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第三章
62 黒騎士の砦にて(1)
しおりを挟む一本の線が繋がった……そんな気がした。
ヴァルラムが俺をこの世界に連れて来た目的。
そして、ヴァルラムが俺が飛ばされる直前に言った『真の依頼内容』
「随分と探した。だが、まさかベルスリータ様の護衛をしてくれているとは、蓮。私の期待以上の働きをしてくれたことに感謝しかない」
ヴァルラムが心底嬉しそうに言うので、調子が狂ってしまう。
「まさか、レンと師匠は知り合いでしたの?」
ベルスリータが俺たちを見ながら尋ねた。するとヴァルラムがベルスリータ様を優しく見つめながら言った。
「はい。ベルスリータ様。長旅でお疲れでしょう? ゆっくりとされた後に詳しいお話を致します。その時に私にもベルスリータ様たちのお話お聞かせ下さい」
俺たちはゲアニブル山脈を越えて来た。ベルスリータもマイアも前線で戦っていたので、少しさっぱりとして休んだ方がいいだろう。
「そうね。そうさせてもらうわ」
ベルスリータも疲れていたようで、素直に頷いた。やはりヴァルラムに会って安心したのだろう。彼女の表情から一気に力が抜けていた。
「湯浴みと、食事の用意をさせます。こちらへ」
ヴァルラムが俺たちを砦の中へ案内してくれた。俺たちは素直にヴァルラムについていったのだった。
◆
「レン君は、黒騎士の総団長とお知り合いだったんだね~~凄い人脈だな~~あ~~でもこの温泉っていうの最高過ぎるな。さすが総団長のセンスは抜群だな~~」
俺は今、ジンバと共に日本風の岩を使って作られた半露天になっている風呂に入っていた。ジンバはかなり岩風呂が気に入ったようだ。
「はぁ~~本当にいいね~~土の魔力が含まれているお湯って癒されるな~~。ここにいる間にあと5回は入りたい」
「わかります!! ハレッサー君!!」
ハレッサーもかなり気に入ったようだった。ジンバもハレッサーもすっかり温泉に夢中なようだった。無色透明で少しとろみのあるこのお湯は美人の湯と呼ばれる物だろう。俺は温泉よりも先ほど気になった言葉をジンバに尋ねることにした。
「ジンバ、さっきの総団長ってどういうこと? 黒騎士の団長ではないのか?」
俺は少しだけ不思議に思って尋ねた。するとジンバが気持ちよさそうに答えた。
「ん? ああ、そうそう。この国には銀と白と黒の騎士がいるだろう? それぞれの団長と騎士全体をまとめる総団長がいるんだ。歴代銀と白と黒と交代で選ばれ、現在の総団長は黒騎士のヴァルラム殿なんだよ。あ~~気持ちいい~~」
なるほど……総団長。各騎士が暴走しないように総団長という地位があるのか。
「ジンバ。俺はそろそろ上がる」
「ああ。俺はもう少し入っているよ」
「ハレッサーはどうする?」
「ん~~僕はジンバと一緒にあがる~~」
「そうか、2人とも、のぼせないようにな」
俺は風呂を出ると着替えて、自分に割り当てられた部屋に向かった。すると俺の部屋の前にヴァルラムが立っていたのだった。
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