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第二章

45 緊急指令、聖獣討伐隊を止めろ!!(4)

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 身体が熱くて、足元がフラフラする。高熱に浮かされているような感覚に思わず顔に片手を当てて耐える。体内の水分が沸騰しているように思えた。

「これは……なんだ?」

 顔をしかめて身体を傾けながら呟くと、コルアルが俺を背中に乗せながら口を開いた。

(大丈夫か? ……レン。心配するな。ハレッサーの魔力をレンに預けているだけだ。身体に問題はないが、私の上で休んでいろ)

「魔力……?」

 俺は、コルアルの背中の上に横になったまま呟いた。そういえば、先ほどまでハレッサーの尻尾に包まれていたが、ハレッサーの姿が見えない。視線を動かしてハレッサーを探すと、顔のすぐ横から声が聞こえた。

「レン、まだつらい?」
「……ハレッサーか? 随分と小さくなったな……」」

 いつの間にか、ハレッサーはタヌキほどの大きさになっていた。先ほどはコルアルよりも遥に大きい身体だったのに、いつの間にか縮んでいた。

「僕、だってこれくらいの方が動きやすいんだけど、魔力が多いからさ。中々見た目を変えられないんだけど、レンの器は大きくて、渡したい放題」

 ハレッサーはふわふわの尻尾を俺の頬にスリスリと押し付けながら言った。そういえば、先ほどからハレッサーとは声に出して会話をしていた。

「……ハレッサーって、言葉が話せるのか?」

 コルアルは言葉を声に出すことはできないので、お互いの意思で会話をするという感じなのだが、ハレッサーとは普通に会話が出来た。

「ああ、そうそう。この姿ならね。そうじゃないと、普段の僕の大きさで声を出しちゃうと、声が大きくてさ、振動で岩がポロポロ崩れてくるんだよね~~。本当にレンっていいね。魔力の器がデカくてさ!! 僕、姿自在に変えられる。さて、逃げようか?」

 ハレッサーは、逃げるという雰囲気ではなく、観光か何かに行くという明るい様子で言った。まぁ、動きたくないと言われるよりはいいのだが。そんな会話をしているうちに、俺の身体の怠さも無くなってきた。

「コルアル、ありがとう。もう大丈夫だ」
「では、次は【ローイダ騎士宿舎】に行くか?」

 コルアルの言葉に俺は少し悩んで答えた。

「いや……一度、小屋に戻ってハレッサーの安全を確保してから、俺とコルアルだけで……」
「待って。僕も行くよ」

 ハレッサーがレンの言葉を遮って口を開いた。

(ハレッサーよ、【ローイダ騎士宿舎】には、お前を討伐しようという人間が集まっている。危険だ)

 コルアルもハレッサーを説得するように言ったが、ハレッサーが怪しげに目を細めて、鼻をヒクヒクさせながら答えた。

「へぇ~~~~僕の討伐ねぇ~~~そんな面白そうなところに、僕が行かなくて誰が行くのさ。大丈夫だって、今の僕なら誰もわからないよ。なんなら、毛の色を茶色に変えてもいいしさ」

 ハレッサーは、銀色に近い白い毛色だったが、一瞬で茶色に毛の色を変えた。これでどこから見てもムササビのようにしか見えなくなった。

「僕も行くからね!! レンと離れないし~~~そう言って、ハレッサーは俺の首にまるでマフラーのように巻きついた」

 俺はコルアルと顔を見合わせて溜息をついた。

「わかった。でも、余計なことするなよ?」
「は~~~い」

 ハレッサーは機嫌良さそうに返事をした。俺はこめかみを抑えながらコルアルに言った。

「じゃあ、行こうコルアル」
「ああ」

 こうして、コルアルは俺とハレッサーを背中に乗せて、【ローイダ騎士宿舎】に向かったのだった。
 




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