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第三章

57 仕上げに(3)

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 聖獣ドラマリクアの巣穴である大洞窟内に、白騎士団の偵察隊の姿が見えた。
 白騎士団が集めた傭兵たちの精鋭は、仲違いをしたのか全滅してしまった。騎士と違い統率の取れていない烏合の衆である傭兵に『お互い協力しろ』という方が無理な話だったのかもしれないと、白騎士の幹部は思っている。
 折角聖獣ドラマリクアの魔力が落ちているうちに一気に叩きたかったが、もう少し時間がかかりそうだ。
 そこで、白騎士は聖獣ドラマリクアが眠る場所に偵察隊を派遣した。

「(いたぞ、あそこだ。やはり大きいな……)」

 偵察隊の一人が10メートル程離れた場所から声を上げた。
 魔導士の一人が杖を構えた。

「(魔力測定)」

 白騎士内の魔導士が魔法を使って聖獣ドラマリクアの魔力を測定した。
 そして測定を終えて小声で報告した。

「(隊長、前回と魔力量は変わっていません)」

 その報告を聞いた隊長が顎に手を当てながら言った。

「(ふむ……聖獣にもなると魔力が回復するまでに時間がかかるということか。早速騎士団長にご報告だ」
「(はい)」

 偵察隊は、聖獣ドラマリクアの調査を終えて、大洞窟を出て行った。





「うん、完全に洞窟から出たみたいだよ~~~~」

 大きなハレッサーの影から、レンの肩の上に乗ったハレッサーがにんまりとしながら言った。

「どうやら上手く行ったみたいね」

 ベルスリータがほっとしながら言った。

「上手くいってよかった~~~」

 マイアがほっとしたように言った。

「これも、マイアとジンバがハレッサーそっくりの偽物を作ってくれたおかげね」

 ベルスリータが嬉しそうに言った。

 実は――俺は事前にマイアとジンバにハレッサーのぬいぐるみのようなものを作ってもらえるように画像を2人に送っていたのだ。
 大きなぬいぐるみのようなものを想像していた俺だったが、マイアの魔力と、ジンバの魔道具の知識で、数種類の動きならできるロボットのようなハレッサーの偽物が完成したのだ。
 それをコルアルと一緒に大洞窟に設置した後に、俺はまたみんなのところに戻り、ベルスリータやマイアやジンバと一緒に大洞窟にやってきて様子をみていたのだ。

 俺の無属性魔法で完全にみんなの気配を消したので、ハレッサーや、俺、マイアの魔力は測定されなかった。ちなみに彼らが測定したのは、『魔力測定』の魔法に反応したら、作動して特定の測定結果を相手に見せるジンバが若い頃に発明した魔道具だ。ちなみにその魔道具の存在の知っているものも多いという。

「魔力測定記憶装置に気付かれないかとハラハラしたが……偽のハレッサー殿存在が上手く誤魔化してくれたようだ」

 ジンバがほっとしたように言った。

「洞窟内は暗いしね~~。ふふふ。でも僕だってわからないんだね~~面白かったぁ~~」

 ハレッサーが楽しそうに言った。
 マイアとジンバが作ったハレッサーの魔道具は、まるで生きているように胸の辺りが動いている。これなら寝息を立てているように見えるだろう。
 かなり近付いてもわからない。
 しかも攻撃を受けたり、魔法を察知したらバリアを張れるようになっているらしい。どこまでもハイスペックな偽物だ。

 俺はベルスリータを見ながら言った。

「これで、時間は稼げそうだな。じゃあ、このままゲアニブル山脈を越えよう」
「ええ。行きましょう」

 ベルスリータが答えると皆が頷いたのだった。





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