我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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2 兄との対面

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次の朝、侍女のマリー(昨日傍にいてくれた女性は侍女のマリーというらしい)に鏡の前で身だしなみを整えてもらった。

(はぁ~可愛い~~。)

自分の顔を見て惚れ惚れしてしまう。
重度のナルシストだが、勘弁してほしい。
まだこの顔と出会って、3日も経っていないのだ。
飽きるわけがない。

「お嬢様、本日のご朝食は、お部屋でお召し上がりになりますか?
それとも旦那様と、エリック様とご一緒に食堂でお召し上がりになりますか?」

マリーの口から知らない名前が飛び出した。
知らない人と食事するのは、正直ハードルが高いけど・・。
いつまでも何も知らないのもそれはそれで不便だ。

(朝食だし、きっと全くの他人という訳ではないよね?
でも一応確認しよう。お客様かもしれないし。)

「エリック様って、どなた?」
「エリック様は、お嬢様の兄君にございます。」
「え?兄君??私にはお兄ちゃんがいるの?」
「はい。」

マリーが優しく微笑んでいた。

(お兄ちゃん!憧れのお兄ちゃん。
はぁ~お兄ちゃんって憧れるよね。
妹しかいなかったから、凄く嬉しいかも。
妹とは仲が良かったから、お兄ちゃんも楽しみだな。
買い物とか一緒に行けるかな~。
あ、兄妹って他にもいるのかな?)

「ねぇ、マリーさん。私には他にも兄妹?がいるの?」
「兄君のエリック様とお嬢様のお2人ご兄妹でございます。」

(2人兄妹なんだ!!
あれ?食事は父と兄と一緒って?母は?
ん~聞いちゃう?どうする?
もし、他界してたら、マリー困るわよね。
でも低血圧で朝食抜く人かも?
今後の為にも、聞いとくか!マリーごめんなさい!!)

「お母さんは朝食は召し上がらないの?」
「奥様は、お嬢様が3歳の時に亡くなられました。」
「そうなの・・・。」
「はい。お嬢様、お辛いことをお話して申し訳ございません。」
「いいえ。私は知りたいの。だから、教えてくれると嬉しいわ。」
「ふふふ。本当にお嬢様は変わられましたね。」
「どう変わったの?」
「そうですね・・・。大人になられました。」
「大人・・・。」

(大人になった・・。これって、いいの悪いの?
どう解釈すればいいの??わからない!!)

「お嬢様、差し出がましいですが、以前のお嬢様は、旦那様のことを、お父様。
奥様のことを、お母様。
エリック様のことをお兄様とお呼びしておりました。」
「そうなのね。教えてくれてありがとう。マリーさん。
マリーさんでいいのかしら?
以前はなんて呼んでいたの?」
「さんはいりません。
マリーとお呼び下さい。
以前は、特に呼ばれていませんでした。」

(呼ばれていない?どういうこと?
わからないけど、これは聞けない雰囲気よね・・・。
少なくとも、マリーと呼ばれることに嫌悪感はないようだし・・。
追及はやめておこう。)

「そう・・。これからは、マリーと呼ぶわ。いいかしら?」
「光栄です。ありがとうございます。お嬢様。」
「食事は、食堂へ行くわ。お兄様ともお会いしたいし。」

(お兄様。楽しみ!!
買い物とかカフェとか一緒に行きたいな!!)

妹とはよく一緒に買い物に行ったり、ライブに行ったり、漫画やゲームを貸し借りして、比較的良好な関係だったので、わくわくしながら食堂に向かった。

「おはよう、ベルナデット。体調はどうだい?無理はしていないかな?」
「おはようございます。お父様。どこも痛いところはありません。」
「そうかそれなら良かった。」

食堂の前で偶然、お父様に会って、一緒に食堂に入った。
食堂に入ると、美少年が視界に飛び込んできた。

(ああ。父やベルナデットが美形なのだから、兄だって美形だよね・・・。遺伝凄い。)

「ベルナデット、君の兄のエリックだよ。」
「おはようございます。お兄様。」 

父から紹介されたので、ほっとした。
やはり、この美少年が兄らしい。
にっこりと笑って、あいさつをすると、兄であろう人物がまるで毛虫でも見るような視線を投げかけてきた。

(え?え?すっごく睨まれてる・・。
美少年の冷たい視線はつらい・・・。
なに?なんなの?)

「どういうつもりだ。
おまえがあいさつなど、何をたくらんでいる。」

(たくらむ・・・?
あいさつして、疑惑を持たれるって、どういう状況?
え~と?兄妹ってあいさつしないのかな?)

「エリック。説明しただろう。
ベルナデットは記憶を無くしているんだ。配慮しなさい。」
「・・・。」

全然納得していないといった兄とは重苦しい空気の中、食事をすることになった。

(あれが兄・・・。残念すぎる。
あの表情じゃ優秀な顔面遺伝子の無駄遣いね。)

食事が終わり、そろそろ部屋に戻ろかと考えていると、父が席を立った。

「2人とも、ゆっくり食べて。私はそろそろ行くよ。」
「・・・・はい。」

兄はそっけない。どこまでもそっけない。

(ああ、そうか!!
この少年は今、反抗期の真っ只中なんだね。
それで妹にもそっけないのか。
こどもってどこの世界でも同じなんだね~。仕方ないな。)

「お父様、お疲れ様です。いってらっしゃいませ。
お見送りをしてもよろしいですか?」
「え?」
「は?」

食堂内にいたすべての人(父、兄、執事のセバス、マリー、その他に数人)が驚きの表情のまま石化した。

「あの・・?お見送りはしない方がよろしいでしょうか?」
「いや、いいや。ベルナデットに見送られるなんて嬉しいよ。
一緒にお城に行くかい?」
「旦那様?」
「そうだった!!連れて行けない。
ああ~こんな可愛いベルナデットと離れたくない!!」
「お父様、玄関までご一緒します。」
「ああ。」

にっこにこの父と一緒に玄関に向かう。
玄関も本当に豪華絢爛で、目がチカチカする。
見るからに貴重そうな調度品が置いてある。
豪華さに圧倒されていると、父が玄関から出るために扉が開いたところだった。

「いってくるね。家庭教師はしばらくお休みしてもいいよ。
その辺りはセバスと相談しなさい。」

(家庭教師?ああ、なるほど。
幼児教育を受けているのか・・。
確かに、いかにもお嬢様って感じだしな~。)

「はい。お父様。」

馬車に乗り込むお父様を見送る。

(馬車!!凄い。
本当に馬が小さな部屋を運んでる・・。
木造ミニコンテナ?って感じだな~。
重くないのかな?馬も大変だな。)

つい馬車に見とれていると、隣から不機嫌そうな声が聞こえてきた。

「おい。いくらお父様が許しても、公爵家の者としての教養は身につけろ。
我が家の恥になるだろう。」
「恥ですか?」
「そうだ。もう少し、公爵家として自覚を持て。」

(はて?コウシャクケ?苗字?あれ?
苗字ってアトルワだったような・・・?
あと教養?
・・・あ、さっきの幼児教育のこと?
さぼるなって言いたいのかな?)

「お兄様は、先程の家庭教師をお休みするかどうかのお話をしているのですか?」
「あたりまえだ。」
「必要とおっしゃるならお休みしませんよ。」
「嘘をつくな。
そもそもおまえは、勉強が嫌で先生から逃げ出して、階段から落ちたのだろうが!!白々しい。」

目の前の少年から衝撃の事実を知らされた。
言われて見れば、なぜ階段から落ちたのか不思議だ。
事件性があるなら、解決しないと不安極まりない。
だが、あろうことか勉強が嫌で逃げ出して、階段から落ちるって・・・。

(ベルナデットちゃん・・。
お転婆すぎやしないかい?
そんなに勉強が嫌だったの?
でも6歳って、小学校入学前?
あ~。逃げるかも?)

思わず小さなベルナデットに同情していると、不機嫌な兄の声で現実に引き戻された。

「おい。聞いているのか。」
「聞いていますよ。お兄様。」

ちょっと面倒になってきたので、営業スマイルで対応することに決めた。
そして、兄に背を向けセバスに話かけた。

「お兄様も、うる・・心配されていますので、今日は勉強します。」

うっかり、うるさいと言ってしまいそうになったが、なんとか取り繕うことに成功した。

「しかし、お嬢様。記憶もまだ曖昧ですのに、勉強など大丈夫ですか?」
「はい。しかし、今までの学習内容を忘れてしまっていて、先生にご迷惑をおかけするかもしれませんが。」
「そんな心配は不要だ。おまえは元々忘れるほど勉強はしていない。」

兄が真面目な顔でセバスとの会話に割り込んできた。

(反抗期男子・・・面倒だな。)

しかし、その後受けた授業で、本当に何も学んでいなかったことが発覚した。
もともと文字もほとんど読めないし、書けないし、やってもいないのにできないできないと癇癪を起こしていたらしい。
まぁ、6歳なんでね。仕方ないよね。
仕方ない・・ということにしておこう。

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