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第二章
41 蓮の帰還
しおりを挟む俺は、念入りに教会の後を調べたが、あの男がいたという形跡は残されていなかった。ただ、あの男が着地した場所と飛び立った場所に広く大きな穴のようなものがあり、それはあたかも何か大きな生き物の足跡にも見えた。
(もしかして……これを聖獣の足跡と偽っているのか?)
俺が穴を見ていると、松明が見え、騒ぎを聞きつけた兵士が駆けつけて来たので、見つからないようにすぐに現場を去った。
その後、びしょ濡れで、小屋の扉の前に立った途端、マイアが勢いよく中から飛び出して来て、興奮したように言った。
「レン様!! ご無事でなによりです!! 記録、送られて来ましたよ!! ……あ、失礼します。風よ。火よ」
マイアが杖をかざすと、先ほどまで濡れていた俺の服は、すっかり乾いていた。俺としてはすっかり見慣れた光景だったのが、隣でジンバが目を大きく開けてこっちを見ていた。
「な、な、なんだ?! 今の魔法は?! 風魔法を使いながら、火の魔法を使う?! ……その高度な魔法をいとも簡単に……!! そんなことが可能なのか?! 信じられない」
どうやら、マイアが気楽に使うこのドライヤーのような魔法は、全く一般的ではないらしい。
もしかしたら、家丸ごと洗いや、荷物の圧縮も一般的ではないのかもしれないと思えた。
マイアは、驚くジンバではなく、俺を見ながら言った。
「まぁ、その話は今は、置いておいて、記録鏡に映った物をレン様の言うように紙に写しとりました」
「へぇ~ありがとう、マイア」
俺がマイアから渡された記録の映った紙を貰うと、ジンバが大きな息を吐きながら言った。
「レン君。言っておくが、マイア……ちゃんだからこそ、この記録を離れた俺たちのいる場所まで送れたし、紙に写すのだって、普通は無理な話なんだぞ? それに、記録を見るとレン君、相手に攻撃を受けているじゃないか。大丈夫だったのか?」
「うん。大丈夫」
ジンバの言葉で記録が写し出された紙を見ていると、男が火柱に囲まれて教会の前に立っている横顔が、こちらに気付いて、視線をこちらに向けている瞬間や、火の玉を俺めがて放っている瞬間など、俺の想像以上にしっかりと記録出来ていた。
「凄いな。顔も、攻撃の瞬間もしっかりと写ってるな。ところで、これって誰だかわかる?」
俺がマイアとジンバに尋ねると、2人は首を傾けながらジンバが言った。
「ん~~俺は知らないな」
マイアも眉を寄せながら言った。
「それが……私もよくわからなくて……ベルスリータ様なら、ご存知かもしれませんが、生憎と眠っておいでです」
「そっか……」
ベルスリータが知っているかもしれない。でも、俺たちはベルスリータが起きるまで待つことにした。
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