我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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40 知らされた真実

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2人がお茶の席につくと、トリスタン様がにっこりと笑った。

「ねぇ。ベル。この国に音楽芸術学院が作られることは知ってる?」
「はい。」

(知ってますよ~~!!私はそこに入りたいんですから~~。)

「そこに入学するかい?」
「え?」

私はあまりのことにパニックになっていた。

「え?え?音楽芸術学院に入学?
だって、私、殿下のおまけじゃ・・。」

その言葉にトリスタン様が悲しい顔をした。

「はぁ~。そう思うよね・・。
だから私は反対したのに・・。」
「え?」
「いや。なんでもないよ。」

そして、トリスタン様に真剣な顔で見つめられた。

「いいかいベル。
君はおまけなんかじゃない。
君は君が思うように生きていいんだよ。
私はそれを助けるよ。
だから困った事があったらすぐに相談してくれ。
今回のようにエリックに相談してくれればいいから。」

私は思わず兄を見た。

「お兄様に?」

トリスタン様は優雅に笑った。

「ああ。恥ずかしいけど、エリックから報告を受けるまで私は君がまるで自分を殿下のおまけのように思っているなんて思いもしなくてね。
エリックが教えてくれて助かった。」
「お兄様が・・。」

(・・・?でも、お兄様はどうして、この方に相談したのかしら?)

チラリとお父様の顔を見ると、お父様と目が合って微笑まれた。

(どうして、お父様に言わなかったのかしら?
それともお父様に言って下さったからこそ、この方がいらした??
この方、音楽関係の方なのかしら??)

私はトリスタン様を正面から真っすぐに見つめると、にっこりと微笑んだ。

「ありがとうございます。
私、音楽芸術学院に入学したいです。
よろしくお願い致します。」

すると、トリスタン様に抱きしめられて頬擦りをされた。

「ああ~~なんて可愛いんだ~~。
ベル~~可愛い~~。
我が最愛の娘ベルナデット!!」

・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。

(最愛の娘?え?誰が?)

聞き間違えたのだろう。
そうだ。そうに違いない。

「・・・・最愛の娘・・・娘?」

どうやら知らない内に声に出していたらしい。
私が固まっていると、父が溜息をついた。

「ねぇ。トリスタン・・・。
もう少し、他のタイミングはなかったのかい?」

すると、父が近づいてきて視線を合わせた。

「こんな形で知らせることを許しておくれ。
君の本当の父親は、私ではなくトリスタンなんだ。」
「え?」

私は思わず、トリスタン様を見た。
すると、今度はトリスタン様が優しい顔で私を見た。

「黙っててごめん。
私が君の父のトリスタンだよ。
ベルの母親はね、隣国にいる。
理由があって一緒には住めないんだけど、いつもベルのことを思ってるよ。」
「私の本当のお母様?」
「ああ。君の母親はブリジットって言うんだよ。」
「ブリジット・・?」

(え?隣国?ブリジット??
え?どういうこと?)

そこまで考えて、寒気がした。
どうして今、そんなことを私に教えたのだろう?
もしかして、私はここから追い出されるのだろうか?

私は急に不安になって、父、アトルワ公爵を見た。

「私はこれからどうなるのですか?
ここにいてもいいのですか?」

父とは本当の親子ではない。
きっと私は泣きそうな顔をしていたのだろう。

「もちろんだよ。不安にならなくていい。
ずっとここにいていいんだよ。」

そう言って、アトルワ公爵が抱きしめてくれた。

(追い出されなくてよかった。)

「これからはなんとお呼びすればいいでしょうか?」
「これまで通りでいいよ。
私はベルナデットを本当の娘のように思っているからね。」

父はそういうと、また私を抱きしめてくれた。

すると横からトリスタン様の声が聞こえた。

「あの・・ベル・・。
出来れば、私は父と呼んでほしいのだけど・・。
ダメかい?今更、図々しいかい?」

そして、私の実父は眉を寄せて泣きそうな顔をした。

(またそんな顔して・・。
でも私この顔に弱いのよね~。
これって血のせい??)

「では、父上とお呼びします。
お父様はお父様だけですもの。」
「ありがとうベル~~~。
充分だよ~~。
実は7年前からずっと呼ばれたかったんだよ~~~!!
夢だったんだ~~~。
ベルに父と呼ばれたかった~~。」

(7年前!!赤ちゃん!!それ私、赤ちゃん!!)

私はトリスタン様を見て、「父上」と言った。
すると、実父は破顔した。

それから、実父は私に頬擦りをしまくり、頭をなでまくった後、名残惜しそうに帰っていった。
どうやら恐ろしく多忙な中、このためにわざわざ来てくれたようだった。




見送りを終え、部屋に戻る兄の背中を見てはたと気付いた。

(あれ?じゃあ、私、兄と兄妹じゃない・・・?)

私は不安になって、「お兄様!!!」と大きな声を出して引き留めてしまった。

「なんだ?」

兄がいつものように振り返った。
呼び止めてしまったものの兄になんと言って声をかければいいのかわからなかった。

それに、兄との関係が変わってしまうのも寂しかった。

(今までずっと側にいられたのに・・。)

私が固まっていると、兄が小さく笑った。

「もう一度一緒に演奏するか?」

兄の言葉に私は思わず口元が上がった。

「はい!!ぜひ!!」

その日は兄と心ゆくまで演奏した。
兄のチェロの音と私の音が溶け合う感覚はとても優しく穏やかで甘美だった。



演奏が終わり、そろそろ就寝の時間になった。
私たちは楽器を片付け、部屋を出ようとした。

「ベル。」

すると、兄から呼び止められた。

「なんですか?お兄様?」

すると、兄はつかつかと近づいてきて、私の頬にキスをした。

(え??)

私は驚いて兄の顔を見た。
すると、兄が小さく笑った。

「ベル。私たちは兄妹ではない。」

その言葉に胸にトゲが刺さったような痛みを感じた。
兄に他人だと線を引かれたようで、私は胸が痛くなった。

(兄の側を離れるのは・・つらい・・な・・。)

「私は妹にこんなことはしない。忘れるなよ?」

そう言って、今度はおでこにキスをした。

「おやすみ。よい夢を。」

そのまま、部屋を出て行った。

私はそのまま、へたへたと床に座り込んでしまった。
兄にキスをされた、頬とおでこが熱かった。

(妹にこんなことはしない?・・え?
・・・・何それ?
え?・・)

そして、真っ赤になって熱を持った顔を両手で覆った。

(それって、まるで私のことが・・・。
え?何それ?・・え?)

心臓が壊れそうなくらい脈を打っていた。

今日はたくさん驚くことがあった。

音楽芸術学院への入学許可
本当の父親は、トリスタン様
そして、母親は、隣国のブリジットさん。

だがそれらのすべてよりも、先程の兄の言葉は私に衝撃を与えた。
それから私は、マリーの手を借り、部屋の戻ったらしいが、詳しく覚えていない。
とても眠れそうもないと思ったが、私はいつの間にか眠っていた。

夢の中でベルナデットが笑った気がした。
もしかしたら、彼女が眠りを手伝ってくれたのかもしれない。
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