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【クリストフ】(王妃ルート)
13 湖畔デート(中編)
しおりを挟む「クリス様、向こうに綺麗な花が咲いていますわ」
「じゃあ、近くまで言ってみようか」
私は今、クリス様の漕ぐボートに乗っていた。
白状します。
気持ち悪いって引かないで下さい。
いえ、引いても仕方ないことすので、引いたらせめて戻って下さい。
では・・・失礼します。
し・あ・わ・せ・です!!!
クリス様、ほんとっっっ!!素敵です!!
私は普段、執務をしているクリス様か、ソファーに座ってくつろいでいるクリス様しか見れない。
もちろん、それもカッコいいが、これは全然次元の違ったカッコ良さだった。
(あ~~~クリス様の腕、たくましい!!
それに汗が輝いて本当にいい!!
剣の稽古や乗馬の訓練で身体を鍛えていらっしゃるのは知ってたけど!!
ボートを姿勢よく漕ぐ姿は本当に素敵すぎる~~~)
私は実際に身体を動かしているクリス様を見る機会はほとんどないのだ!!
しかも今はボートを漕ぐために、上着を脱いで、シャツを腕まで捲り上げている。
私は大人になったクリス様の腕を見たのは初めてだ!!
「ベル、ベル。着いたよ?」
「え?ああ!!素敵ですね」
ついぼんやりとクリス様に見とれていた私はクリス様の声で現実に戻ってきた。
(しまった!!つい!!クリス様に見とれていた!!
だってカッコいいんだもん!!
普段、腕なんて見れないし!!)
私が1人でドキドキしていると、クリス様がニヤリと笑って私に顔を近づけてきた。
「惚れ直した?」
「え?!」
私は真っ赤になりながら、「はい」と頷いた。
するとクリス様が嬉しそうに私を見た。
「ベル、キスして?」
「ここでですか?」
「うん。ここなら死角になって見えないから」
「・・・・」
私が目を閉じようとするとクリス様が色気のある声を出した。
「ベルからして?」
「私から?」
クリス様はオールを少し持ち上げて言った。
「ほら、手塞がってるから、早く」
「う~~ん。そうですね」
私は自分からクリス様に近づいた。
クリス様は嬉しそうにそれを見ていた。
私がクリス様の唇に少し触れるような口付けをして離れようとするとクリス様に抱きかかえられた。
そして、私はクリス様の膝に抱きかかえるように座らされ、また唇を奪われた。
キスが終わると私はクリス様を睨んだ。
「酷いです。オールから手を離しても大丈夫なんですね?」
クリス様は私を抱きしめてもう一度キスをすると嬉しそうに笑った。
「うん。このオール固定されてるから落ちないんだ。
ごめんね、ベル。
ベルが私に見とれてたみたいだからつい嬉しくて」
私は真っ赤になってクリス様から顔を背けた。
(う~~バレてた!!恥ずかしい~~)
クリス様は上機嫌だ。
「ふふ。恥ずかしがらなくていいよ?
あ~~たまには外でデートいいな~~。
ベルは外にいる私が好きなの?
それとも私の腕が好きなの?」
私は思わず目を見開いてクリス様を見た。
(え?腕を見てたのバレた?!恥ずかしい!!
本当に私なにしてるの?!恥ずかしい!無理!!)
「え?あ、その、身体を動かしているクリス様を見たのは初めてですし、腕を見たのも初めてで、凄く男らしい腕で、もっと見たい・・いえ素敵・・いえ、日々訓練されて偉いな~~と思っていたのです!!!」
私は動揺して自分が一体何を言ってしまったのかわからなかった。
クリス様は顔を真っ赤にするとニヤリと笑った。
「今日はいい日だったな~。
ベルが私が思う以上に私のことが好きなことがわかったからね」
そして私の耳元で妖艶に囁いた。
「結婚したら、全部見せるから待っててね」
(全部って・・・・?)
「ええ~~~~!!いえ、その、そんなつもりじゃ!!」
クリス様はもう一度私にキスをすると嬉しそうに目を細めた。
「ベル。好きだよ」
私は穴があったら入りたいような、ここから逃げ出したいような、いっそのこと湖で頭を冷やしたいような複雑な思いで答えた。
「わ、私も、す、好きで・・す」
私はそれから上機嫌に鼻歌を歌い出したクリス様と一緒に湖を楽しみ食事に向かったのだった。
・
・
・
「どうしてここにいるんだ?」
クリス様が不機嫌な様子で声を出した。
「はい。ここの支配人から殿下とベルナデット様がおいでになる連絡を受け、ご挨拶に伺いました。」
「ルーカス様!!お久しぶりです」
「ベルナデット様!!お久ぶりです。
普段のドレスも美しいですが、そのような装いもまた素敵ですね」
今日の私はドレスではなく、動きやすいワンピースを来ていた。
「ありがとうございます」
ルーカス様は私の手に口付けた。
クリス様が一瞬眉をひそめたが、すぐに普段の顔になった。
「そうか、ここはリトア公爵領か・・・出迎え感謝する」
クリス様が普段の威厳のある口調で言った。
「有難きお言葉です」
ルーカス様がクリス様に頭を下げた。
(ああ。そうか、ここを発展させた領主様って!!)
私は笑顔でルーカス様を見た。
「もしかして、この湖をこのように発展させたのはルーカス様ですか?」
「さすが御慧眼ですね。その通りです」
「そうなのか!素晴らしい手腕だな・・・見違えた」
(え?クリス様がルーカス様を褒めた?!)
私とルーカス様が驚いてクリス様を見た。
するとクリス様が困ったように笑った。
「私とていつまでも、ルーカスに妬いてばかりの子供ではない。
このように皆のために見事に発展させているのは素直に素晴らしいと思うしな。
ルーカス。共に食事でもどうだ?
私も一度、お前とゆっくり話をしてみたかったのだ」
それを聞いて、私とルーカス様は顔を見合わせて笑ったのだった。
「ありがとうございます、お言葉に甘えさえて頂きます」
ルーカス様が心から嬉しそうに笑った。
ルーカス様にとってもクリス様の成長は嬉しいことなのだろう。
(あんなに険悪な仲だったのに!!
それなのに!!一緒に食事だなんて!!)
ルーカス様はリトア公爵家の次男だ。
だがリトア公爵家のご長男は隣国に留学中で、その国の高位貴族の令嬢と懇意にしているとの話を聞いていた。相手の方は1人娘で婿を迎える必要があるらしい。
もしご長男が隣国に行かれたら公爵を継ぐのはルーカス様だ。
そのルーカス様とクリス様の仲が悪いのは国としては良くない状況だった。
それに私としてもルーカス様が頼りになることは十分わかっているので、2人が協力すればもっと国はよくなると思えていたので、仲良くしてほしかったのだ。
私も思わず笑顔になってクリス様を見上げた。
するとクリス様が少し拗ねたように言った。
「(ルーカスと一緒に食事をするのが)そんなに嬉しいの?」
私は笑顔で頷いた。
「もちろんです。
クリス様もルーカス様も大変優秀でいらっしゃいます。
きっとお2人がいるこの国はもっと良くなると思います」
「「・・・」」
私の言葉にクリス様とルーカス様が驚いた顔で私を見ていた。
そして、クリス様が「ははは」と笑うとルーカス様も「ははは」と笑い出した。
「ははは。本当にあなたはこの国の王妃に相応しいと思います」
ルーカス様が嬉しそうに目を細めた。
「うん。私もいつまでも幼いままではいられないな。
ベルに負けぬよう精進しよう。
では、食事にしようか」
「ええ。どうぞこちらです」
「????」
私は訳のわからないまま食事に向かったのだった。
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