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最終章
67 防衛(1)
しおりを挟む剣を合わせた瞬間、男がニヤリと笑った。
「お前……無属性魔法を使うのか。ふははは!! 面白い!! アデプトを魔法で強化か。お前の武器を破壊出来れば、俺は歴史上でも最強の破壊者だな」
以前、武器を破壊された俺は、刀が破壊されないように無属魔法と呼ばれる強化魔法を刀にかけて男と戦っていた。
「へぇ、わかるんだ?」
あえて挑発的に尋ねると、男が鼻で笑いながら言った。
「ついでに言うと、お前の仲間は無事に逃げたぞ。そろそろ本気で俺を戦っても問題ない」
「そこまで気づいていたんだ」
どうやら男は、俺が囮になったのを気づいていたようだ。
もしかしたら、この男はヴァルラムが使うような隠者の力のような能力があるのかもしれない。
「ああ。お前は面白そうだ。俺は権力には興味がない。それに弱者にもな!!」
そして男は力いっぱい剣を振り下ろした。
咄嗟に攻撃を避けた地面を振り向くと、大きな溝が出来た。これは下手に逃げると、周りが傷つく可能性がある。もし、鳥や動物に当たったらひとたまりもないだろう。
「環境破壊は感心しないな」
男は楽しそうに笑いながら言った。
「ふはは!! これを見てもまだ、そんなことを言う余裕があるのか。久しぶりに楽しめそうだ!! 俺が興味があるのは、血肉が湧き立つ戦いだけだ!! 環境破壊を気にするのなら、ずべてお前が受け止めろ」
男は、剣に火柱をまとわせた。先程の威力に加えて炎の殺傷能力まで追加されてしまった。
「逃げるなよ!!」
男はそう言うと、剣を振り上げた。俺は咄嗟に剣だけではなく全身を防御しながら、男の攻撃を受けた。
周囲に金属音と爆風が吹き、地面が凹む。
マイアの魔法乱舞のおかげで同時に使えるようになったが、やはり防御と強化を同時に使うのは負担が大きい。
身体中から汗が噴き出す。
「その小さな体で俺の攻撃を受けるのか。面白い!!」
俺は低い方ではないが、相手は二メートル以上もある大男だ。しかも筋肉の鎧で包まれている。
「魔法に頼り過ぎて、自分を鍛えるのを怠ったんじゃない?」
男を挑発するように、俺は声をかけた。
これは、忍びというより刀を使う者ならわかると思うが、怒りは相手の呼吸を読みやすくする。冷静な人間を相手にするより、相手を怒らせた方が、戦いは楽に終わる。
案の定、男は苛立った様子で声を上げた。
「何?! ふざけたことを!! それほど言うのなら見せてやる!!」
魔法に頼っていると言われて、男は魔法を全て解除した。しかも男は自分の身にまとっていた鎧のようなマントまで投げ捨てた。
そのまま俺に向かって剣を構えた。
「俺自身の実力が知りたいというのなら……見せてやるよ!!」
次の瞬間、男の剣が俺の目の前に来た。
寸前のところでいなしたが、男の攻撃速度は先程よりも数段上がっていた。
かまいたちのように刃が次々に襲い掛かる。
「はははは!! 大口を叩いたわりにはその程度か!!」
男は攻撃を緩めることはない。
このままでは……確実に男を止めることはできない。
こんなヤツがベルスリータ達を追えば……。
俺は、奥歯をかみしめ刀を握りしめたのだった。
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