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第三章

59 魔法訓練

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 王国の騎士団でさえ踏み入れないというゲアニブル山脈内の洞穴で、ベルスリータやマイアやジンバは昼間の疲れを癒すべくぐっすりと休んでいた。見張りは、コルアルが引き受けてくれた。
 戦闘で疲れ切ったベルスリータとマイアは食事を済ませた途端に眠ってしまった。
 ジンバも重い荷物を背負っていたからか、食事を終えてコルアルが見張りをしてくれるとわかると、糸が切れたマリオネットのようにすぐに眠りについた。

 そして俺は――見張りをコルアルに任せて、ハレッサーと一緒に洞穴近くで、無属性魔法の訓練をしていた。
 今は、無属性魔法バリアーの訓練中だった。それだけではなく相手の攻撃を跳ね返すという機能を付けた。

 自分の身体をカプセルのような物で全身を覆い、全方位をバリア―で包み、攻撃を受けた方向に攻撃を返すという訓練をした。

 ハレッサーが少し離れた場所から土魔法で地面から土玉を作り、俺目掛けて四方八方から俺に攻撃を仕掛けてくる。それを意識して攻撃を返した。

 ハレッサーの飛ばす土玉は無秩序でかなりの集中力を要する。
 防ぐだけならなんの問題もなく出来るようになったが、やはり受けた攻撃を受けた場所に返すというのは酷く難しい。さらに俺が昔から受けていた普段の戦闘訓練とは違って、魔法の操作は慣れていないからか、酷く疲れる。
 額から流れる汗が目に入って、拭おうとした瞬間。

 ドサッ!!

 大きな音がして、俺は地面に倒れ込んでしまった。するとハレッサーが木の上から手足を広げて飛んで、俺の顔の近くまでやって来た。

「レン、少し休憩ね~~」
「ああ」

 声は出せるので返事をした。
 今は、魔法酔いという状況らしい。魔法を使ったことのない者が魔法を使うと、魔法酔いの状況になるそうだ。これは休んで自分の身体に魔法を馴染ませるしか対処法はないようだった。こうして地面に倒れ込むのは、今日はこれで二度目だった。一度目は一時間くらいで回復したので、今回もそのぐらいだろう。
 ただ一度目よりは頭もすっきりしていて楽なくらいだった。

 俺は寝転んだまま空を見上げた。
 空に信じられないほどの星が輝いていた。星が多すぎて星座も星の名前もわからない。こちらで見える星は地球とは違うの星座などがベルスリータやマイアに聞いて少しだけ覚えた。こっちの世界にも星座があると聞いて、場所が変わっても人というのは似ていると思ったものだ。

 俺はこの圧巻の星空を見た後に、寝転んだままハレッサーに尋ねた。

「なぁ、ハレッサー。選択士ってどんな能力があるんだ?」

 俺が尋ねるとハレッサーが困ったように笑った。

「ふふふ、魔力酔いしてて、気分悪いだろ? 休んでいればいいのに、話聞きたいの?」
「時間……もったいないだろ?」

 気分は悪いが、俺には時間がない。

「レンは本当に熱心だな~~いいよ。選択士っていうのはね」

 ハレッサーは衝撃的なことを教えてくれた。

 ――人生の帰路になるべき時に、その者の迷いの問いが見える。

 それが選択士……。

 ハレッサーは静かにそう言ったのだった。





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