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第三章
60 選択士に課せられた使命
しおりを挟む「人生の帰路になる迷いの問いか……」
俺はそう呟いて、もう一度星空を見上げた。もしかしてそれは、ベルスリータや傭兵の男の頭に浮かんだ選択肢とその後見えた映像のことだろうか?
でも結局俺は選択肢と映像が見えただけで、何も出来なかった。
「ん? もしかして、心当たりがあるの??」
ハレッサーに問われて俺は、ハレッサーの方を見ながら答えた。
「迷いの問いというのは見たことがある。そして、それぞれを選ぶとどうなってしまうのかも。でも俺には見えるだけで何も出来なかった」
俺が答えるとハレッサーが言った。
「まぁ、これまでのレンは魔力が全くなかったからね。でもこれからは違う。迷いの問いが出てきたら、その問いと問いの導きを相手に見せることが出来る」
「相手に問いを見せる……」
「そうそう。僕はよくわからないんだけど、使えた人の話では、時間が止まったようになり、問いを相手に見せれるんだって。でもこればかりは、レンが迷いの問いが見えた時に、強く相手に見せると思うしかないんだよね~~~」
「思うだけでいいのか?」
俺は、ハレッサーを見ながら言った。するとハレッサーが困ったように言った。
「うん。魔法を使う時ってこんな防壁を使いたい~~攻撃を返したい~~って思ってるでしょ?」
俺は先ほどまでの訓練を思い出した。確かにイメージで魔法が使えていた。選択士の能力も魔法の一部なら今訓練している無属性魔法と同じだというのは理解出来た。
「少しわかった気がする」
ハレッサーが笑顔で言った。
「そっか」
俺は、笑顔になったハレッサーに向かって尋ねた
「それで、最上位魔法『黄昏の刻』を止めるっていうのは、どういう意味なんだ?」
「ん~~~?」
ハレッサーは曖昧な返事をすると、倒れて地面の上に寝ている俺の胸の当たりに上ってペタリと引っ付いた。なんでも俺にピッタリとくっつくと俺の魔力を直接感じられるので心地がいいらしい。俺もハレッサーのフワフワした毛や体温が触れるのは心地いい。
ハレッサーはしばらく俺の胸にくっついた後に口を開いた。
「『黄昏の刻』っていうのは本来呪いの類いのなんだ。発動したら周辺が術者以外、草木一本残らない死の世界になる」
俺はゴクリと息を飲んだ。つまりそれは破壊兵器のような代物なのかと思った。そんな怖ろしい魔法があると知って冷汗が流れた。
「さらに厄介なことに『黄昏の刻』ってね。魔力が暴走したら、自分で使用を制御できなくなるんだよ」
「え? そんな危険な魔法を制御できなくなるのか?」
俺は慌ててハレッサーに尋ねた。
「うん。でもね、その『黄昏の刻』を発動しそうになったら、術者に迷いの問いが現れるんだって」
それって……。
俺は、身体から血の気が引いていくのを感じた。
ハレッサーもそれを感じたのか、俺をチラリと見ながら言った。
「つまり……選択士の能力を持つレンが止めなきゃ、『黄昏の刻』の暴走は止められないってこと」
俺は、ハレッサーの説明を聞いて、心臓が早くなるのを感じたのだった。
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