60 / 79
第三章
57 仕上げに(3)
しおりを挟む聖獣ドラマリクアの巣穴である大洞窟内に、白騎士団の偵察隊の姿が見えた。
白騎士団が集めた傭兵たちの精鋭は、仲違いをしたのか全滅してしまった。騎士と違い統率の取れていない烏合の衆である傭兵に『お互い協力しろ』という方が無理な話だったのかもしれないと、白騎士の幹部は思っている。
折角聖獣ドラマリクアの魔力が落ちているうちに一気に叩きたかったが、もう少し時間がかかりそうだ。
そこで、白騎士は聖獣ドラマリクアが眠る場所に偵察隊を派遣した。
「(いたぞ、あそこだ。やはり大きいな……)」
偵察隊の一人が10メートル程離れた場所から声を上げた。
魔導士の一人が杖を構えた。
「(魔力測定)」
白騎士内の魔導士が魔法を使って聖獣ドラマリクアの魔力を測定した。
そして測定を終えて小声で報告した。
「(隊長、前回と魔力量は変わっていません)」
その報告を聞いた隊長が顎に手を当てながら言った。
「(ふむ……聖獣にもなると魔力が回復するまでに時間がかかるということか。早速騎士団長にご報告だ」
「(はい)」
偵察隊は、聖獣ドラマリクアの調査を終えて、大洞窟を出て行った。
◆
「うん、完全に洞窟から出たみたいだよ~~~~」
大きなハレッサーの影から、レンの肩の上に乗ったハレッサーがにんまりとしながら言った。
「どうやら上手く行ったみたいね」
ベルスリータがほっとしながら言った。
「上手くいってよかった~~~」
マイアがほっとしたように言った。
「これも、マイアとジンバがハレッサーそっくりの偽物を作ってくれたおかげね」
ベルスリータが嬉しそうに言った。
実は――俺は事前にマイアとジンバにハレッサーのぬいぐるみのようなものを作ってもらえるように画像を2人に送っていたのだ。
大きなぬいぐるみのようなものを想像していた俺だったが、マイアの魔力と、ジンバの魔道具の知識で、数種類の動きならできるロボットのようなハレッサーの偽物が完成したのだ。
それをコルアルと一緒に大洞窟に設置した後に、俺はまたみんなのところに戻り、ベルスリータやマイアやジンバと一緒に大洞窟にやってきて様子をみていたのだ。
俺の無属性魔法で完全にみんなの気配を消したので、ハレッサーや、俺、マイアの魔力は測定されなかった。ちなみに彼らが測定したのは、『魔力測定』の魔法に反応したら、作動して特定の測定結果を相手に見せるジンバが若い頃に発明した魔道具だ。ちなみにその魔道具の存在の知っているものも多いという。
「魔力測定記憶装置に気付かれないかとハラハラしたが……偽のハレッサー殿存在が上手く誤魔化してくれたようだ」
ジンバがほっとしたように言った。
「洞窟内は暗いしね~~。ふふふ。でも僕だってわからないんだね~~面白かったぁ~~」
ハレッサーが楽しそうに言った。
マイアとジンバが作ったハレッサーの魔道具は、まるで生きているように胸の辺りが動いている。これなら寝息を立てているように見えるだろう。
かなり近付いてもわからない。
しかも攻撃を受けたり、魔法を察知したらバリアを張れるようになっているらしい。どこまでもハイスペックな偽物だ。
俺はベルスリータを見ながら言った。
「これで、時間は稼げそうだな。じゃあ、このままゲアニブル山脈を越えよう」
「ええ。行きましょう」
ベルスリータが答えると皆が頷いたのだった。
54
お気に入りに追加
215
あなたにおすすめの小説
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います
やなぎ納屋
ファンタジー
ヤマトは異世界に召喚された。たまたま出会った冒険者ハヤテ連れられて冒険者ギルドに行くと、召喚師のクラスを持っていることがわかった。その能力はヴァルキリーと契約し、力を使えるというものだ。
ヤマトはハヤテたちと冒険を続け、クランを立ち上げた。クランはすぐに大きくなり、知らないものはいないほどになった。それはすべて、ヤマトがヴァルキリーと契約していたおかげだった。それに気づかないハヤテたちにヤマトは追放され…。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。
とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。
…‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。
「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」
これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め)
小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる