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【クリストフ】(王妃ルート)
3 とある国の訪問者
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今日も私はお客様にあいさつをするために準備をしていた。
主要な方々とはあいさつを済ませたが、完全にあいさつが終わることはないのだろう。
私が謁見の間の控室に入ると、クリスも同席していた。
「ああ。ベルナデット。
待っていました。
こちらは、クリア国のグラソン殿です。」
クリスは公式の場では、私のことをベルナデットと呼んでいた。
私はグラソン殿に淑女の礼をとった。
「初めまして。ベルナデットと申します。」
すると、グラソン殿が握手を求めてきた。
「これは、ご丁寧にありがとうございます。
ベルナデット様が、アトルワ公爵のご息女とお伺い致しまして、面会をお願いしたのでございます。」
私には父関係の面会も多かったので、珍しいことではなかった。
グラソン殿は話を続けた。
「実は、わたくし、アルベルト陛下に頼まれた物をお持ち致しました。
どうか、アトルワ公爵にお渡し下さいませんでしょうか。」
ベルナデットはグラソン殿から贈られたものに目を移した。
(お酒の山?!何これ?)
「以前、アトルワ公爵から頂いたお酒が大変美味だったとのことで、お礼にとのことです。」
「まぁ。アルベルト陛下からの贈り物ですの・・。」
私が驚いていると、クリスがにこやかに笑った。
「クリア国のアルベルト陛下とアリエッタ王妃はとても仲睦まじいことでも有名なのだよ。」
「まぁ。それは素晴らしいですわ。」
すると、グラソン殿が真面目な顔を一変させて破顔した。
「わっはっは。
我が国の国王陛下と王妃様は大変仲がよろしくて、今回も本来なら陛下がいらっしゃる予定でしたが、6人目のお子様のご出産と重なりまして、私がこちらにお伺いすることになったのです。」
「・・・6人目のお子さん・・。それはおめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
すると、クリスが美しく微笑んだ。
「それは素晴らしいですね。
私たちもお2人のような愛し合う夫婦になれるように努力致します。」
クリスの言葉に、グラソン殿が「フッ」とどこか遠い目をした。
「・・・愛は必要だとは思いますが・・。
愛情表現は2人だけの時に、程々になさるのがよいかと。
周りにいる者たちは大変ですので・・。」
「「え」」
すると、グラソン殿がハッとしてこちらを向いた。
「いえ。これは失礼致しました。
それではわたくしはそろそろ失礼致します。
クリストフ殿下、ベルナデット様この度はご婚約おめでとうございます。
お時間を頂き感謝致します。」
「こちらこそ、お心遣い感謝致します。
陛下にも御礼をお伝え下さい。」
「はい。必ずお伝え致します。それでは。」
そういうと、グラソン殿は颯爽と部屋を出て言った。
グラソン殿が退席すると、お酒を運び出すために多くの従者が現れた。
「これは、アトルワ公爵に届けておきますね。」
「ありがとうございます。」
クリスが優雅に私の手を取った。
「執務室までいきませんか?」
「はい。」
謁見の間の控え室を出て、執務室に入るとクリスに抱きしめられた。
「聞いた?ベル?」
「何をですか?」
「クリア国のアルベルト陛下のお子さん6人だって。」
「はい。聞きましたよ。」
するとクリスがさらに私を隙間がないほど、きつく抱きしめてきた。
「私も早く子供ほしい。」
その言葉にベルはクリスの頭を撫でた。
「ふふふ。クリス様は子供が好きなんですね。
確かにクリス様の赤ちゃんはさぞ可愛いでしょうしね。」
するとクリスが抱きしめるのをやめて、残念な子を見るような視線を向けてきた。
「はぁ~。ベルはお子様だな・・。」
「え?」
クリスは溜息をつくと、なにかブツブツと言いながら自分の執務机に向かった。
「全く。大体、ベルは子供作るために何が必要かちゃんとわかってるのか?
それよりもまだキスさえもできていない。
ああ、せめてキスはしたい。すぐにでもしたい・・。」
私はそんなクリスに話しかけた。
「クリス様。私これから、舞踏家の方にお話を聞きに行くのですが、ローベル様はどちらですか?」
「ああ。アトルワ公爵の執務室の頂き物を届けに行ってもらっている。そろそろ戻るだろう?」
「では、先にお伺いして・・。」
すると、クリスが鋭い視線を向けた。
「ダメだ。ローベルと共に行ってくれ。」
「はぁ。」
(ああ。私ってそんなに一人では心配なのかしら・・?)
仕方なく私がソファーに座ると執務机に座ったクリスと目が合った。
「どうしたのですか?」
すると、クリスが優しく微笑んだ。
「なんでもないよ。嬉しかっただけ。」
「嬉しかった?」
「そう・・。学院ではずっとベルとは会えなかったから・・。
こうして、一日のふっとした時間にベルと同じ時を過ごせるのは幸せだと思っただけ。」
私は自分の顔が赤くなるのを感じた。
(そんなこと言われたら私もどうしたらいいのか、わからないのですが!!
あ~もう。クリスのあの顔は良すぎてつらい!!
しかも、セリフも嬉しくて倒れそう・・。)
私がオロオロしていると、クリスがくすくすと笑った。
そして机に目を落とし、万年筆をサラサラと動かしながら口を開いた。
「好きだよ。ベル。」
私はクリスを凝視したが、クリスは口元を上げたが、目は書類を見たまま、何事もなかったように仕事を続けていた。
(あ~もう。クリスがカッコ良すぎて無理・・。一旦寝込んでいいですか?)
トントン。
扉を叩く音がして、扉の方を見るとクリスが「どうぞ。」と言った。
入ってきたのはローベルだった。
「殿下。無事にアトルワ公爵にお渡し出来ました。」
「お疲れ様。」
すると、ローベルが私の方を向いた。
「お待たせ致しました。ベルナデット様、参りましょう。」
そう言って、手を差し出した。
私はローベルの手を取り、立ち上がった。
「それではクリス様、行って参ります。」
「ああ。頼む。」
去り際に私は、足を止めてクリスの方を見た。
動きを止めた私を不審に思ったクリスが私に視線を向けた。
クリスと視線が絡んだ瞬間に「私もです。」と伝えてクリスの執務室を出た。
私たちが執務室を出た後、クリスは赤い顔をして机に倒れ込み「不意打ち・・反則。」と呟いたが、私たちには聞こえなかった。
主要な方々とはあいさつを済ませたが、完全にあいさつが終わることはないのだろう。
私が謁見の間の控室に入ると、クリスも同席していた。
「ああ。ベルナデット。
待っていました。
こちらは、クリア国のグラソン殿です。」
クリスは公式の場では、私のことをベルナデットと呼んでいた。
私はグラソン殿に淑女の礼をとった。
「初めまして。ベルナデットと申します。」
すると、グラソン殿が握手を求めてきた。
「これは、ご丁寧にありがとうございます。
ベルナデット様が、アトルワ公爵のご息女とお伺い致しまして、面会をお願いしたのでございます。」
私には父関係の面会も多かったので、珍しいことではなかった。
グラソン殿は話を続けた。
「実は、わたくし、アルベルト陛下に頼まれた物をお持ち致しました。
どうか、アトルワ公爵にお渡し下さいませんでしょうか。」
ベルナデットはグラソン殿から贈られたものに目を移した。
(お酒の山?!何これ?)
「以前、アトルワ公爵から頂いたお酒が大変美味だったとのことで、お礼にとのことです。」
「まぁ。アルベルト陛下からの贈り物ですの・・。」
私が驚いていると、クリスがにこやかに笑った。
「クリア国のアルベルト陛下とアリエッタ王妃はとても仲睦まじいことでも有名なのだよ。」
「まぁ。それは素晴らしいですわ。」
すると、グラソン殿が真面目な顔を一変させて破顔した。
「わっはっは。
我が国の国王陛下と王妃様は大変仲がよろしくて、今回も本来なら陛下がいらっしゃる予定でしたが、6人目のお子様のご出産と重なりまして、私がこちらにお伺いすることになったのです。」
「・・・6人目のお子さん・・。それはおめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
すると、クリスが美しく微笑んだ。
「それは素晴らしいですね。
私たちもお2人のような愛し合う夫婦になれるように努力致します。」
クリスの言葉に、グラソン殿が「フッ」とどこか遠い目をした。
「・・・愛は必要だとは思いますが・・。
愛情表現は2人だけの時に、程々になさるのがよいかと。
周りにいる者たちは大変ですので・・。」
「「え」」
すると、グラソン殿がハッとしてこちらを向いた。
「いえ。これは失礼致しました。
それではわたくしはそろそろ失礼致します。
クリストフ殿下、ベルナデット様この度はご婚約おめでとうございます。
お時間を頂き感謝致します。」
「こちらこそ、お心遣い感謝致します。
陛下にも御礼をお伝え下さい。」
「はい。必ずお伝え致します。それでは。」
そういうと、グラソン殿は颯爽と部屋を出て言った。
グラソン殿が退席すると、お酒を運び出すために多くの従者が現れた。
「これは、アトルワ公爵に届けておきますね。」
「ありがとうございます。」
クリスが優雅に私の手を取った。
「執務室までいきませんか?」
「はい。」
謁見の間の控え室を出て、執務室に入るとクリスに抱きしめられた。
「聞いた?ベル?」
「何をですか?」
「クリア国のアルベルト陛下のお子さん6人だって。」
「はい。聞きましたよ。」
するとクリスがさらに私を隙間がないほど、きつく抱きしめてきた。
「私も早く子供ほしい。」
その言葉にベルはクリスの頭を撫でた。
「ふふふ。クリス様は子供が好きなんですね。
確かにクリス様の赤ちゃんはさぞ可愛いでしょうしね。」
するとクリスが抱きしめるのをやめて、残念な子を見るような視線を向けてきた。
「はぁ~。ベルはお子様だな・・。」
「え?」
クリスは溜息をつくと、なにかブツブツと言いながら自分の執務机に向かった。
「全く。大体、ベルは子供作るために何が必要かちゃんとわかってるのか?
それよりもまだキスさえもできていない。
ああ、せめてキスはしたい。すぐにでもしたい・・。」
私はそんなクリスに話しかけた。
「クリス様。私これから、舞踏家の方にお話を聞きに行くのですが、ローベル様はどちらですか?」
「ああ。アトルワ公爵の執務室の頂き物を届けに行ってもらっている。そろそろ戻るだろう?」
「では、先にお伺いして・・。」
すると、クリスが鋭い視線を向けた。
「ダメだ。ローベルと共に行ってくれ。」
「はぁ。」
(ああ。私ってそんなに一人では心配なのかしら・・?)
仕方なく私がソファーに座ると執務机に座ったクリスと目が合った。
「どうしたのですか?」
すると、クリスが優しく微笑んだ。
「なんでもないよ。嬉しかっただけ。」
「嬉しかった?」
「そう・・。学院ではずっとベルとは会えなかったから・・。
こうして、一日のふっとした時間にベルと同じ時を過ごせるのは幸せだと思っただけ。」
私は自分の顔が赤くなるのを感じた。
(そんなこと言われたら私もどうしたらいいのか、わからないのですが!!
あ~もう。クリスのあの顔は良すぎてつらい!!
しかも、セリフも嬉しくて倒れそう・・。)
私がオロオロしていると、クリスがくすくすと笑った。
そして机に目を落とし、万年筆をサラサラと動かしながら口を開いた。
「好きだよ。ベル。」
私はクリスを凝視したが、クリスは口元を上げたが、目は書類を見たまま、何事もなかったように仕事を続けていた。
(あ~もう。クリスがカッコ良すぎて無理・・。一旦寝込んでいいですか?)
トントン。
扉を叩く音がして、扉の方を見るとクリスが「どうぞ。」と言った。
入ってきたのはローベルだった。
「殿下。無事にアトルワ公爵にお渡し出来ました。」
「お疲れ様。」
すると、ローベルが私の方を向いた。
「お待たせ致しました。ベルナデット様、参りましょう。」
そう言って、手を差し出した。
私はローベルの手を取り、立ち上がった。
「それではクリス様、行って参ります。」
「ああ。頼む。」
去り際に私は、足を止めてクリスの方を見た。
動きを止めた私を不審に思ったクリスが私に視線を向けた。
クリスと視線が絡んだ瞬間に「私もです。」と伝えてクリスの執務室を出た。
私たちが執務室を出た後、クリスは赤い顔をして机に倒れ込み「不意打ち・・反則。」と呟いたが、私たちには聞こえなかった。
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