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第三章
56 仕上げに(2)
しおりを挟む「じゃあ、当分は討伐隊は動けないのね……」
ベルスリータが目を丸くしながら言った。
現在俺は、食事の後に砦の様子をみんなに説明していた。
討伐隊として選ばれていた者たちが、俺の防御のせいで皆ケガを負って動けなくったこと。
砦の中が混乱していること。
俺が砦で起こった重要なことを簡潔に伝えるとジンバが口を開いた。
「なるほど、鏡のように攻撃を弾き返す防御か……初めて聞いたな。そんな防御使われたら、攻撃も出来ない。まさに最強で最恐な防御だな」
ジンバがベルスリータとは違う理由で驚いていた。
そんな中、マイアが何かに気付いたように声を上げた。
「今の話を聞いていて思ったのですが……もしかして、レン様も聖獣様の加護持ちってことですか?」
聖獣の加護持ち?
俺が?
確かに、ハレッサーの魔力を貰って、ハレッサーに魔法を教えて貰ったけど……。
俺はハレッサーを見た。
「ん~~~~加護とは、ちょっと違うかな~~」
ハレッサーが俺の肩に乗ったまま言った。その言葉を聞いて、ベルスリータが口を開いた。
「では、レンにはハレッサーの加護はないのですか?」
「レンはね、加護とかじゃなくて……ん~~僕と同化してるから、加護っていうよりむしろレンが聖獣だね~~~」
「レンが聖獣?!」
ベルスリータが大きな声を上げたが、俺もぎょっとして肩のハレッサーに言った。
「俺が聖獣って……。ハレッサーに魔力借りてるだけだろ?」
「ん~~~そんなこと言われたって……僕は魔力で存在してて、その大半をレンが持ってるんだよ~~レンも聖獣じゃん!!」
随分あっさりと、俺は聖獣ということになってしまった。
「ああ、そうそう。レンが自由に魔力を扱えるようになればね~~レンの特殊能力の【選択士】の力も自分の意思で使えるようになるよ」
俺はハレッサーのいう【選択士】と言うのが一体どんな能力なのか全くわからないが、ハレッサーの言葉を聞いた瞬間。ベルスリータもマイアもジンバもまるで、石になってしまったかのように固まったのだった。
「レンが……あの【選択士】だったなんて……」
「それが本当なら、大変なことです」
ベルスリータとマイアが俺を見て声を上げた。
選択士というのがどんな能力を持っているのかまるでわからないが、皆が驚くほどの特殊な能力なのだろう。
「人の迷いを読み解く者――それが選択士」
ジンバが口を開いた。
そして、神妙な顔をしたベルスリータが、ゆっくりと口を開いた。
「古い文献に、『黄昏の刻を鎮めし者、その名も【選択士】。人の迷いを読み解く者』って記されているの」
『黄昏の刻』というのはどこかで聞いたことがある。
確か――。
「お兄様、ランアデルバ国王太子レーグルス・フュルスト・ランアデルバのみが使える……ランアデルバの血に眠る最上位魔法『黄昏の刻』を唯一鎮めることのできる人だと伝えられているわ……」
どうやら俺は自分が想像する以上に厄介な力を手に入れてしまったようだ。
ベルスリータが俺を見ながら力強く言った。
「レン。一刻も早く、ゲアニブル山脈を抜けて、辺境都市ラルフェアに向かいましょう!! レンが居れば……お兄様を助けられるかもしれないわ……それに、あそこには師匠がいるわ。選択士について詳しく知っているかもしれないわ」
元々俺たちは、辺境都市ラルフェアに向かうためにゲアニブル山脈を越えるつもりだった。
俺の血の中には元々の忍の力【獣使役】がある。
新たに力を得たとなると、俺としても自分の能力を知っておきたい。
忍の俺にとって自身の能力を知るのは、任務をこなす上で絶対に必要なことなのだ。
「わかった。この件の片付けて、すぐに向かおう」
俺はすぐに同意したのだった。
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