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【クリストフ】(王妃ルート)

14 湖畔デート(後編)

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湖畔の風というのはとても穏やかで、私は思わず目を閉じた。

(気持ちいい)

王宮内にも風の通る場所はあるがここのように爽やかな風は吹かない。

(ああ、本当に気持ちいな・・・)

私は1人湖畔の風を感じていた。




それというのも・・・・。



「なるほど、確かにそうすればもっと人は王都に留まろうと思うかもしれないな」

「ええ。現在物資は十分にございますし、隣国との関係は良好です。
戦の蓄えをする必要はありません。
今こそ、文化、芸術、学術を発展させるべきです。
必ずやこの国はもっと豊かになります!!」


クリス様もルーカス様も聡明な方々だ。
それにお2人は心から国のことを考えておられる。
そんな2人が出会ったら・・?



意気投合しないはずがなかったのだ。


(ふふふ。
一生懸命この国の事を考えている2人を見るのは嬉しいな。
2人とも本当に素敵だな・・)


私は湖の景色から2人の様子に目を移して微笑ましく思っていた。

「楽しそうだね、ベル」

ルーカス様と真剣に話をしていたクリス様が目を細めて私を見ていた。

「ベルナデット様。申し訳ありません。
私としたことが、女性に退屈させるなど!!」

ルーカス様が慌てて私にあやまってきた。

「ふふふ。ルーカス様、クリス様の言う通り、私は楽しんでおりました。
退屈などしておりませんわ。
お2人のお話するような国になるのが待ち遠しいです」

「待ち遠しいですか?」

ルーカス様が首を傾げた。

「ええ。クリス様とルーカス様。
お2人のような才気溢れる方々が本気で望む未来が実現しないはずはございませんもの。
そのような国を見るのが、ただ楽しみです」

するとルーカス様が困ったように頬を掻いた。

「こ、これは・・・クリス様。
どうやら我々の近未来は恐ろしく多忙になりそうですね。
ベルナデット様が証人となっては夢物語で済ませるわけにはいきませんね」

クリス様も困ったように笑った。

「そうだな・・ルーカス、共に先程の話を実現するべく尽力してくれるか?」
「もちろんです。
ですがベルナデット様は男をその気にさせるのが上手いですね。
殿下が溺愛される理由がよくわかります」

(え?溺愛??)

私はまさかそんな言葉が出るとは思わずにルーカス様を見た。

「おや?ふふふ。ベルナデット様。
あなたはクリス殿下に溺愛されていますよ。
城の者は皆、殿下の溺愛のように目じりを下げております」


なんとなく好かれているとは思っていたが、クリス様はずっと私に触れようとはしなかったし、部屋にだってずっと行ったことはなかった。
キスだって最近までしそうな雰囲気もなかった。
むしろスキンシップというなら兄との方がしていた気がする。
だからそんなに愛されているとは思っていなかった。

「え?そうなのですか?」

私が驚いてクリス様の顔を見ると、クリス様は驚いた顔をしていた。

「そうなのですかって・・・知らなかったの?」

私とクリス様が驚いて固まっていると、ルーカス様の肩が震え出した。
私たちはそんなルーカス様に視線を移した。

「くっくっく・・・はははは!!あはははは!!!」

するとルーカス様が大きな声で笑い出した。

「あはは。すみません。
あんなにクリス様に執着されていて全く気が付かないなんて!!
あははは。これはエリックのヤツ。
よっぽど気づかせないように努力していたのでしょうね。
あははは」

私たちは唖然として笑うルーカス様を見ていた。

「あははは。あ~久しぶりにこんなに笑ったらお腹が痛くなりました」

私たちがムッとしてルーカス様を見ていると、ルーカス様が私を真剣に見つめた。

「ベルナデット様、あたなは殿下に愛されていますよ。
もうかなりの溺愛です。
重度の溺愛です。
きっともう逃げられません」

私は思わずクリス様を見た。

「そうなのですか?」

クリス様は顔を真っ赤にされて、怒っているような困っているような照れているような複雑な表情を浮かべ、そして小さく呟くように言った。

「うん。絶対に逃がさない」
「!!!!!」

クリス様の声は小さかったが、意思の強さを感じて、クリス様が本気だということがわかった。

(えええ~~~~~!!!
そんな真剣な顔で、『逃がさない』って!!
いつも余裕のあるクリス様らしくない!!
もしかして素なの?
今のクリス様の素???)

私がクリス様の今までにない反応にパニックになっているとルーカス様が「ふふふ」と笑った。

「逃がさないそうですよ?
どうします?ベルナデット様?
怖くないですか?
私と今のうちに逃げますか?」

私は真剣な顔で2人を見た。

「逃げませんよ。
私がクリス様の隣に居たい・・ですから」

「え?え?ベル!!それ本当?!」

クリス様が首まで真っ赤になって口をパクパクさせていた。
私は頷いて返事をした。

「ははは。
これはこれは!!
よかったですね。クリス様!」

「え?あ、うん」

そんな話をしながら私たちは食事を終えた。
食事が終わってレストランを去る時に、クリス様がルーカス様に手を差し伸べた。

「ルーカス。その、今まで色々と悪かった。
今後とも貴殿の力を借りたい。
貸していただけるだろうか?」

ルーカス様は綺麗な笑顔を作った後、クリス様の手を握った。

「有難きお言葉。
このルーカス・リトア、お2人に誠心誠意お仕え致します」
「感謝する」

私は2人の様子を嬉しくなりながら見ていた。
するとルーカス様がこちらに歩いて来て、私を見て微笑んだ。

「やはりあなたは笑顔が一番よく似合います」
「ありがとうございます。ルーカス様」
「ベルナデット様、どうかお幸せに」
「はい。ルーカス様も!」

そして私たちはその場を後にした。



外に出て、少し雑貨屋やガラス細工のお店を見ようということになった。
お店に向かう途中、人通りがあまりない道で、私はクリス様の腕に手を置きながら言った。

「私、愛されていたんですね」

すると突然クリス様に抱きしめられていた。
あまり人通りがないとはいえ、私たちの護衛の目はあった。

「クリス様!!ここ人目が!!」

私が戸惑っていると、耳元でクリス様の切なそうな声が響いた。

「こんなにも愛してるのに、ちっとも伝わらないなんて!!
まぁ、空回りばかりしてたしな・・・カッコ悪いな。
好きだよ。ベル、愛してる」

私もクリス様を抱きしめ返した。

「私も好きです」

「「ふふふ」」そして私たちは顔を見合わせて笑った。
それから私たちはのんびりと雑貨屋やガラス細工のお店を見て、湖を後にした。




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