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第二章
43 緊急指令、聖獣討伐隊を止めろ!!(2)
しおりを挟む俺が作戦を話すとジンバが唸り声を上げた。
「いい作戦だと思うが……レン君の負担が大き過ぎないだろうか?」
俺は、ジンバたちを見ながら言った。
「そんなことないって、この作戦の鍵は、ベルスリータの記憶力と、ジンバとマイアの錬製術なんだからさ」
「……レン、いつもありがとう。お願いします」
ベルスリータが真剣な顔で言ったので、俺はベルスリータの頭を撫でると、「そっちも頼む」と言ってすぐに小屋を出た。
(レン、今日は随分と遅かったな)
小屋で出ると目の前にコルアルが待っていてくれた。
(コルアル! 実は……)
俺は、コルアルの全てを話すことにしたのだった。
◆
話を終えると、コルアルが呆れたように言った。
(あの無精者が、そのようなことをするはずがないな……)
(コルアルは、聖獣を知ってるの?)
コルアルは無表情に言った。
(聖獣と呼ばれているとは知らないが、その場所に住む大型の獣はあの者しかいない)
コルアルは翼を広げながらさらに言葉を続けた。
(レン、私も手を貸そう。あの者が居なくなるなると、この辺りの獣たちが縄張り争いで多く傷つくだろう。そうなると私の縄張りまで荒らしかねないからな……乗れ、レン!! 連れて行ってやる)
(ありがとう、コルアル!!)
俺は、コルアルの背中に乗ると、聖獣が住む場所に向かった。
久しぶりにコルアルの背中に乗った俺は、コルアルのふわふわの背中に癒されながら、地図と合わせてこの辺りの地形を把握するように下を見ていた。どうやら聖獣が住むと言われている辺りはゲアニブル山脈と呼ばれる場所にあるためか、険しい山が連なっている。
(レン、もうすぐ着くぞ。掴まっていろ)
(うん)
俺がコルアルの背に掴まるのを確認すると、コルアルが高度を下げ始めた。そして、大きな岩がゴロゴロと転がっている巨大な洞窟の前に着いたのだった。洞窟の中には光る石のような物が落ちていて、明るさを保っていた。
(レン、ここだ。行くぞ)
(ああ)
俺は、コルアルの背中に乗ったまま、洞窟の奥に進んだのだった。
◆
しばらく行くと、コルアルの数倍はあるウサギのような、ネズミのような、タヌキのような不思議な生き物が丸くなっていた。その生き物はコルアルと俺を見ると、目を開けて面倒だという様子で声を上げた。
(あ~~~コルアルか~~~久しぶり~~元気?)
やはり、俺はこの謎の生き物の声を理解できるようだった。
(ああ。久しいな、ハレッサーよ)
どうやら、この生き物は、ハレッサーという名前のようだ。ハレッサーは俺をチラリと見るとコルアルに視線を移しながら尋ねた。
(それで~~なんの用? まさかコルアルも、僕を攻撃しに来たってわけじゃないんでしょ? 全く、なんだっていうんだよ。僕が何をしたっていうのさ……)
(もしかして、誰かに攻撃を受けたのか?)
俺が思わず尋ねると、先ほどまで怠そうに半目で俺たちを見ていたハレッサーの目が大きく開いた。
(え? この人間、言葉わかるの? 話出来るの?)
(ああ、わかる)
俺が頷くと、聖獣が身体を起こした。俺はこの生き物に似た動物に心当たりがあった。足と手の間に幕のような物がある。木から、木へ華麗に忍者のように飛び移る動物――ムササビやモモンガだ。
俺の知っているムササビやモモンガは大きくても両手に乗るほどの大きさだが、さすが聖獣といったところだ。二階建てのビル位の大きさはある。
俺が巨大なムササビかモモンガのような聖獣に圧倒されていると、聖獣が口を開いた。
(ねぇ、どういうこと? どうして、僕が攻撃されなきゃなんないのさ~~。力を分けてあげたら、手は出さないって、人間の方が言ったんだよ?)
(もしかして、人間に何かの術を教えたのか?)
(そうだよ。……まぁ、100年位前の話だけど……)
100年前……。そういえば、随分と昔に聖獣から術を教わった人間がいて、それがあまりに危険だから『禁術』になったて言ってたな。どうやら、今、聖獣が言っているのは、初めに人間に術を教えた時の話をしているようだ。
(ハレッサーよ……100前のことを昨日のことのように話のは止めろ。混乱する。して、人に攻撃を受けたというのはいつだ?)
コルアルの問いかけに、ハレッサーが首を傾けながら言った。
(ん~~? さっき?)
(え? さっき?)
俺が尋ねると、コルアルが深い溜息を付きながら言った。
(ハレッサー。人間時間で言え。それではわからぬ)
(え~~~。そうだね~~人間時間で言うと……2週間前くらいかな~~)
俺は、この場にコルアルが居てくれたことに心から感謝した。
(どんなヤツが攻撃して来たんだ?)
(ん~~白い髪の背の高い……男だった)
――ライエだ。そう思った。だが、ライエに攻撃されて無事だったのは、さすがは聖獣だ。
(よく無事だったな。よかった)
(無事じゃないよ!! 攻撃防いでたら、魔力尽きそうになって大変だったんだから!! まぁ、向こうが先に魔力切れになったから助かったけどさ~~~)
もしかしたら、傭兵に聖獣を襲わせるのは、聖獣の魔力を削ぎ落としてから仕留めるためかもしれない。
(あの、ハレッサーって呼んでもいいか?)
俺の言葉にハレッサーが困ったように言った。
(いいけど……え~~君。誰だっけ?)
(悪い。俺はレンって言うんだ。藤池蓮)
そう言って、蓮の花のイメージをハレッサーに送った。
(レンね。それで?)
(実は、100年前に人間に教えた術のせいで、ハレッサーの命が狙われている)
(え~~~~?!)
(だから、――俺と一緒に逃げてくれないか?)
俺はハレッサーに向かって頼み込んだのだった。
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