄様」

「ああ、やっと捕まえた。ルーカス。遠慮する気は欠片もなかったな。
私はずっと早くお前にキスをしなくてはとそればかり考えていた」

「キスをしなくては?」

「そうだ。あんなにヴァイオリンで情熱的にお前に愛を語られて耐えた私の身にもなれ。
……それに、今日の分まだだろ?」

「……朝しました」

私は小声で答えた。
すると兄は私を抱いたままキスをした。

「~~~~~~~!!!」

「あんなので足りるわけないだろ?」

「お兄……」

私は声を出す隙もなくまた唇を奪われてしまったのだった。






それから数日後。

クリス様と、大国ラルジュ国の王女様の婚約が決まったと告げられた。
それにより事実上、私とクリス様の婚約も同時に破棄されたのだった。












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