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第二章 霧のかかった未来
20 星祭りの腕輪(2)
しおりを挟む次の日。
ハンスが剣術の訓練をしている時間に、私だけ、ホフマン伯爵に呼ばれた。
私だけが呼び出されるのは初めてのことだったので、私は少し緊張しながら、伯爵の執務室に向かった。
トントントントン。
「シャルロッテです」
「ああ、入ってくれ」
「はい」
私は扉を開けると、伯爵は、侍女にお茶の用意をさせた。
ソファーに座って、伯爵を待っていると、侍女が部屋を出たタイミングで、私の前に座った。
「シャルロッテ、呼び出してすまないね」
「いえ……」
伯爵はどこか言いにくそうな様子だった。
「実は、今回は、ハンスに宝石について自信をつけて貰おうと思ってシュテルンリングのことを提案したのだ」
「自信……」
確かに、乗馬でも剣術でも、ハンスは認められれば、やる気を出している。
「だが、ハンス1人の力では、到底、王族の方にお見せするレベルにはならないだろう」
「……」
私は、何も言えずに無言で話を聞いていた。
「そこでだ。シャルロッテ嬢が、上手く誘導して、ハンスの作品を王族の方に見せれるくらいにしてもらいたいのだ。もちろん、私も最終的には確認するが、私が確認してしまうと、全く別の物になってしまいそうだからね」
「わかりました。ハンスの作品作りのお手伝いをします」
「ありがとう。でもね、君の現在の実力も見たいから、シャルロッテも考えてくれないかな?」
「はい。では、王族の方にお見せするのは、ハンス作品だけということでよろしいでしょうか?」
「いや。王子殿下には見せないけど、陛下と王太子殿下には見せるよ。君たちの実力は、陛下や王太子殿下も気にしているからね」
ホフマン伯爵の宝石事業は、我が国の収益の要でもある。
後継者の教育状況を見たいということなのだろう。
「わかりました」
国王陛下と王太子殿下にお見せする。
私は、思わず震えてしまったのだった。
☆==☆==
伯爵の部屋を出て、私は大きく息を吐いた。
頑張ろうとは思っていたが、国王陛下や王太子殿下にもお見せするながら、下手な物は作れない。
それに、ハンスの作品を、王子殿下が選べるようにしなければならない。
「今日、教会に行ってみようかしら……」
去年の腕輪の図面は見たが、シュテルンリングに合わせる服。
そして、場の雰囲気。
それを知るには、教会の絵を見るのが一番いいだろう。
私は、今日の帰りに、ハンスと一緒に教会に行くことにしたのだった。
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