好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番

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第六章 選ばれた新たな未来

53 素晴らしい秘書

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 学院が終わると、エカテリーナのお屋敷にお邪魔することになっていたので、ランゲ侯爵家の馬車に乗せてもらうことになった。

 馬車乗り場に、エカテリーナと、ゲオルグと一緒に向かい、私はエイドを探すことにした。Sクラスは他のクラスより、終わりが早いので、まだ馬車乗り場は空いていた。

 朝にエイドに『迎えは必要ない』と伝えることが出来なかったので、エイドはきっと迎えに来ているだろう。

「私、エイドを探してくるわ」
 
(エイドはどこに……あ!!)

 私は、すぐにエイドを見つけて駆け寄った。エイドは、馬の手綱を持ち、馬の隣に立っていた。

「エイド!! 馬で来たの?!」

 エイドは馬車ではなく、馬で迎えに来ていたのだ。

「ええ。恐らく、今日はエカテリーナ様のお屋敷に、誘われるのではないかと思いましてね。違ったら、学院から少し離れたところから、お嬢を馬に乗せて、帰ろうと思っていました」

 エイドは、困ったように笑いながら言った。エイドは、機転は利くし、先読みの力もあるし、行動力もある。本当に私は、いつもエイドに助けられていた。

「さすが、エイド!! 大正解よ。今日は、このままエカテリーナのお屋敷にお邪魔するわ。帰りは、ランゲ侯爵家の馬車で送って下さるって」

「そうですか、わかりました」

「あら? もしかして……エイドには、私の行動が読まれていたのかしら?」

 エイドと話をしていると、エカテリーナが近づいて来て、楽しそうに言った。

「これは、エカテリーナ様。お声をお掛け下さり光栄です。行動を読んだと言いますか……エカテリーナ様とも、それなりに長いお付き合いですしね。勘です」

 エイドが片目を閉じながら言うと、エカテリーナが感心したように口を開いた。

「ふふふ、勘なの? いい勘してるわ。ん~~……あなたって、見た目もいいし、頭もいいし、口も上手いし……シャルロッテの家の方でなかったら、秘書や側近として、我が侯爵家に招き入れたいくらいよ」

 私は、エカテリーナの言葉を聞いて、慌てて口を開いた。自分でも、なぜこんなに焦っているのか、不思議なくらいだった。

「エカテリーナ、実は、エイドは私の秘書になってくれたの。今後、私のお仕事を手伝ってくれるの」

「何? 秘書? この男が?!」

 すると、なぜか、ずっと黙っていたゲオルグが声を上げた。エイドは、姿勢を正すと、ゲオルグを見てすました顔で言った。

「今後は、私が、シャルロッテ様のお傍に仕えさせて頂きます。若輩者ですので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します、ゲオルグ様」

 ゲオルグが、眉を寄せると、少し不機嫌そうに言った。

「そうだな……シャルロッテの秘書になるというのなら、私にも関係があるな。私は、シャルロッテの補佐だからな! よろしくな、エイド殿」

「ええ、こちらこそ」

 エイドとゲオルグが、にこやかに握手を交わしていた。
 2人が仲良くしてくれて、嬉しくなった。

「あら~~~。ふふふ、まぁ、シャルロッテを助けてくれる人が、増えるのはいいことですものね。
 さぁ、シャルロッテ、行きましょうか? あの2人もそのうち来るわよ」

「え? ええ」

 2人の会話は聞こえなかったが、とても楽しそうに笑顔で話をしているようだったので、私もエカテリーナの言葉に頷いたのだった。

「(ちょっと、ゲオルグ様、痛いですよ)」

「(すまないな。普段から鍛えているからな)」

「(ゲオルグ様……力加減が苦手なのですね。そのお力で、お嬢に触れるのは、禁止ですよ)」

「(シャルロッテに、こんな力を入れるものか!!)」

 ランゲ侯爵家の馬車の前で、楽しそうに話をしている2人を見ていると、エイドと目が合った。

「あ!! お嬢~~では、ごゆっくり~~。ゲオルグ様、お嬢がお待ちですよ」

 エイドは私に手を振って見送ってくれた。

「いってきま~す」

 エイドに手を振ると、なぜかゲオルグは、深いため息をついていたのだった。

「……はぁ」



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