77 / 145
【サミュエル】(学院発展ルート)
6 不思議な感覚
しおりを挟む
ーーー渡り廊下。
ベルナデットと別れた後、コンラッドは人のいない渡り廊下で、片手で真っ赤な顔を隠しながら呟いた。
「(ついに、ベルナデット様にキ、キスしてしまった!!
……柔らかかった……。
そうじゃない!!
だがさすがにこれで、私のことを男として意識してくれただろう!!)」
コンラッドは自分の行いでベルナデットが想いに気づいたはずだと確信していた。
だが、スキンシップ過多のエリックがいたベルナデットはコンラッドの思惑に気付くことはなかったのだった。
・
・
・
私は足早に廊下を歩いていた。
確かに、弦楽器に弦は必需品だ。
それに楽譜や五線譜など授業使うことも多いがそれらは楽器店でしか取り扱っていなかった。
(確かに買いに行くの大変よね・・。)
今は建設中だが、そのうち音楽科だけではなく、美術科と演劇科も出来る。
王都以外からも広く人材を募集するために寮もできる。
(寮に入ったらなおさら買いに行くのは大変よね・・。)
今は貴族が圧倒的に多いがサミュエル先生は貴族に限らず音楽を愛するすべての人に学んで欲しいとのお考えだ。
(馬車がないと少し遠いわよね・・。)
トントントン。
「ベルナデットです。」
「どうぞ。」
サミュエル先生の返事が聞こえて、私は中に入り先生の机の前に急いだ。
「あれ?早かったですね?」
サミュエル先生はまだのんびりとお茶を飲んでいた。
「サミュエル先生。今、コンラッド君から要望がありまして・・。」
「要望・・・?わかりました。
ソファーに座ってゆっくりお話しましょうか。
ああ。ベルナデット様のお茶もご用意致しますね。」
「・・・ありがとうございます。」
私はサミュエル先生の、のんびりとした姿を見てどこかホッとしてしまった。
(どうしてかしら。ただの社交辞令だとしても頬のキスのことはサミュエル先生には知られたくないわ・・・。)
私はコンラッド君の頬へのキスのことは知られたくないと思っていた。
サミュエル先生はお茶を入れると、紙とペンを用意した。
「ベルナデット様。隣に座ってもよろしいですか?」
「はい。」
幼いことは、楽譜を一緒に見たり、先生が図を書いて説明してくれていたのでよく隣に座っていた。
だが最近は並んで座ることがなかったので、頬が熱くなるのを感じた。
それと共にサミュエル先生はただ話がしやすいから隣に座っただけなのに浮かれてしまっている自分に罪悪感を感じた。
「懐かしいですね。」
サミュエル先生が嬉しそうに笑った。
「はい。」
私も頷いた。
「ふふふ。それで、要望とは?」
「はい。この学院で使用する、弦や、楽譜、五線譜、鉛筆などを取り扱う店を学院内に設けてはどうですか?」
するとサミュエル先生が驚いた顔をした。
「なるほど・・。弦楽器の生徒にとっては弦が必需品ですし、楽譜も同時に課題曲になると購入するのが困難だとも聞きました。」
「はい!!
楽譜については、持ち出し禁止などで、閲覧できる図書館があるのもいいかもしれません。」
「楽譜の図書館?!」
「はい。五線譜にそれぞれ書き写せば、楽譜が足りない時でも対処できますし・・。
自由曲を選ぶ時も役立つと思います。」
「なるほど・・。そうですね。」
サミュエル先生は私の意見を丁寧に紙に書き出してくれた。
そして、書いた紙を眺めながら「う~ん」と考えてこちらを向いた。
「それで、ベルナデット様、何があったのですか?」
「え?」
サミュエル先生が困った顔で笑った。
「もう何年ベルナデット様を見ていると、思っているのですか?
あなたに何かあったことなどすぐわかってしまうのですよ?」
「う・・・。その・・。」
私は思わず言い淀んでしまった。
すると、サミュエル先生が眉を寄せた。
「まさか・・何か精神的、肉体的な苦痛を?」
「いえ、頬にキスされただけです!!
ただの挨拶だとはわかっているのですが……」
私が焦って言い訳すると、サミュエル先生が美しく微笑んだ。
「頬に・・・キス・・ですか。
そうですか。」
サミュエル先生はすっと、シルクのハンカチを取り出すと、真剣な顔で聞いてきた。
「それで?どちらの頬ですか?」
「こっちです」
私はキスされた方の頬を指さした。
すると、サミュエル先生が優しく何度も何度も何度も頬を拭いてくれた。
そして、私をじっと見つめた。
「ベルナデット様、私もキスしてもいいですか?」
「え?え?キス??」
(サミュエル先生がキス?!ええ~。どうして、え?)
私は目を閉じた。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
(うう~~。聞かれずに不意打ちもどうかと思うけど、聞かれるのはそれはそれで恥ずかしい。)
・・・・チュ。
(・・・・え?頬?)
私は目を開けた。
すると、目の前には顔を真っ赤にしたサミュエル先生がいた。
「これは・・なかなか恥ずかしいですね。」
「・・・そうですね」
(口じゃないのか・・・)
私がキスされたのは、先程コンラッド君にキスされた場所だった。
キスされた頬に手で触れると、私は首を傾けた。
(拭いたとはいえ、これでは、サミュエル先生とコンラッド君の間接キスなのでは??
あれ??『キスしていい?』って聞かれる時って口じゃないの???
このくらい、兄とはよくしてた・・・)
私は思わず真っ赤な顔をしてしまった。
(いやいやいや、私、サミュエル先生の恋人でも婚約者でもないんだから、口になんてされるはずないわ!!
何を考えていたの??)
「すみません、ベルナデット様にも恥ずかしい思いをさせてしまって・・・・」
サミュエル先生が申し訳なさそうに頭を掻いた。
私はますます居たたまれない気持ちになった。
(違うんです!!キスされたことが恥ずかしかったんじゃなくて、どうして口じゃないのかと思ってしまったことが恥ずかしいんです!!
でも、こんなこと言えません!!)
「・・・・いえ」
私は結局、こんなことしか言えなかった。
その後、私たちは少し気まずい思いをしたのだった。
ベルナデットと別れた後、コンラッドは人のいない渡り廊下で、片手で真っ赤な顔を隠しながら呟いた。
「(ついに、ベルナデット様にキ、キスしてしまった!!
……柔らかかった……。
そうじゃない!!
だがさすがにこれで、私のことを男として意識してくれただろう!!)」
コンラッドは自分の行いでベルナデットが想いに気づいたはずだと確信していた。
だが、スキンシップ過多のエリックがいたベルナデットはコンラッドの思惑に気付くことはなかったのだった。
・
・
・
私は足早に廊下を歩いていた。
確かに、弦楽器に弦は必需品だ。
それに楽譜や五線譜など授業使うことも多いがそれらは楽器店でしか取り扱っていなかった。
(確かに買いに行くの大変よね・・。)
今は建設中だが、そのうち音楽科だけではなく、美術科と演劇科も出来る。
王都以外からも広く人材を募集するために寮もできる。
(寮に入ったらなおさら買いに行くのは大変よね・・。)
今は貴族が圧倒的に多いがサミュエル先生は貴族に限らず音楽を愛するすべての人に学んで欲しいとのお考えだ。
(馬車がないと少し遠いわよね・・。)
トントントン。
「ベルナデットです。」
「どうぞ。」
サミュエル先生の返事が聞こえて、私は中に入り先生の机の前に急いだ。
「あれ?早かったですね?」
サミュエル先生はまだのんびりとお茶を飲んでいた。
「サミュエル先生。今、コンラッド君から要望がありまして・・。」
「要望・・・?わかりました。
ソファーに座ってゆっくりお話しましょうか。
ああ。ベルナデット様のお茶もご用意致しますね。」
「・・・ありがとうございます。」
私はサミュエル先生の、のんびりとした姿を見てどこかホッとしてしまった。
(どうしてかしら。ただの社交辞令だとしても頬のキスのことはサミュエル先生には知られたくないわ・・・。)
私はコンラッド君の頬へのキスのことは知られたくないと思っていた。
サミュエル先生はお茶を入れると、紙とペンを用意した。
「ベルナデット様。隣に座ってもよろしいですか?」
「はい。」
幼いことは、楽譜を一緒に見たり、先生が図を書いて説明してくれていたのでよく隣に座っていた。
だが最近は並んで座ることがなかったので、頬が熱くなるのを感じた。
それと共にサミュエル先生はただ話がしやすいから隣に座っただけなのに浮かれてしまっている自分に罪悪感を感じた。
「懐かしいですね。」
サミュエル先生が嬉しそうに笑った。
「はい。」
私も頷いた。
「ふふふ。それで、要望とは?」
「はい。この学院で使用する、弦や、楽譜、五線譜、鉛筆などを取り扱う店を学院内に設けてはどうですか?」
するとサミュエル先生が驚いた顔をした。
「なるほど・・。弦楽器の生徒にとっては弦が必需品ですし、楽譜も同時に課題曲になると購入するのが困難だとも聞きました。」
「はい!!
楽譜については、持ち出し禁止などで、閲覧できる図書館があるのもいいかもしれません。」
「楽譜の図書館?!」
「はい。五線譜にそれぞれ書き写せば、楽譜が足りない時でも対処できますし・・。
自由曲を選ぶ時も役立つと思います。」
「なるほど・・。そうですね。」
サミュエル先生は私の意見を丁寧に紙に書き出してくれた。
そして、書いた紙を眺めながら「う~ん」と考えてこちらを向いた。
「それで、ベルナデット様、何があったのですか?」
「え?」
サミュエル先生が困った顔で笑った。
「もう何年ベルナデット様を見ていると、思っているのですか?
あなたに何かあったことなどすぐわかってしまうのですよ?」
「う・・・。その・・。」
私は思わず言い淀んでしまった。
すると、サミュエル先生が眉を寄せた。
「まさか・・何か精神的、肉体的な苦痛を?」
「いえ、頬にキスされただけです!!
ただの挨拶だとはわかっているのですが……」
私が焦って言い訳すると、サミュエル先生が美しく微笑んだ。
「頬に・・・キス・・ですか。
そうですか。」
サミュエル先生はすっと、シルクのハンカチを取り出すと、真剣な顔で聞いてきた。
「それで?どちらの頬ですか?」
「こっちです」
私はキスされた方の頬を指さした。
すると、サミュエル先生が優しく何度も何度も何度も頬を拭いてくれた。
そして、私をじっと見つめた。
「ベルナデット様、私もキスしてもいいですか?」
「え?え?キス??」
(サミュエル先生がキス?!ええ~。どうして、え?)
私は目を閉じた。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
(うう~~。聞かれずに不意打ちもどうかと思うけど、聞かれるのはそれはそれで恥ずかしい。)
・・・・チュ。
(・・・・え?頬?)
私は目を開けた。
すると、目の前には顔を真っ赤にしたサミュエル先生がいた。
「これは・・なかなか恥ずかしいですね。」
「・・・そうですね」
(口じゃないのか・・・)
私がキスされたのは、先程コンラッド君にキスされた場所だった。
キスされた頬に手で触れると、私は首を傾けた。
(拭いたとはいえ、これでは、サミュエル先生とコンラッド君の間接キスなのでは??
あれ??『キスしていい?』って聞かれる時って口じゃないの???
このくらい、兄とはよくしてた・・・)
私は思わず真っ赤な顔をしてしまった。
(いやいやいや、私、サミュエル先生の恋人でも婚約者でもないんだから、口になんてされるはずないわ!!
何を考えていたの??)
「すみません、ベルナデット様にも恥ずかしい思いをさせてしまって・・・・」
サミュエル先生が申し訳なさそうに頭を掻いた。
私はますます居たたまれない気持ちになった。
(違うんです!!キスされたことが恥ずかしかったんじゃなくて、どうして口じゃないのかと思ってしまったことが恥ずかしいんです!!
でも、こんなこと言えません!!)
「・・・・いえ」
私は結局、こんなことしか言えなかった。
その後、私たちは少し気まずい思いをしたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,446
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる