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【クリストフ】(王妃ルート)
6 胸躍る計画
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「なるほど・・。ではこれはどうですか?ベルナデット様?」
「そうですね・・。観客にとって、憧れの役者の方は希望の光です。生き甲斐なのです。
むしろ、生活の全てだといえるかもしれません。
なので、その距離だと、近すぎませんか?」
「希望の光なら近くに居たいのでないですか?」
「いえ!!希望の光はあまり近すぎてもダメなのです。
なんといっても希望の光なのですから。
近すぎては、光に目がくらんだり、光に慣れて光の存在ではなくなる可能性があります。」
「素晴らしい!!ベルナデット様はよく観客のお心を理解しておられますね!!」
「いいえ、ルーカル様のご提案は観客の喜びでもありますのでぜひとも・・・。」
初めて会った日以来、私は度々ルーカス様と劇場について話合うようになった。
あまりにも頻繫なので、心配したクリスが、相談する時は必ず、クリスの執務室で、クリス在室の時間に、身体には決して触れない距離で行うということを義務付けられた。
「さすがベルナデット様だ!!素晴らしい!!」
「ルーカス様こそ!!」
私たちが思わず、手を取ろうとした瞬間。
「あ~~~。悪いけど、そこまでにしてくれないか?ルーカス。」
クリスがこめかみに青筋を立てて、こちらを見ていた。
(わ~。つい熱くなりすぎた。
ああ、これは本当にまずい!!ピンチだわ!!
ああ、今すぐに、今すぐにでも来客だって呼ばれないかしら??)
「ああ。もうこんな時間ですか・・・。いけませんね。
ベルナデット様と話をしていると、つい時間が経ってしまう。
次に会うまで待ち遠しい。」
するとローベルが颯爽とルーカスの前に立った。
「はいはい。お送りしますね~。」
「ああ。」
ルーカスは帰り際に、私の手の甲にキスをした。
「「な!!!」」
クリスの顔には怒りが、ローベルの顔は青くなっている。
だが、初回にされたキスほどではないので、私は全く動揺していなかった。
今のは至って普通のキスだ。問題ない。
「ルーカス様。ごきげんよう。」
「ええ。また。」
すると、ルーカスがクリスの方に視線を向けた。
「クリス様。もう少し信頼してはどうです?
あまりに窮屈な籠では逃げられてしまいますよ。」
「なに?」
クリスが鋭い視線を向けた。
「それでは、御機嫌よう。」
するとルーカスが扉に向かった。
私も扉までルーカス様を見送るために立ち上がった。
「っく!!エリックのヤツこうなることがわかってたから、ベルとルーカスを会わせることを、ありとあらゆる手を使って阻止していたのか・・。」
クリスが何かを呟いたが、私はルーカス様の見送りに向かった。
ルーカス様が執務室を出た途端に、ローベルに続き、侍女や護衛の人が一斉に部屋の外に出て行った。
(ああ~~。私も、みんなと外に出たい。
置いて行かないで~~。)
すると、クリスが執務机から立ち上がり、私の手を引くと、ソファーに連れて行き、隙間なくピッタリと座った。
(もう少しパーソナルスペースがあってもいいんじゃないかな?)
そう思って見てみたが、クリスは青筋を立てたままの笑顔でこちらを見ていた。
そしてハンカチを取り出すと、ルーカス様に口を付けられたところをゴシゴシと拭き出した。
(少し痛いです。クリス様・・・。)
しばらくして、落ち着いたクリスが私の腰を引き寄せた。
(う~~~もう逃げられない。)
そして、不機嫌な顔になり、これまた不機嫌な声を上げた。
「ねぇ。ベル。君の婚約者は誰?」
「もちろんクリス様です。」
「ふ~ん。その割には、ルーカスと楽しそうに話をしてるよね?!」
(ああ~なんて答えたらいいの??
誰か正解の選択肢を下さい!!)
心の中で祈ってみたが、誰も答えてくれなかった。
すると、さらにクリスの声が低くなった。
「それに毎回、役者さんへの憧れについて、凄く具体的だし、情緒的な意見を言ってるみたいだけど、ベルには誰か好きな人でもいるのか?」
(ひえ~~~!!どうしよう!!)
困っていると、急にクリスが泣きそうな顔をした。
「私の他に好きな人がいるの?」
私は急いで、頭を振った。
「そんな!!まさか!!好きな人などおりません。
クリス様の婚約者だということはしっかりと自覚しております。ただ・・。」
私はいい加減悲しくなった。
実は毎回、毎回、クリスにルーカス様との話合いが終わると責められるように感じている。
どれほど私は信頼がないのだろうか?
そんな私をみたクリスが心配そうにしていた。
「どうしたの?ベル?」
「いえ・・。私はただ、皆様が喜んで下さるような劇場を作りたいのです。
ルーカス様のお心も同じです。
それを毎回、このようにクリス様に責められるのも、もうそろそろつらいです。
いっそのことそれほど、私のことが信用できないのでしたら、この事業計画から私を外して下さい。
それがお互いのためです。
私は今後もきっと、ルーカス様とこのような話合いをすると思います。
ご決断下さい。クリス様。」
私は真剣な顔でクリスを見据えた。
クリスは目を見開くと、私の腰から手を離して立ち上がった。
「少し席を外す。」
そう言って、執務室から出て行った。
一人残された私は、クリスに痛いくらいに拭かれた手を眺めていた。
(生意気なことを言ってしまったのかしら・・。)
私はどうすればよかったのかわからずに途方にくれてしまった。
「そうですね・・。観客にとって、憧れの役者の方は希望の光です。生き甲斐なのです。
むしろ、生活の全てだといえるかもしれません。
なので、その距離だと、近すぎませんか?」
「希望の光なら近くに居たいのでないですか?」
「いえ!!希望の光はあまり近すぎてもダメなのです。
なんといっても希望の光なのですから。
近すぎては、光に目がくらんだり、光に慣れて光の存在ではなくなる可能性があります。」
「素晴らしい!!ベルナデット様はよく観客のお心を理解しておられますね!!」
「いいえ、ルーカル様のご提案は観客の喜びでもありますのでぜひとも・・・。」
初めて会った日以来、私は度々ルーカス様と劇場について話合うようになった。
あまりにも頻繫なので、心配したクリスが、相談する時は必ず、クリスの執務室で、クリス在室の時間に、身体には決して触れない距離で行うということを義務付けられた。
「さすがベルナデット様だ!!素晴らしい!!」
「ルーカス様こそ!!」
私たちが思わず、手を取ろうとした瞬間。
「あ~~~。悪いけど、そこまでにしてくれないか?ルーカス。」
クリスがこめかみに青筋を立てて、こちらを見ていた。
(わ~。つい熱くなりすぎた。
ああ、これは本当にまずい!!ピンチだわ!!
ああ、今すぐに、今すぐにでも来客だって呼ばれないかしら??)
「ああ。もうこんな時間ですか・・・。いけませんね。
ベルナデット様と話をしていると、つい時間が経ってしまう。
次に会うまで待ち遠しい。」
するとローベルが颯爽とルーカスの前に立った。
「はいはい。お送りしますね~。」
「ああ。」
ルーカスは帰り際に、私の手の甲にキスをした。
「「な!!!」」
クリスの顔には怒りが、ローベルの顔は青くなっている。
だが、初回にされたキスほどではないので、私は全く動揺していなかった。
今のは至って普通のキスだ。問題ない。
「ルーカス様。ごきげんよう。」
「ええ。また。」
すると、ルーカスがクリスの方に視線を向けた。
「クリス様。もう少し信頼してはどうです?
あまりに窮屈な籠では逃げられてしまいますよ。」
「なに?」
クリスが鋭い視線を向けた。
「それでは、御機嫌よう。」
するとルーカスが扉に向かった。
私も扉までルーカス様を見送るために立ち上がった。
「っく!!エリックのヤツこうなることがわかってたから、ベルとルーカスを会わせることを、ありとあらゆる手を使って阻止していたのか・・。」
クリスが何かを呟いたが、私はルーカス様の見送りに向かった。
ルーカス様が執務室を出た途端に、ローベルに続き、侍女や護衛の人が一斉に部屋の外に出て行った。
(ああ~~。私も、みんなと外に出たい。
置いて行かないで~~。)
すると、クリスが執務机から立ち上がり、私の手を引くと、ソファーに連れて行き、隙間なくピッタリと座った。
(もう少しパーソナルスペースがあってもいいんじゃないかな?)
そう思って見てみたが、クリスは青筋を立てたままの笑顔でこちらを見ていた。
そしてハンカチを取り出すと、ルーカス様に口を付けられたところをゴシゴシと拭き出した。
(少し痛いです。クリス様・・・。)
しばらくして、落ち着いたクリスが私の腰を引き寄せた。
(う~~~もう逃げられない。)
そして、不機嫌な顔になり、これまた不機嫌な声を上げた。
「ねぇ。ベル。君の婚約者は誰?」
「もちろんクリス様です。」
「ふ~ん。その割には、ルーカスと楽しそうに話をしてるよね?!」
(ああ~なんて答えたらいいの??
誰か正解の選択肢を下さい!!)
心の中で祈ってみたが、誰も答えてくれなかった。
すると、さらにクリスの声が低くなった。
「それに毎回、役者さんへの憧れについて、凄く具体的だし、情緒的な意見を言ってるみたいだけど、ベルには誰か好きな人でもいるのか?」
(ひえ~~~!!どうしよう!!)
困っていると、急にクリスが泣きそうな顔をした。
「私の他に好きな人がいるの?」
私は急いで、頭を振った。
「そんな!!まさか!!好きな人などおりません。
クリス様の婚約者だということはしっかりと自覚しております。ただ・・。」
私はいい加減悲しくなった。
実は毎回、毎回、クリスにルーカス様との話合いが終わると責められるように感じている。
どれほど私は信頼がないのだろうか?
そんな私をみたクリスが心配そうにしていた。
「どうしたの?ベル?」
「いえ・・。私はただ、皆様が喜んで下さるような劇場を作りたいのです。
ルーカス様のお心も同じです。
それを毎回、このようにクリス様に責められるのも、もうそろそろつらいです。
いっそのことそれほど、私のことが信用できないのでしたら、この事業計画から私を外して下さい。
それがお互いのためです。
私は今後もきっと、ルーカス様とこのような話合いをすると思います。
ご決断下さい。クリス様。」
私は真剣な顔でクリスを見据えた。
クリスは目を見開くと、私の腰から手を離して立ち上がった。
「少し席を外す。」
そう言って、執務室から出て行った。
一人残された私は、クリスに痛いくらいに拭かれた手を眺めていた。
(生意気なことを言ってしまったのかしら・・。)
私はどうすればよかったのかわからずに途方にくれてしまった。
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