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【クリストフ】(王妃ルート)

2 民のためにできること

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「ベルナデット様、次の面会は3分後でございます。」
「3分?!間に合うかしら?」
「案内の者に遠回りするように伝えたので、5分は稼げるかと!!」
「それなら大丈夫ね。行きましょう!!」
「はい!!」

私は王宮で、クリスの補佐をしていた。
王妃教育は学院の在学中に無事に終わった。

クリスの結婚を承諾した日から、結婚式の準備もあるので、私は王宮の私の部屋に住むことになった。
まだ結婚していないので、クリスとの部屋は別だ。

だが、結婚後は同じ部屋になるらしい。



私が応接間に到着すると、待っていたお客様が出迎えてくれた。

(よし。慎重に。冷静に。)

私はお客様に向かってあいさつをした。

「初めまして。お会い出来て光栄ですわ。私はベルナデットと申します。」
「これは、はじめまして。ベルナデット様。
お噂以上にお美しい方ですな。」
「ありがとうございます。」

私はそれからお客様の相手をした。


今の私の仕事は、主要貴族の皆さんとあいさつをすることだ。
陛下への謁見が終わった後に紹介されたり、謁見を待たれている間にあいさつをしている。

私とクリスは音楽芸術学院に入学したので、あまり社交を行ってこなかった。
そのため、こうして機会がある時に個人的にあいさつをさせて貰ってるのだ。

正式にクリスのプロポーズを受けてから、大きな夜会に数回でたので、私がクリスの結婚相手ということは、ほとんどの貴族に知られている。
なので、今は結婚報告のためのあいさつも兼ねている。


今日のあいさつが終わって、私はクリスの執務室へと向かった。
いつもではないが、かなり突然用事が入ることも多いので、状況を報告するため直接いくことも多かった。

「こんにちは。ベルナデット様。」

クリスの執務室に入るといつものように側近のローベルが出迎えてくれた。

「こんにちは。」

私は執務室に入ると今でも少し寂しくなる。
以前ならクリスの執務室には、兄がいた。
でも今は、領地経営に力を入れるために、クリスの側近を辞めたのだ。

「お疲れ様。もう終わったの?」

少し、しんみりしていると、クリスに話しかけられた。

「はい。終わりました。」

私はソファーに座って、今日会った方々とお話した内容をクリスに報告した。
報告が終わるとクリスが笑顔になった。

「そっか。よかった。これで、一通りあいさつは終えたんじゃない?」
「そうですね。」

すると、侍女がお茶を入れてくれた。

「ありがとう。」
「いえ。では失礼致します。」

私は遠慮なくお茶を飲んだ。
すると、クリスも休憩するのか、私の隣に座った。

「私にもお茶を。」
「はい。」

クリスは、嬉しそうに紙の束を見せてくれた。

「ほら。10年ほど前に隣国に協力してもらって開墾した土地がようやく安定した利益を出せる土地に育って来たんだ。
これで、民も飢えることもなくなる。」
「それはおめでとうございます。」
「ああ。」

すると、前のソファーにローベルも座った。
最近では3人で仕事の話をしながらお茶をするようになった。

「後は、民の生きる希望ですね。」

ローベルの言葉にクリスが眉を寄せた。

「そうだな・・。どうすれば、民に希望を持ってもらえるだろうか?」
「どういうことですか?」

私が尋ねると、クリスが説明してくれた。

「ああ。ようやく食べる物の心配がなくなって、物価が安定し出した。
城下も少しずつ発展してきている。
だが、このままでは人が定着しないかもしれない。
この土地で得た利益を他の土地に持って出て行く可能性がある。
なにか、民の生きる希望になるような事業ができたらいいのだが・・。」

ローベルが頷いた。

「そうなのです。ですので、私たちは今、人々が夢中になれるような事業を考えています。」
「夢中になれる事業・・。」

私はふと、以前日本にいた頃を思い出した。

(あの時の私は、赤羽円様の舞台に夢中だったな~。)

漫画を舞台化した作品で、悪役令嬢の兄のブラッド役の、赤羽円様の殺陣や階段落ちが見事で私は、夢中になっていたのだ。

「円様・・。」

私が思わず呟くと、クリスが氷のような視線を向けてきた。

「ん?マドカ?頬をそんなに染めて、一体何を考えているのかな?」
「え?あの、その、マド・・窓を見てて・・。」
「ん?窓を見て?」

クリスがドンドン迫ってくる。

「あの、その窓をみながら考え・・そうだ!!
劇場を作るのはどうでしょう?」

私の提案に、クリスとローベルが固まった。

「「劇場?」」

私はうんうんと頷いた。

「演劇や音楽などに触れることで、生きる活力になるのではないでしょうか?」

少なくとも日本にいた時の私はそうだった。
赤羽円様の舞台を見るために、一生懸命に働いたように思う。

あまりにも2人の反応がないので、私は思わず慌てた。

「あ、いえ。その、ただなんとなく言ってみただけですので・・。
あの・・すみません。」

私があやまっても2人は無反応だった。

(うう・・。余計なこと言わなければよかった。)

「殿下・・・。」

ローベルが真剣な顔でクリスを見た。

「ああ。」

クリスも、ローベルを見て頷いた。

「ベル。劇場を作ろう。」
「え?」

すると、クリスとローベルが急いで、立ち上がった。

「ローベル。とりあえず議会に通せるように書類を頼む。」
「はい。」
「私は陛下に話をしてくる。」

バタバタと慌ただしくなる執務室に私は何がなんだかわからなかったが、クリスは部屋を出て行ってしまったし、ローベルは忙しそうだ。

「あの・・それでは私は失礼します。」

私は小さくあいさつした。
すると、ローベルが顔を上げて、「すみません。」と言ってくれた。
私は、クリスの執務室を出ると、自分の部屋へと向かった。









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