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第三章 チームお飾りの正妃、隣国奪還

お気に入り6000感謝SS

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※こちらは本編ではありません。
皆様への感謝を込めた番外編になりますので、気になる方だけお読み頂けると有難いです。



――舞台は、ベルン国の王太子に招待された夕食会。
本編ではさらりと流されてしまったパーティーの続きです。

 アンドリューに連れ出されたクローディアは、ベランダでブラッドに出会った。
 そして、ブラッドと共に部屋の中に戻って来た……からの続きです。



【お気に入り6000感謝SS】


 ガルド&レガード『青年の悩み相談』
 ヒューゴ&アンドリュー『感謝と願い』


まずは、
 ガルド&レガード『青年の悩み相談』です。







どうぞ……。

――――――――――――

 
 私はリリアたちとデザートを選んでいたら、アンドリュー王子に「話がある」と言われて、ベランダに出た。その後、アンドリュー王子と話をした後に、柱の影に隠れて私たちの話の一部始終を聞いていたブラッドと共に、再び部屋に戻って来た。
 私が、ジーニアスとリリアと一緒にケーキを食べようと探していると、ジルベルトが声をかけてきた。

「クローディア様、このたびは本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます」

 初めてあった時から腹黒さ全開だったジルベルトに穏やかな顔でお礼を言われて、私はとても驚いたが、彼の感謝を素直に受け取ることにした。

「一日も早いベルン国復興を願っています」
「ありがとうございます」

 ジルベルトは深く頭を下げた。
 ジルベルトがブラッドに話があるような素振りを見せている。ブラッドと話ができるようにするためにも、私はこの場を早く去ろうと思った。だが、すぐにはジーニアスとリリアを見つけることが出来なかったので、近くにガルドの姿を見つけたので、ガルドの側に向かうことにした。

「ブラッドと話があるのでしょう? 私はガルドの側にいるわ、じゃあね」

 私はそう言うと、すぐ近くにいたガルドの元に向かった。
 ガルドは、すぐに私に気付いて声をかけてくれた。

「これは、クローディア様」

 私がガルドの元に行くと、柱の影になって気付かなかったが、どうやらガルドはレガードと話をしていたようだった。
 レガードは私を見ると、満面の笑みで迎えてくれた。

「クローディア様、先程と髪型が異なっているようですが、とても似合っています。お美しいです」

 レガードが爽やかな笑顔で私を褒めてくれた。レガードの言葉はとても透明で、私の心を躍らせる才能がある。

「……あ、ありがとう、褒めて貰えて嬉しいわ。でもごめんなさい、もしかして話の邪魔をしてしまったかしら?」

 私が遠慮がちに尋ねると、レガードが慌てて首を振った。

「いえ、そのような……ただ……ガルドさんに離宮でのことをお聞きしたくて……ですが、その…とてもシンプルにお話してくれて……」

 レガードの言葉を聞いて私は思わず尋ねてた。

「とてもシンプル? ガルドはなんと答えたの? 私も知りたいわ」

 私もガルドを見ると、ガルドは困ったように言った。

「……そうですね。指示通り、離宮内に侵入し、国王陛下と王妃殿下をお連れしました……とお答えしました」

 うん!!
 凄くシンプルだね!!
 シンプル過ぎて、詳細は何もわからないけど……。

 レガードは、隣で眉を下げながら言った。
 
「私としては、ラウル団長の配置予測がどれほどの精度だったのか、イドレ兵の剣の練度はどれほどだったのかなど具体的にお聞きしたいのですが……」

 私はガルドを見上げながら尋ねた。

「ふふふ、そうやって具体的な聞き方をすれば答えてくれるわ。でも……ガルドって、いつも必要最低限のことしか話さないわよね? 何か理由があるの?」

 私の問いかけに、ガルドが困った顔をしながら答えた。

「そうですね……昔から詳しく話をしても、相手にぼんやりされ『内容が頭に入ってこなかった』と言われたり、『どんな話でした?』と聞き返されることが多いので、いつ間にか必要最低限の言葉だけになりました。内容を理解してもらえないのは、実は……昔からの密かな悩みです」

 私はガルドの言葉に心当たりがあった。

 ぼんやりして、内容が入ってこない?
 そういえば、私も始めの頃、ガルドの声に聞き入って内容がわからなかったことが何度か……。

 そう、私もガルドの声に聞き入ってぼんやりとしてしまった。

 声か?!
 ガルドの声が良すぎるのか?!
 それ……体験したかも……。

「もしかして、ガルドさんの声が良すぎるのでしょうか?」

 レガードが首を傾けながら言ったので、私も大きく頷いた。

「あ、それ、私も同じことを思ったわ。ガルド、もう少し声を高くしてみるとか?」

 ガルドは困ったように笑いながら声を出した。

「高く……このような感じですか?」

 ガルドの初めて聞く少し高い声に、私は思わず唖然としてしまった。

「あ……色気の中に爽やかさが含まれて無敵になった……ダメだ。内容入って来ない。とにかく声がいい!!」

 レガードが「ん~」と悩んだ後に顔を上げながら言った。

「確かに……では、低くしてはどうですか?」

 ガルドはまたしても困った顔で声を出した。

「低く? このような感じですか」

 ……甘い低音……身体の力が抜ける……。

 ふらりと倒れそうになった私をレガードが支えてくれながら言った。

「クローディア様、大丈夫ですか?! ガルドさん、ダメです。ダメです!! 危険です。クローディア様。これ以上この声を聞かないでください!! ガルドさん、そのお声、封印です」

 ガルドの媚薬のような低音にふらふらしていると、ヒューゴが私たちに近付きながら言った。

「クローディア様、そろそろ連弾を……どうされたのですか?」

 レガードが私を支えながら言った。

「ヒューゴさん。いいところに!! ここは危険です。すぐにクローディア様をピアノの前にお連れしましょう」
「え、ええ。わかりました」

 レガードがガルドを見ながら声を出した。

「では、ガルドさん失礼します!!」

 こうして、私はレガードとヒューゴに連れられて、ピアノの元に向かったのだった。





――――――――――――

 ここからは
 ヒューゴ&アンドリュー『感謝と願い』







どうぞ……。

――――――――――――






 レガードは、ピアノまで私を送ってくれた後「私は後方で拝聴いたします」と言って去って行った。
 ヒューゴは、私の隣に立って「私は楽譜を読むことができますので、今回楽譜をめくらせていただきます」と言った。
 音楽の先進国のダラパイス国では、音楽に関わって人はかなり多い。ヒューゴは祖父、ダラパイス国王の秘書なので、ダラパイス国の出身だ。だから楽譜が読めても不思議はない。
 私は、ヒューゴに尋ねた。

「ヒューゴはどんな楽器を弾くの?」

 ヒューゴに尋ねるとヒューゴが微笑みながら答えてくれた。

「チェロです」

 チェロ……ピアノがようやく入ってきたベルン国にチェロはまだないかもしれない。

「チェロか~今度、ヒューゴとも一緒に弾けたらいいわね」
「ぜひ」

 私がヒューゴと話をしていると、アンドリューがやってきた。

「クローディア様、どうぞこちらへ。ヒューゴ殿、今日はお願いします」

 私は「はい」と答えてピアノの前にアンドリュー王子と並んで座った。アンドリューのパートを見て、私は思わず心が踊った。

「ふふ、素敵な楽譜ですね」

 アンドリューは嬉しそうに微笑みながら言った。

「気に入って下さってよかった。少し雰囲気は変るのですが、クローディア様と共に弾くならこれくらい華やかな方がいいかと思いまして、始めてもよろしいですか?」

 私は頷きながら返事をした。

「はい、いつでもどうぞ」

 私が頷くとアンドリュー王子が立ち上がって声を上げた。
 
「それでは皆様、これからクローディア様との連弾を披露いたします。この曲には民の幸福を願い作曲しました。そして、今日はクローディア様をはじめ我がベルン国奪還の手助けをして下さった皆様への感謝を込めて、新たに連弾用に編曲しました。お聞き下さい」

 アンドリューが椅子に座って私の顔を見たので、私は頷いた。
 そして、私はアンドリューと同時に指を動かした。

 連弾はとても緊張する。
 なぜなら自分が失敗してしまったら、曲が台無しになってしまうばかりか、相手にも迷惑をかけてしまう。だが、音が重なった時の快感は、体験してみなければ決してわからない。最高の達成感と高揚感に包まれる。これがアンサンブルの醍醐味だ。
 音楽というのは本当に不思議で、違う人間同士が奏でているにも関わらず、音は自然と溶けあい一体感を生む。そしてそれは、演奏者だけではなく、観客まで魅了するのだ。

 演奏中に、私は楽譜をめくってくれるヒューゴと目を合わせて笑い、隣で音楽を奏でるアンドリューとも何度か目が合い、微笑みあった。
 誰かと一緒に演奏するのは、とても楽しく素敵な時間だったのだ。












――――――――――――



明日は、リリア&ジーニアス+ブラッド『sweet sweet』です。




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