我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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32 眠りを妨げるのは?

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トントン。

「お嬢様、お休みのところ申し訳ありません。」

トントン。

「お嬢様。」

いつもと違った様子のマリーに私は、目を開けた。


早朝(ちなみにいつも起きる時間よりも1時間くらい早い。)




今日は休日。

昨日、私はハイキングと言う名の登山に出掛けました。


そうつまりは・・眠いのです。

寝かせて下さい。


しかし、扉の前のマリーを困らせるわけにはいかないので、私は「どうぞ。」と返事をした。

「お嬢様。お支度を。トリスタン様がご帰宅されました。」
「・・・・?」

(トリスタン様?誰かしら?)

「よかったですね!!お嬢様!!トリスタン様ですよ?!
予定より随分早めに戻られたのですね。
きっとお嬢様にお会いしたくて、早く戻られたのですね。
お嬢様、よかったですね!!」

マリーにしては珍しく饒舌だ。

「・・・・。」
「ドレスはどれになさいますか?
先日、トリスタン様から贈られたドレスにしますか?」
「え?私、その方にドレスを頂いていたの?」
「はい。お礼状もお書きになられましたよね?」
「・・・・。」

(どうしよう!!なんだか、重要な方だというのはわかるけれど、どなたなのかわからないわ!!
それにお礼状も知らない人に書く時は、見本を見ながら、名前を入れ替えて書いているだけだから、誰に何を貰ったのか、よくわからないわ~~~。)

公爵令嬢の私は、よく贈り物を頂く。
しかし、ほとんどが父の仕事の関係者だったりするので、私はあったことない人ばかりなのだ。
お礼状が作業になるのも理解してほしい。


私が困惑していると、マリーが青い顔をした。

「もしかして、お嬢様・・・。
・・・・。
トリスタン様のご記憶は・・・?」
「残念ながらないわ。」
「お顔をぼんやりとも・・・。」
「覚えていないわ。」

すると、マリーが「少々お待ち下さい。」といってドアに向かった。
そして誰かに何かを言った後、こちらに戻って来た。

「失礼いたしました。とりあえず、お支度を致しましょう。」
「ええ。お任せするわ。」
「はい。」

(そうだわ・・。
最近忘れていたけど、私、記憶喪失だったわ。
まだ、断片的にしかベルナデットの記憶がないのよね~。
お会いすれば思い出すかしら?
でもお父様にお会いした時もわからなかったから・・。)

マリーが支度を済ませるとすぐに、ドアがノックされた。

「どうぞ。」

すると見たことのない男性が飛び込んできた。

「ああ~~~~ベル~~。記憶を無くしてしまったんだってね!怖かったね~~。」

そう言って、突然抱きしめられた。

(ん?デジャブ?)

すると後ろからお父様とお兄様も部屋に入ってきた。
兄が困ったように口を開いた。

「ベル。この方の記憶はあるのか?」

私は男性に抱きしめられたまま、兄に熱い視線を送った。

「ありません。」

(兄~~。助けて!!知らない美形男子怖い~~~!!!)

すると思いが通じたのか兄がフォローしてくれた。

「叔父上、ベルが困っています。
記憶を失っているのですから。」

男性がはっとしたように手を緩めてくれた。
そして、私の顔を見つめてきた。
やっぱり美しい顔だ。
本当に美しい。

「ベル・・。私のことは、その本当に覚えていないのかい?」
「はい。」

男性の目尻が下がってきた。

「何も?」
「はい。」

目には涙が溜まっている。罪悪感で胸が痛い。

「少しも?」
「・・・はい。」

とうとう、目から涙がこぼれた。

「全然?」
「・・・・。申し訳ありません。」

私は頭を下げて謝罪した。

(美形男子さん、すみません!!
全く記憶にございません!!!)

この状況をどうしたらいいのかと困っていると、父が助け船を出してくれた。

「トリスタン。ベルナデットまで泣きそうな顔をしているよ。
一度皆で、ゆっくりと話をしよう。
まず朝食を取って、それからサロンで話をしようか。」
「わかった。」

すると、男性が私の頭を撫でた。

「でもベルは本当に大きくなったな~。それにとっても綺麗になったね。」

その優しい手付きに、懐かしさを感じた。

「抱っこしてもいいかな?」

キラキラした目に見つめられた。

(え?どうしよう。そんな目で見ないで!!こんな美形に抱っこ?!無理!!キャパオーバー!!ああ~でも、断ったらまた泣いちゃう?どうする?どうする?
助けて兄~~~。お願い!!上手く断って~~!!)

と、兄に視線を送った。

「ベル。問題ないだろ?」

(え~~~~!!!まさかのそっち側??そうなの?私たちってそんな感じの関係なの?
ペット扱い???)

私は奥歯を噛みながらやっとの思いで返事をした。

「どうぞ。」

(本当はいやだけどね?すごく嫌だけどね~~~!!)

するとすぐに男性に抱き上げられた。
兄にされるようなお姫様抱っこではない。

男性の片腕にお尻を乗せて抱えられるいわゆるお子様抱っこだ。

(これは恥ずかしい~~~!!!)

「ふふふ。ベルもすっかり重くなって・・。
大きくなったね、嬉しいな。」

(ぐっ!!重い・・・。美形男子さん、いくら子供相手でも、女性にその言葉はNGです。)

「もう7歳だもんね。誕生日は来れなくてごめんね。」

そう言って頬にキスをした。

(ひえ~~~!!!逃げたい!!逃げたい!!!逃げた~~~い!!!)


私は早朝から、体力を使ってしまったのだった。
昨日、山登りをして体力を付けたのは正解だったかもしれない。
兄に感謝だ。
見捨てられたけど・・・。




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お忙しい中、お読み頂きましてありがとうございました!!
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