16 / 20
本編
16 糖度∞(計測不能。恋愛糖度が振り切れました!激甘注意!!)
しおりを挟む私が主人公ナターシャとディラン様の恋が始まらなかったことに安心して「ふ~」と大きく息を吐くとディラン様の声が聞こえた。
「ああ~妬けるな」
ディラン様が恨めしそうに私の顔を覗き込んできた。
「え? 妬ける?」
私はディラン様が言っている意味がわからずに首を傾げた。
「君は僕が好きだって言ってくれるけど、ナターシャを見ている時の顔の方がいつも真剣そのものだ。今回だって、ナターシャのことが心配でバルコニーに出ていたんだろ? それにおそらく君はずっとナターシャに王妃を譲ろうとしていた。違う?」
(あれ? なんだか、私がすっごく主人公のナターシャ様のことが好きってことになってない? それは誤解だけど……でもそんなことより、私が身を引こうとしていたことも知られていたなんて!!)
「え? ……どうしてそれを……」
私が動揺しながら目を泳がせるとディラン様が困った顔をして溜息をついた。
「やっぱり。でもね、もう無理だよ?」
「それは、どういう」
ディラン様は私の耳元に顔を寄せ呟くように言った。
「実は君はもう僕の『お手付き』って噂が貴族中に流れてるんだ♪」
(はぁ……ディラン様のこの声……身体の力が抜けそうになるのよね……ってダメよ!! しっかり!! え~と? どういうこと?? 『お手付き』ってつまり、男女の関係って事でしょ? 私たち今日、キスを初めてした清い関係なのに、どうしてそんな不埒な噂が?!)
「どうしてそんな根も葉もない噂が?!」
耳元で聞きえた囁きにクラクラしたが、私は気力を保って尋ねた。
「まぁ、噂っていうのは大抵、根も葉も無い場合が多いけど、今回はその噂を利用して貴族中に拡散させたんだ。」
予想外の返答に私は大きな声を上げてしまった。
「えええ?! どうしてですか?! 結婚前にお、お、お手付きなど、ディラン様の評判に関わります。実際のディラン様はとても紳士ですし、ディラン様にとってのよくない噂など!!」
チュッ♡
私が焦っていると、ディラン様に抱き寄せられて唇にキスをされた。
チュッ、んっ~チュッ、チュッ~~♡
そして何度もキスをされた。
「ああ~~可愛い。自分のことよりも僕のことを心配してくれるなんて!!
ねぇ、キャメロン。そう言ってくれるのは有難いけど、僕は……僕はそこまで紳士じゃないかもしれないよ?」
ディラン様が切なそうに見ていたが私は、そんなディラン様の手を握ると真剣な顔で力強く言った。
「ディラン様は紳士です!! それに誰よりもカッコいいですし、誰よりも素敵で……」
チュッ♡
私はいつの間のかディラン様にキスで唇を塞がれていた。
そしてゆっくりと唇が離され切なそうな視線を向けられた。
「ストップ。僕はそんな紳士じゃないよ……今回だって、この噂が広まれば君は僕以外には嫁げないと思ったから利用したんだ」
「え?」
「君も知っての通り、ナターシャを僕の妃にしたくて動いてる一派もいたからさ。
確実に君を妃にするために噂を利用させてもらった。
王族の僕のお手付きの娘を嫁にしようっていう貴族はいないから」
ディラン様の言う通り他の貴族に私がディラン様と肉体関係を持ったと思われているのならば、私がディラン様のお子様を懐妊していない保証はない。もし私がディラン様のお子様をご懐妊していた場合、嫁として非常に困った存在になるだろう。高位貴族に目をつけられ、王家にお伺いをたて、大変な苦労を背うことになることは想像できる。
つまりもう、王族と肉体関係を持ったと思われている私は王族以外には嫁げない令嬢になっていたのだ!!
「確かに」
「幻滅した?」
ディラン様が悪いことをして叱られるのを待つ子供のような所在なさそうな表情で私を見ていた。
チュッ♡
「え?! キャメロンからなんて初めて……」
私はディラン様にキスをすると、キスをしてしまって顔を見るのが恥ずかしくなってディラン様の腕に腕を絡めると、頭をディラン様の肩に寄せた。
「……私もディラン様を誰にも渡したくないと……思ってしまったので……同じかと」
ディラン様の体温が上がった気がするが、もしかしたら上がったのは私の体温かもしれない。
「ねぇ。まだお茶飲みたい?」
「え?」
気が付いたらいつの間にか私はソファーから立ち上がったディラン様に抱き上げられていた。
抱き上げられたまま、ディラン様が唇を寄せてきた。深いキスに眩暈を感じていると、唇が離され、顔が赤くなって余裕のなさそうなディラン様と目が合った。
「もうさ……僕の好きにしてもいい?」
私はディラン様の首に腕を回した。
チュッ♡
そしてディラン様の頬にキスをした。
「はい」
ーー……その日、私たちはベットの上で……。
たくさん『好き』だと言って。
たくさん名前を呼び合って。
たくさんのキスをして。
月が照れて雲に隠れてしまうくらい甘い夜を過ごしました。
しかし、ディラン様の名誉のために言わせて下さい。
ディラン様はとっても紳士♡ですので、噂が本当になるようなことはなく、私たちは清い関係のままである、ということをご報告しておきます。
89
お気に入りに追加
1,314
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。


悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。

【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。
ゲームにはほとんど出ないモブ。
でもモブだから、純粋に楽しめる。
リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。
———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?!
全三話。
「小説家になろう」にも投稿しています。

ほら、誰もシナリオ通りに動かないから
蔵崎とら
恋愛
乙女ゲームの世界にモブとして転生したのでゲームの登場人物を観察していたらいつの間にか巻き込まれていた。
ただヒロインも悪役も攻略対象キャラクターさえも、皆シナリオを無視するから全てが斜め上へと向かっていってる気がするようなしないような……。
※ちょっぴり百合要素があります※
他サイトからの転載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる