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番外編 

お気に入り2000感謝SS【卒業旅行】前編

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本編とは違いコメディですので、『世界観を崩したくない』という方は、見ないことをおすすめ致します。


『大丈夫!!』という方だけどうぞ!!










――――――――――









 これは、お披露目式が終わって、少しみんながのんびりとしていた時の話。

「凄いわ~~とても素敵なところね!!」

 私は、ランゲ侯爵家の持つ別荘である洋館を見ながら声を出したのだった。

 私たちは、今、ランゲ侯爵家が持つ、洋館に来ていた。

――きっかけは、エカテリーナの一言だった。

「ねぇ、みんなで卒業旅行に行かない?」

 もうすぐ学院を卒業するエカテリーナは、卒業したら王妃として学ぶことが多いので、とても忙しくなるらしい。
 そこで、今のうちにみんなでのんびりと、ランゲ侯爵の持つ別荘に1泊2日で泊まりに行かないかと誘われたのだ。


 
「喜んでくれてよかったわ~~」

 今回参加するのは、もうすぐ卒業するこの旅行の主役であるエカテリーナ。

「あ~~~♡ こんな景色のいいところで、エカテリーナとゆっくり過ごせるなんて嬉しいな~~♪」

 エカテリーナの婚約者であるサフィール王子殿下。

「丘の上に建ち見通し抜群、さらに遠くに連山が見える。まさに絶景ですね。絵心は全くありませんが、キャンバスがほしいです」

 そして、エマ。

「確かに綺麗な景色ですねぇ~~あ、お嬢。荷物重くないですか? 持ちますよ?」

 そして、エイド。

「シャルロッテ、荷物なら私が持とう」

 そしてゲオルグの6人で、やって来たのだ。

「エイドも、ゲオルグもありがとう。でも、自分の荷物は自分で持つから大丈夫よ」

 私は心配してくれた2人にお礼を言うと、洋館を見上げた。
 こんな素敵なところに泊まれるなんて夢のようだ。

「まずは部屋に案内するわ」

 エカテリーナの言葉で、私たちは洋館に入ったのだった。

 ランゲ侯爵家の侍女に部屋に案内された後、私は荷物の整理を終えると、バルコニーに出た。
 ここは2階なので、先程よりも、さらに景色が良かった。

「美しいわ……」

 私の部屋からは、草原と、遠くに連なる山々が見えた。
 神秘的で美しい景色に思わず見とれてしまった。

「シャルロッテ~~」

 ふと声が聞こえて、声のした方を見ると、ゲオルグが、外から手を振っていた。

「ゲオルグ? どうしたの?」

「荷物整理が済んだのなら、散策に行かないか?」

「ええ、行くわ~~」

 私が部屋を出て、階段を降りて、ゲオルグの立っていた辺りに向かうと、ゲオルグと一緒にエイドもニコニコとしながら立っていた。

「エイドも荷物整理は終わったの?」

「はい。窓を開けていたら、ゲオルグ様と、お嬢の声が聞こえたので、同行させて頂こうと思いまして」

 確か、エイドの部屋は、私の2つ隣の部屋だったはずだ。
 私の部屋の前を必ず通るはず……。

「そうなの? でも、エイドと階段で会わなかったわよね?」

 エイドに尋ねると、エイドが困ったように言った。

「あ~~そう……ですねぇ~~」

 するとゲオルグが、大きな溜息をついた。

「はぁ~~~、当然だ。エイドは、シャルロッテがここに向かうために、部屋に入った途端に、バルコニーから飛び降りたんだからな」

「え?!」

 私は驚いて、エイドを見た。するとエイドは、相変わらず困った顔をしていた。

「ゲオルグ様。……それ、お嬢に言っちゃいますか……」

「言う。シャルロッテから『危ないからやめろ』と言って貰わないと、聞かないだろうしな……」

 私は、エイドを見て真剣な顔で言った。

「エイド……2階から、飛び降りるなんて、危ないから止めてね」

私の言葉にエイドが、真剣な顔をして言った。

「……わかりました。でも、お嬢。俺を置いて行かないって約束してください。どこかに行く時は、必ず、俺に声をかけて下さい」

 確かに私が勝手にいなくなったら、みんなに迷惑をかけてしまう。
 私も考えなしだったと反省した。

「わかった、約束するわ。どこかに行く時は必ずエイドに声をかけるわ」

「ありがとうございます」

 エイドが嬉しそうに笑うと、ゲオルグが頭に手を置いて何かを呟いた。

「はぁ~。私も浮かれていて考えなしだったな……次からは、もう少し思慮深く誘うか」

 3人で話をしていると、エマやエカテリーナ、サフィール王子殿下も外に出てきた。

「お嬢様~散策、私も行きます!! この辺りには見たことのない植物も多いので観察したいです」

「私も行くよ~~♡ 折角来たんだから、野鳥をたくさん見たいな~♪」

 サフィール王子殿下の言葉に、エカテリーナが笑いながら言った。

「ふふふ、サフィールったら、野鳥が大好きですものね。疲れるとよく、私と手を繋いでひたすら無言で、何時間も空を飛ぶ鳥を眺めているものね」

「自由に空を飛べるっていいよね……羨ましくってつい、ず~~と眺めちゃうんだよね♪」

 エマが、そんな2人を見ながら、同情を含んだ瞳で、私たちに向かって小声で言った。

「……それって……殿下……かなり病んでいるのでは?」

「それは、かなりですねぇ~」

「ああ、病んでるな」

 すると、エイドとゲオルグも小声言った。

「ほら、みんな行きましょう」

「ええ」

 エカテリーナの言葉にみんなは、散策に出掛けたのだった。

☆==☆==

「お嬢様~~、エカテリーナ様~~、この植物はかなり珍しいですよ」

「ああ、本当ね」

 エマとエカテリーナと一緒に草原の草花を見ていると、サフィール王子殿下が声をあげた。

「はぁ~~でも、本当にいいところだな~~。
 これだけ、見通しがよければ、誰かに突然襲われるってこともないだろうし」

「確かにそうですね」

 ゲオルグも同意した。

「まぁ一応遠くに護衛は、いるけど……ゲオルグが居れば、安全でしょ? そういえば、エイドは剣とか使えるの?」

 サフィール王子殿下の言葉にエイドは困ったように答えた。

「いえ……俺は、体術しか使えません」

「エイドは、体術が使えるのか?」

 ゲオルグが、驚いた顔でエイドを見た。

「はい、今は酒場の店主なのですが、元傭兵だった方に教えて頂いたのです」

「手合わせしてみないか?」

 ゲオルグの誘いにエイドは驚いた。

「え? ゲオルグは剣がお得意なのでは?」

「ああ、だが、剣が使えないこともあるからな。いかなる時でも、守れるように体術も学んだ。
 それに、エイドの実力も知っておきたい」

 シャルロッテの側にいる者の実力を知っておきたい。
 ゲオルグの瞳がそう語っていた。
 エイドとしても、ゲオルグの実力は知っておきたいので、ゲオルグの誘いを受けることにした。

「わかりました。手だけにしますか? 俺、足技の方が得意です」

「じゃあ、足も使ってくれてかまわない」

 エイドは、ゲオルグに向かって言った。

「では、いきます」

「ああ」

 こうして、ゲオルグとエイドの体術による手合わせが始まったのだった。
 
 2人の手合わせが始まって数分後……。
 全く互角の戦いをしている2人を見てエカテリーナが声を上げた。

「エイドって随分と強かったのね、ゲオルグとほとんど互角じゃない!! あの子も結構なものなのよ?」

 するとエカテリーナの隣で、サフィール王子殿下が笑いながら言った。

「へぇ~~~♪ ゲオルグ相手に、ここまで……やるな~~彼♡」

 私は、エカテリーナに向かって言った。

「エイドはよく、泥棒を捕まえたり、酔って暴れた傭兵とか兵士を押さえたりしているの。エイドとこれほど戦えるなんて……ゲオルグは凄いわ! ねぇ、エマ」

「そうですね~。この前も傭兵集団が暴れてるから、来てくれって、警備兵のモルトに呼ばれて、数十人をおとなしくさせていましたし……ゲオルグ様、素晴らしいですね」

 ゲオルグの強さを知っているエカテリーと、サフィール王子殿下は、ゲオルグと互角ということでエイドが強いことを知った。
 そして、エイドの強さを知っている、私とエマは、エイドと互角ということで、ゲオルグの凄さを知ったのだった。

 しばらくして、2人が動きを止めた。
 そして、ゲオルグが嬉しそうに口角を上げながら言った。

「秘書としてだけでなく、護衛としても大丈夫そうだな」

「はは、そう言っていただけると光栄ですよ」

 ゲオルグと、エイドはお互いの顔を見て小さく笑った。
 私はその光景を見てなんだか、羨ましく思ったのだった。

 私たちが笑っていると、サフィール王子殿下が、エマを見て言った。

「もしかして……君も体術を嗜んでいたりするのかな?」

「ええ。エイドほどではないですが……」

 エマの言葉に、私は思わず口を出してしまった。

「エイドも凄いですが、サフィール王子殿下、エマも凄いんですよ!!」

 ゲオルグが真顔でエイドを見ながら言った。

「そうなのか?」

「はい。エマも動けます。しかも、エマは俺と違って、弓も使えるので護衛としてなら、エマの方が優秀ですよ」
 
 エイドが笑顔で答えると、エカテリーナがエマを見ながら言った。

「ええええ~~エマって戦えるの?? 凄いじゃない!! 本当にエマって凄いわ」

 エマが、エカテリーナの言葉を聞いて、照れたように言った。

「……そこまで、言って下さるのでしたら、お見せしましょうか?」

 エイドが頭を押さえながら言った。

「ありゃ~~。ゲオルグ様、逃げましょう」

「どうした?」

「エマは、負けず嫌いなんで、始めると長いですよ?」

 エイドとゲオルグの元に、エマが歩いて行くと、にっこりと笑った。

「エイド、エカテリーナ様に見せるから、相手して」

「……落ち着けエマ。自然観察はいいのか?」

「大丈夫。相手してよ、兄さん」

「~~~~仕方ねぇな~~~」

 結局、いつものように、エイドはエマの誘いは断れず、エマとエイドの手合わせが始まった。

「エマ~~凄いわ~~~!! そこよ~~エマ~~」

「へぇ~~♪ 確かに凄いな~~。将来、エカテリーナの側近とかしてくれないかな~~♡」

 エイドとエマを楽しそうに応援しているエカテリーナとサフィール王子殿下の近くに立っていると、ゲオルグがこちらに歩いて来た。

「2人とも体術が使えるのだな、それは、安心だな」

 ゲオルグの額から汗が流れていたので、私はポケットからハンカチを取り出して、ゲオルグの差し出した。

「ゲオルグ、汗が流れているわ。使って」

 ゲオルグは嬉しそうにハンカチを受け取りながら言った。

「ああ、では、遠慮なく」

 いつもより、ゲオルグが色気を放っていて、私は思わず、ゲオルグから目を逸らした。

「どうだった?」

 ゲオルグが、私の方を見ながら言った。
 私は、顔に熱が集まるを感じながら答えた。
 
「……ゲオルグ……素敵だったわ」

 すると、ゲオルグが、真っ赤になりながら言った。

「あ、いや……私に護衛を任せても安心なレベルかどうかを、聞きたかったのだが……」

「え?! あ、もちろんよ!!」

 私は勘違いしてしまったことが恥ずかしくて、ゲオルグの顔を見れないでいると、ゲオルグが、私の顔を覗き込みながら言った。

「ありがとう、嬉しいよ。シャルロッテ」

 ゲオルグの顔がいつも以上に優しくて……そして目元が甘くとろけそうに感じて……私はますます顔を上げられなくなってしまったのだった。
 




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