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【クリストフ】(王妃ルート)
11 王妃様と一緒に
しおりを挟む今日は、王妃様と一緒にセッションをする約束だった。
王妃様とは王妃教育でお世話になり、何より音楽への造詣が深い方なので、音楽芸術学院の入学試験でも大変お世話になった。
「ベルナデットちゃん!待っていたわ。早速合わせましょう。」
「はい!!よろしくお願いします。」
王妃様とのセッションはいい意味で緊張感が漂っていた。
王妃様はとてものんびりしているように見えるが、ピアノはどこまでも楽譜に忠実だ。
作曲家の求めた音を完璧に再現することを目標にしている。
なので最初に入念に曲想について検討しあう。
この時間が私はたまらなく好きなのだ。
「ベルナデットちゃん。今のいいと思うわ。それでいきましょう。」
「はい!!」
何度か調整して、王妃様との曲想を合わせて演奏すると、まるで違う世界に連れて行かれるような錯覚に陥ることがある。
それほど王妃様は作曲家の意思を尊重しようとする方なのだ。
王妃様とセッションをした後は、いつもお茶会という名の音楽談義になる。
私はいつもそれを楽しみにしていた。
その日も音楽の話で充分に盛り上がった後、ふと私を見て優しく微笑んだ。
「ベルナデットちゃんも、もうすぐ16歳か~。早いな・・。」
「はい。もう16歳になります。」
すると王妃様が目を細めた。
「ふふふ。懐かしいな。
私たちもみんな16歳で結婚したのよ?」
「みんなですか?」
王妃様がご自分のことを話されるのは珍しいので、私は不思議に思った。
「実はね、先日トリスタン様からご連絡があって、あなたとクリスの結婚が正式に決まったの。」
「え?」
私はそれに驚いてしまった。
てっきりもう正式に結婚が決まったと思っていたので驚いてしまった。
「私、うっかり余計なことまで言っちゃいそうで今まであなたにちゃんとお話できなかったんだけど・・もうこれで心置きなく話せるわ。」
「え・・・?」
私は王妃様の言葉に驚いた。
「ふふふ。私たち3人、私とブリジット様、エリザベス様は、オレオル学園時代の同級生なの。」
「え?」
「そこで出会って、3人で音楽に夢中になって、音楽でこの国を変えようってずっと頑張ってきたの。」
「音楽で国を・・?」
王妃様は嬉しそうに笑った。
「そう。あの頃はただ毎日必死だった。
でも今思うと、私が胸を張って誇れる月日になったわ・・。ふふふ。」
「素敵ですね。」
「ありがとう。でも結局、私たちだけでは成し遂げられなくて、あなたたちに随分と頼ってしまったわ。ベルナデットちゃん。本当にありがとう。」
王妃様が頭を下げた。
「王妃様、おやめください。」
すると、王妃様が優しく微笑んだ。
「ねぇ、ベルナデットちゃん。私たち親子になるでしょ?
私のことは母と呼んではもらえないかしら?」
「・・・義母上・・?」
「ん~~~。出来れば、お母様がいいわ~~。」
「・・・お義母様。」
王妃様がにっこりと笑った。
「ありがとう、ベルナデットちゃん。
これで私もあなたの母の1人なのね・・。」
「え?」
「ベルナデットちゃんは、ブリジット様とエリザベス様、そして私、3人の大切な娘なのよ。」
私の中に何か温かい感情が流れ込んできた。
「3人の娘・・・?」
「そう。3人の・・。
本当にあなたのような娘が出来て嬉しいわ。
どうか、これからもクリスとこの国をお願いね。」
私はまっすぐに王妃様を見て言った。
「はい。」
すると、王妃様が嬉しそうに笑った。
「ふふふ。その凛とした顔!
本当にブリジット様にそっくりだわ!!
その顔を見ると、この国は大丈夫だと思えるわ。」
そして王妃様が嬉しそうに笑った。
私も期待に答えるためにも尽力したいと思った。
【在りし日の母たちの想い エピソード出現】 Episode CLOSE(・・・coming soon)
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