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第五章 チームお飾りの王太子妃集結、因縁の地にて

206 集結(3)

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 クローディアがスカーピリナ国の城に向かっていた頃。
 スカーピリナ国の城には、続々と各国の王族が到着していた。
 
 ダラパイス国からは、王太子ガイウスと、王太子妃ヴェロニカ。そして、ダラパイス国王第四秘書ヒューゴ。

「無事に到着したようだな。ロニ―、疲れただろう? 部屋でゆっくりと休んでくれ」
「お気遣い感謝いたしますわ、ガイウス」
「ヒューゴは私の部屋へ」
「はっ」

 そして、ダラパイス国大公子息サフィールと、その側近ディノフィールズ。

「さぁ、早速ディアの顔を見に行くぞ」
「そうですね~~。お土産喜んでくれるといいですね~~」
「ああ、そうだな」
「こんな機会でもないと、ディア様に貢げないですもんね~~」
「お土産と言えば、堂々と貢げる……ではない! ディアが無事にスカーピリナ国に到着したか確認するだけだ。陛下だってご心配されている」
「はいはいは~~い。陛下、心配、確認、建前、了解です」
「ディノ……表に出ろ!」
「閣下、無理です!! 私は一秒でも早くディア様にお会いしたので、一人でお願いします。それでは、私はお先に!!」
「なっ!! とにかく急ぐぞ!!」


 ダラパイス国一行到着から少し遅れて到着したのはベルン国の王太子アンドリューと、宰相のジルベルトと、騎士団長のネイ。

「ああ、スカーピリナ王都に来るのも久しぶりだな」
「ええ。私も数年ぶりです」
「……」

 他にも各国の王族がすでにスカーピリナ国の城に到着していたのだった。
 





 そして、ダラパイス国南のパルミラの港はちょっとした騒ぎになっていた。

「あれが、異国の最新鋭の船……凄いわ~~」
「こんな船があるのね!!」
「大きいな~~~」

 クイーンイザベラ号が、パルミラに入港した。
 パルミラ港では、クイーンイザベラ号を見るためにちょっとしたお祭りのようになったのだ。
 だが、この現象はなにもパルミラだけに限ったことではない。
 クイーンイザベラ号が港に入ると、多くの都市で同じようなお祭り騒ぎになるのだ。
 なぜながら皆、これほど大きな船を見るのは初めてだったのだ。この時代、長期間、ましてや海の旅に耐えられるような船は珍しかったのだ。
 今回は、いつもより賑やかといったところだ。

 賑やかな船外とは対照的に船中では、ロウエル元公爵が静かに呟いた。

「着いたか……」

 そう言って、船室から外を見つめたのだった。


 こうして、続々とスカーピリナ国に皆が集結しつつあったのだった。





「うわ~~さすが、スカーピリナ国の軍隊ね……」

 私は、スカーピリナ国の王都の軍の様子に思わず声を出していた。
 王都に入る少し前から、スカーピリナ国の軍による厳戒態勢が敷かれていた。

「同盟国の全ての王族が集まるからな」

 レオンが、当たり前のように言った。
 同盟国、全ての王族が集まる……。

「よく考えてみると、同盟国全ての王族が集まるなんて、凄く大変なことよね」

 ハイマでこんなことができるとはとても思えなかった。
 そんな私の言葉に、ブラッドが声を上げた。

「ああ、だが……いい機会だ。同盟を組んでいるのに、お互いに顔も合わせたことがないのでは、やはり同盟維持も難しいからな。ちなみに今回、国王が出席する国はあるのか?」

 ブラッドの言葉にレオンが答えた。

「いや、皆、王太子や王太子妃が来るはずだ」
「つまり……次世代の王族が集まるのか……」

 次世代の王族……。
 私は、それを聞いて気になったことを尋ねた。

「そういえば、どうしてレオンは、みんなを集めようと思ったの?」

 私の問いかけに、レオンは頭を掻きながら困ったように言った。

「クローディアには言いたくないな……お前に嫌われたくない」

 私はレオンを見て、いい顔をしながら言った。

「大丈夫よレオン。レオンの第一印象は最悪だったから、それ以上悪くはならないわ」

 レオンは、私を見ながら石像のように固まった。
 一瞬、石像のようにレオンから色が消えた気がしたが気のせいだろうか?

「ふっ」

 石のように固まったレオンを見て、ブラッドが珍しく笑った。
 するとレオンが動き出した。

「指導係、笑うな!! どうせ、お前だって、第一印象はよくないはずだ。いや、顔がいいから、第一印象は最高で、その後、口を開いて、急降下するってヤツか。そうだろ、クローディア?」

 私はブラッドの第一印象を思い出した。
 確かに……レオンの言う通りだったかもれない。

「そうかも……」

 するとブラッドが無表情になり固まった。そして小さく「急降下……」と呟いた。

「とにかく、もう最悪は体験しているから、理由を教えて!!」

 私が話を戻すと、レオンが「はぁ~~」と幸せが逃げて行きそうな大きな溜息をつきながら言った。

「……戦のための下準備だ」

 戦のための……下準備?
 みんなを集める理由が、争いのため?
 私は、レオンの言葉が理解できなくて、思わず言葉を失った。

「水賊の話はしただろう? あいつらのせいで、国は弱り、国の政治も荒れている。このままでは、ザイル国と同じ運命を辿ることになる」

 水賊が暴れているという話は聞いた。
 そのせいで国が荒れているというのは、わかる気がする。
 だが、ザイル国と同じとはどういうことだろうか?

「どういうこと?」

 レオンは、眉を寄せた後にゆっくりと口を開いた。

「イドレ国は情報を駆使して、各地を手に入れていると言っただろう? 実は、ザイル国がイドレ国に奪われたのは我が国と戦をした直後だったのだ」
「え?」

 元々、スカーピリナ国とザイル国が戦いをしていた。
 その隙に、イドレ国がザイル国を奪ったってこと??
 何……その典型的な漁夫の利……。

 そしてレオンは、苦しそうな顔で言った。

「この水賊が暴れ、国が荒れている状況は、あの時と酷似している。だから、こちらから水賊を討伐して、国を安定させるためにも、イドレ国に戦いを仕掛けることにしたのだ。まぁ、旧ベルン国が独立したので、今となっては今度のことはどうするのか考える必要があるが……」

 私はそれを聞いて疑問に思った。
 イドレ国に戦を仕掛けるのにどうして、王族を集める必要があるのだろうか?
 どうして、王族を集めることが戦の下準備なのだろうか?

「え……と。それで、どうして私たちを呼んだの?」
「……運河が関係するダラパイス国、ダブラーン国は同じ悩みを持っているので、協力要請を出すことが出来る。そして、エル―ル国とヌーダ国は、ダラパイス国と、ダブラーン国に資源など頼っているので、協力せざるを得ない。そして保守的なハイマは……王族を出さぬだろうと思ってな。ハイマだけ王族を出さない代わりに、軍事物資の提供を願い出るつもりだった」

 私は、それを聞いてこれまでの全ての疑問が繋がった気がした。

 ラノベでクローディアはスカーピリナ国王の逆鱗に触れ断罪される。
 だが、それは仕組まれたことだったのだ。
 よく覚えていないが、ラノベでフィルガルド殿下とエリスが苦労してスカーピリナ国王をなだめたとあったが、もしかしたら、軍事物資の提供を約束したのかもしれない。

「そうか……そうなれば……役目を終えた私は……あっさり、捨てられるだろうな……」
「スカーピリナ国行きを断っても、クローディアが捨てられることなどないだろう!!」

 レオンは真剣な顔でそう言ったが……。
 いくら私がダラパイス国王の血を引いているからと言って、私の我儘でお披露目式に出なければ、ダラパイス国王のお祖父様の国際的な評価まで下がる。
 そうなれば、クローディアを同盟維持のためだけに利用していた国王は、用無しになったクローディアをすぐにでも捨てて、王妃適正のあるエリスを王太子妃にするだろう。

 私は、隣に座っているブラッドをじっと見つめた。

「もしかして……ブラッド……知ってたの? 私が用無しになるって……だから私にスカーピリナ国に行くように言ったの? 私を守ったの?」
 
 ブラッドは「ああ」とだけ答えた。
 
 ラノベのクローディアは、フィルガルド殿下しか見えていなかった。
 ブラッドと言う人物は出て来ない。

『私があなたを傷つけるわけがないだろう』

 以前、スカーピリナ国に行くと言う時に、ブラッドに言われた。

 ――ああ、未来が変わった。と、そう思った。
 
 以前ガルドとこんな話をしたことがあった。
『もし、あなたが恋に狂っていなかったら……この国の歴史が変わっていたかもしれませんね……』
 その時の私は、笑いながら『大袈裟よ』と答えたが……その後、ガルドはこう言った。
 ――少なくともブラッド様があなたの指導をすることはなかったはずですよ。

 そう……確実にラノベと違う未来に私はいる。

 だって、今の私の隣には……ブラッドがいる。

 私はここに来て、ようやくラノベと違う未来を選んで歩んでいることを実感したのだった。











――――――――――――――――







次回更新は6月25日(火)です☆





~~突然ですが……おまけです~~

キャラクタープロフィール☆

名前:レガード・ロシェ
爵位:子爵
年齢:20歳
身長:180cm
体重:77㎏
所属:騎士団第5部隊副隊長
   →王太子側近
家族:3歳下の弟(ケイン)
イメージ植物:ガーベラ
花言葉:常に前進
誕生日:5月8日



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