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第四章 お飾りの正妃、郷愁の地にて

【番外編】ファンタジー小説大賞読者賞受賞感謝SS part2

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 本日も【番外編】ファンタジー小説大賞読者賞受賞感謝SSの続きをお届けいたします。
 本編ではサラリと通り過ぎるサフィールが用意してくれた屋台が舞台です。
 
 お楽しみ頂けますと幸いです。

 タイトル『あなたは誰と楽しむ?』
 
 ↓

 STARTです!!

※冒頭部分は前回と同じです。

――――――――――――


 サフィールが用意してくれた屋台に行くと、様々なお店があった。なんと、サフィールが手配してくれたのは食べ物だけではなかった。本当に目移りするくらい気になる物がたくさん用意されている。

「クローディア様、アクセサリーを売っているお店があるようですよ?」

 ラウルが私を見ながら楽しそうに言った。

「クローディア様。見て下さい。ミニゴンドラゲームがありますよ!!」

 ジーニアスが興奮したように言った。

「クローディア様。夕食の時間ですし、自分で食べたい物を選ぶというのも楽しいですね」

 アドラーが微笑みながら言った。

「美味しそうなスイーツがたくさんありますね~~どれにしようかな。迷いますね」

 リリアが屋台を見て目を輝かせながら言った。
 どうしよう!!
 どれも楽しそうで選べない!!

 そんな私に、サフィールが提案してくれた。

「ディア。この広場内なら警備は万全だ。気になる物があったら、それを提案してくれた者と見たらどうだ? その他の者はそれぞれ自分の気になるものを見に行けばよいだろう。もしディアが望むなら案内するぞ?」

 確かに折角自由に見て回れるのだ。それぞれ好きなことをしてほしい。
 私は「それがいいわ」と言ってサフィールの提案を受け入れたのだった。


 さぁ、私は何を見ようかな?


――・――・――・――・――・――

●《アクセサリーショップが気になる!!》

●《ゴンドラゲームって何?!》

●《まずはお腹いっぱい食べた~~い!!》

●《ここはスイーツを見て夕食の量を決めるのが上策》

●《どれがおすすめなのか聞いてみたいな》


――・――・――・――・――・――












 この物語は選択形式になっております。
 サフィールの用意してくれた屋台を誰と楽しむのかをお選び頂けます。

《アクセサリーショップが気になる!!》
を選んだあなた!
→大変! 急いでpart1に戻って下さい!!

《まずはお腹いっぱい食べた~~い!!》
を選んだあなた。
→大変! 急いでpart1に戻って下さい!!

《ゴンドラゲームって何?!》
を選んだあなた。
→このまま下へどうぞ……。

《まずは、スイーツを見て夕食の量を決めなくちゃ!!》
を選んだあなた。
→このまま☆まで下へどうぞ。

《どれがおすすめなのか聞いてみたいな》
を選んだあなた。
→さらに下の♪まで下へどうぞ。






決まりましたか?


――・――・――・――・――・――


それでは、お待たせしました!
《ゴンドラゲームって何?!》
を選んだあなた!!





スタートです!!
――・――・――・――・――・――


「ゴンドラゲーム? 聞いたことないわ。ぜひ行きたい!」

 私がジーニアスの方を見ると、ジーニアスが嬉しそうに言った。

「私も噂では聞いていましたが、実際に体験したことはないので楽しみです」

 私は嬉しそうなジーニアスと一緒にミニゴンドラゲームを体験することにしたのだった。
 
「可愛い~~!! 小さなガラスのゴンドラだ!!」

 ミニゴンドラゲームとは金魚すくいのような広さの水槽の上に小さなゴンドラを浮かべて、少しの水流でのんびりとゴールに向かうゴンドラを眺めるというなんとも優雅なゲームだった。
 小さなガラス細工のゴンドラは、笹船くらいの大きさの船だ。
 とても精巧につくられたゴンドラが流れる様子を、ふかふか椅子に座ってゆっくりと眺めるようだった。しかも水槽の周りには、ガラスが散りばめてあり、所々陸地があり、ガラス細工の家が置いてあったり、ガラス細工の動物や植物が置いてあり、まるでガラス細工のジオラマを見ているようでとても綺麗で楽しい。

 私たちがゴンドラゲームの前まで行くと、明るい雰囲気の女性が話かけてくれた。

「ようこそ~~クローディア殿下!! サフィール閣下からよくお話をお伺いしております。このゴンドラゲームは繊細なガラス細工を多用しておりますので、現在、ダラパイス国でのみお楽しみ頂ける貴重なゲームです。どうぞ、ダラパイス貴族の愛するゴンドラゲームを心行くまで楽しんで下さいね~~。遊び方は簡単!! お好きなゴンドラを選んで、自分のゴンドラが一番早く目的に着いた方が勝者となります。では、お好きなゴンドラを選んでください!! 重さや形も関係してきますので、触って早そうなゴンドラを選んでくださいね~~!! 選んだミニゴンドラは今日に記念にぜひ持ち帰ってほしいとのサフィール閣下のお言葉ですので、選ばれたゴンドラはお持ち帰り下さい」

 へぇ~~、これ誰のゴンドラが一番に到着するのかを競うゲームなんだ。しかもお土産付き。

 なんだかスピード感が全くないし、とても綺麗で可愛い世界観だったので、これが競争だとは思わなかったが、貴族のゲームならそれもありかもしれない。

「クローディア様はどれになさいますか?」

 ジーニアスの言葉に私は真剣にミニゴンドラを選んだ。

「ん~~これかな……」
「では、私はこれにします」

 私たちはゴンドラを選ぶと同時に水に浮かべた。そして、私たちが椅子に座ると、女性が「それではスタートします」と言って、ガラスのゲートが開いてゴンドラが動き始めた。
 予想通り、ガラスのゴンドラは夜の光を集めてゆっくりと、ゆっくりと進む。
 そして私とジーニアスは二人で並んでのんびりと、ゆらゆらと揺れるゴンドラが、ガラス細工の世界を流れていくのを見ていた。

 どう考えても闘争心など一切浮かんで来ない。
 ただただ癒される……。

「……この世界、凄く心地いい」

 ゆらゆらと揺れるゴンドラを屋台の柔らかな光が照らして輝く。
 周りに置かれているガラス細工も繊細でまるで、ガラスの世界に迷い込んだように時間を忘れた。

「ふふふ。よかった。クローディア様、起きている時間はずっとお忙しかったでしょう? ですからミニゴンドラゲームを見ながらのんびり過ごして頂きたいと思ったのです。きっとサフィール閣下もそう思ってこのミニゴンドラゲームをこの場に用意したのだと思います」
「確かに……心が緩む気がする……」

 心が軽くなって少しぼんやりとするが、それが酷く心地いい。
 そうか……これがのんびりとすることか……と知った気がした。
 ゴンドラが流れ、私は隣に座るジーニアスの方に顔を向けると、すぐにジーニアスと目があった。
 ジーニアスはゴンドラとは反対方向を見ていることになる。

「ジーニアスは、ゴンドラを見ないの?」

 するとジーニアスが嬉しそうに言った。

「クローディア様のお側はいつも側近のアドラー殿や、指導係のブラッド様、護衛のラウル殿がおいでです。こんなにお近くでクローディア様のお姿を見れることはないので、私にとってはクローディア様の喜んで下さっている顔をこんなに近くで拝見できることこそが、最高の喜びです」
「え?」

 顔に熱が集まるの感じて、思わずジーニアスから視線を逸らして、水に浮かぶゴンドラを見つめた。
 だが、一度知ってしまったら、ジーニアスの視線を感じて落ち着かない。
 視線を逸らしたものの落ち着かなくてジーニアスを見ると、相変わらずにこにこと嬉しそうに私を見ていた。ジーニアスは私を見ながらとても嬉しそうに言った。

「クローディア様、楽しいですね」

 ジーニアスがあまりにも自然に心から楽しそうに笑うので、私までつられて笑ってしまった。

「そうね。……確かに楽しい……」

 私たちが笑い合っていると、ミニゴンドラゲームの女性が声をかけてくれた。

「ふふふ。仲がよろしいですね。ゴンドラが到着いたしましたよ」

 気がづけば、ミニゴンドラはすでに目的地のとても素敵な家に着いたようだった。

「あ、ゴンドラが到着したわ」

 結局どちらが先に着いたのかわからなかった。
 
「あ……終わっちゃったんだ……」

 私は少しだけこの穏やかな時間は終わってしまったことを残念に思った。するとジーニアスが私の顔を覗き込みながら言った。

「クローディア様、もう一度やりますか?」

 私は力強く頷いた。

「ええ。もう一度やりたいわ」

 ジーニアスは私の言葉を聞いてとても嬉しそうに微笑んだ。

「では、もう一度。私ももう少しだけクローディア様を独占できて嬉しいです」

 ジーニアスの言葉は真っすぐで、心臓に悪い。
 私は少し顔を赤くしながらも、ジーニアスと二人並んで再び水に浮かぶゴンドラを眺めたのだった。
 

――――――――――――

◎ジーニアス固有アイテム・《浄化のゴンドラ》を入手しました。

―――――――――――― 




――・――・――・――・――・――
☆☆☆

それでは、お待たせしました!
《まずは、スイーツを見て夕食の量を決めなくちゃ!!》
を選んだあなた!!





スタートです!!
――・――・――・――・――・――

「わかるわ!! まずどんなデザートがあるのか確認して食事の量を調節しましょう!!」

 私はリリアの手を取りながら言った。

「はい!! これこそまさに……戦略です!! では早速行きましょう」
「うん!!」

 私はリリアと二人で、デザートを探すことにした。
 デザートが並ぶ屋台を前にして、私は冷や汗を流しながら言った。

「リリア……どうしよう!! 大変な事態だわ」

 私の言葉に、リリアも眉を寄せて頷きながら言った。

「そうですね……サフィール閣下の本気……凄まじいですね……」

 サフィールは……凄かった。
 私が甘い物を好きだとどこかから入手したのか、絶対に食べきれない種類のデザートが並んでいた。

「こんなの選べないじゃない!!」

 種類が多すぎて本気で選べない!!
 リリアが真剣に悩みながら言った。

「クローディア様、これはお兄様たちも動員して、一つ口ずつ食べるしか策はありません」

 私は真剣な顔で答えた。

「でも……それではみんなに迷惑がかかるわ」
「いえ!! クローディア様のためなら、みんな喜んで自分のお腹を捧げると思います。兄などクローディア様のお望みならケーキホールで平らげますわ!! ジーニアス様は、素でケーキをホールで平らげて下さいます」

 アドラーは甘い物は苦手ではないとは思うが……さすがにホールケーキを一人で食べるのは無理だろう。
 ジーニアスは……うん。食べられそうだ。
 それも魅力的だが……。

「ん~~でも……それにしても多くない? 二人に頼っても絞るのは難しいかも……」

 普段の私は食べる物が決められている。
 誰かとどれが美味しいか、どれが食べたいかと悩みながら決める機会はほとんどない。
 だから贅沢な悩みだとは思いつつも、悩まずにはいられなかった。

「クローディア様。では、焼き菓子など日持ちするお菓子は……持ち帰りをお願いしてはどうでしょう」

 確かにテイクアウトができれば、かなり選択肢が減る!!

「リリア、それがいいわ」
「交渉は私にお任せ下さい。では、他はいつものようにみんなで少しずつ分けましょう」

 私はリリアと二人でケーキを眺めながら言った。

「じゃあ、リリアまずは系統を分けましょう」
「そうですね。生クリーム系、チョコ系など……」

 私は頷きながら言った。

「ええ、そしてそれぞれの系統から数種類ずつ選びましょう」
「はい!! ではまずは系統を分けるところからですね!!」
「そうね!!」

 私たちは真剣にスイーツを吟味した。
 スイーツを選ぶ。ただことだけのことなのにリリアと一緒に話をしながら選ぶと、とても楽しいし、とても満ち足りた気持ちになる。

「クローディア様!! 最高のスイーツを見つけましょう!!」

 リリアの笑顔を見て私も笑顔を返した。

「ええ!! 見つけましょう!!」
「はい!!」

 こうして私はリリアと最高に楽しくて幸せな時間を過ごしたのだった。
 



――・――・――・――・――・――
♪♪♪

それでは、お待たせしました!
《どれがおすすめなのか聞いてみたいな》
を選んだあなた!!





スタートです!!
――・――・――・――・――・――


「たくさんあって、迷うな……サフィール様、ディノ。何かおすすめはありますか?」

 私が尋ねると、サフィールが眉間にシワを寄せながら言った。

「……どの店もディアが喜んでくれそうなものをそろえたつもりだが……もしかして気に入らないのか?」

 もしかしてサフィールは怒っているのだろうか?
 おすすめなど聞かずに自分で選んだ方がいいだろうか?

「あ、いえ!! そんなことはないです!!」

 安易に頼ってしまったことに反省しているとディノが私の手を取った。

「ディア様。そんな悲しそうなお顔をしないで下さい。本当に無神経な男ですよね~~~。あの人はとりあえず気にしないで下さいね~~~。『ディア様に喜んでもらえなかったのかも』と不安になっているだけなので!! さて、どれもおすすめなので一緒に回って一通り説明しますよ。さ、デートです。屋台デートしましょうね~~♪ 私と!!」

 私は少しだけほっとしてディノを見上げながらお礼を言った。

「ありがとう。でもいいの?」

 私が尋ねると、ディノが明るい声で言った。

「もちろんです!! まさか、私たちに案内させて下さるなんて、こんな美味しい展開になるとは!! それなのに~~どこかの誰かさんは、折角ディア様の笑顔のために準備を頑張ったのに、当日に仏頂面でディア様に悲しい顔をさせるな~~んて、残念すぎですよね~~。行きましょう、ディア様~~」

 ディノと手を繋いで歩き出そうとしていると、反対側の手を優しく触れられた。

「待ってくれ。悔しいが……ディノの言う通りだ……。その……怒ったわけではないのだ……不安になっただけだ……その、ディアさえよければ、私も共に案内したい……」

 サフィールは顔を真っ赤にしながら真剣な顔で言った。
 私は、サフィールを見ながら笑顔で言った。

「こちらこそ、お願いします」

 するとサフィールが笑顔になって言った。

「やはりここは、最高級の肉を使った料理を堪能してもらおう。それとも甘い物がいいだろうか?」

 サフィールの笑顔の破壊力が凄い!!
 
 あ……サフィールってこんな可愛く笑う人なんだ……。

 ほとんどみたことがなかったサフィールの笑顔に驚いていると、彼の言葉を聞いたディノが、困ったように言った。

「やれやれ、いきなりこの緊張した空気感で、食事ですか? もう少しスマートにアクセサリーを見てもらったり、ミニゴンドラゲームに誘って距離を縮めてから、食事にお誘いした方が食事もずっと美味しくなるというものです」

 するとサフィールが眉を寄せながら言った。

「そういうものか? だが、階段をずっと歩いて疲れたのではないか? 屋台の中央に休める場所を作っているので、少し休んではどうだ? 飲み物を用意させよう」

 サフィールの言う通りのども乾いて、少し休みたいと思っていた。

「そうですね。少し休んで屋台を回りたいです」

 私の言葉を聞いたサフィールが、ディノを見ながら言った。

「ディノ!! ディアをテーブル席に案内しろ!! 私は飲み物を用意させる」

 この場を去ろうとするサフィールをディノが呼び止めた。

「ちょっと~~~閣下!! お待ちください!! それ、どう考えても私の仕事ですって!! この場合、閣下がディア様をご案内して!! 好感度上げるチャンスですよ?!」

 ディノの言葉にサフィールが困ったように言った。

「私と二人ではディアが緊張する。私への好感度などディアが楽しければどうでもよい。お前がディアを楽しませろ!! 命令だ!!」

 サフィールはそう言うと、私たちから離れた。
 ディノは困った顔をした後に、私を見ながら言った。

「ディア様……この国の大公子息は……少々重くて斜め上なところはありますが……あなたのことが大切なのです。どうか……嫌わないで下さいね」

 サフィールのことは昔は確かに怖いと思っていた。今でも不安になると気はあるが、これほど私によくしてくれているのだ。大切になされているというのは、充分に伝わってくる。
 私はディノを見ながら答えた。

「ええ。もちろんよ」

 ディノは私を見ながら柔らかく微笑んだ。

「ふふふ、よかった~~あ、ディア様ソファーはこちらですよ。ここからは屋台全体が見渡せるので座ってゆっくりと説明しますね!!」
「ありがとう、楽しみだわ」

 ソファーに座ると、数人の男性とサフィール自らトレーにドリンクを持って来ているのが見えた。
 少し休憩するというだけなのにすごい量の飲み物だ……。
 あんなに飲めない……。

 私がそんなことを思っていると、ディノが声を上げた。

「あ~~閣下は本当に……加減ってものを知らないんですよね~~あんなに大量の飲み物。ディア様が困るだけなのに……ディア様、いいですか? 遠慮などせず好きな物を選んでくださいね。私たちへの配慮は不要です。あなたが喜んでくれること。それが最大の喜びなのですから」
 
 ディノが私を見ながら微笑んだ。
 
「ディア~~~好きな物を選んでくれ!!」

 そして、サフィールが大量の飲み物をテーブルに並べた。
 私はサフィールを上目遣いで見上げながら言った。

「ありがとうございます。サフィール様。好きな物を選びますね」

 するとサフィールはまた先程の笑顔を見せながら言った。

「ああ!! ディアの好きな物を選んで、喜びをたくさん持って帰ってくれ!!」

 それから私はじっくりと選んだ飲み物を飲みながら、二人と一緒に楽しい時間を過ごしたのだった。







――――――――――――



次回の更新は4月 23日です♪

いかがでしたでしょうか?

少しでも皆様へのお礼になれば、
これほど嬉しいことはありません。
いつも本当に応援ありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。



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