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第三章 チームお飾りの王太子妃、隣国奪還
145.5 【戦闘シーン】
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※全て戦闘シーンです。
読まなくても繋がりますので、興味のある方だけどうぞ。
アンドリューたちを守るために、ベルン国の騎士団長のネイは静かに、イドレ国の兵に向かって歩いて行った。そして、ひるむことなく兵の前で立ち止まると、兵を見上げながら言った。
「何か用か?」
イドレ国の兵は、馬車から出て来たネイに向かって吐き捨てるように言った。
「……こんなガキが乗っているよな馬車に、国王が乗っているわけがないな……だが一応、中を調べさせてもらう。どけ!!」
イドレ国の兵士がネイに向かって手を振り上げると、ネイは男の前から消えて、後ろから男の首に剣を当てながら声を上げた。
「イドレ国の兵というのは、随分と野蛮なのだな。ガキだと思う相手にいきなり手をあげるのか? ……民を守るべき兵が、弱き者に平気で手を上げる。これがベルン国なら……重罪だ。……で、そのガキに後ろを取られる気分はどうだ?」
兵士は、顔を歪ませながら口を開いた。
「おまえ……何者だ?」
ネイは、男に剣を当てたまま口を開いた。
「我が名は、ネイ・ガーラン。ベルン国の騎士団長。卑怯な手で王宮をかすめ取ったイドレ国兵士諸君。剣を交えるのは初めてだな。折角だ。わが剣、受けて貰おう」
ネイはそう言うと、剣を当てていた兵を後ろから手刀で気絶させると、素早く剣を抜くと、他の兵士に向かって剣を縦横無人に操り、次々に剣と、手につけていたナックルを駆使して、イドレ兵をなぎ倒した。
そして、気が付くと五、六人いたイドレ国の兵士は皆、地面に叩きつけたのだった。
ネイの戦法は剣と拳にナックルを付けての二重攻撃。彼の見た目に似合わず、随分と凶悪な戦闘スタイルなのであった。
ネイは最後の男を地面に倒すと、剣を鞘に戻した。
「守るべき者のない戦いなど……虚しいだけだ」
ネイは、そう言うと倒れたイドレ兵をその場に置いて、馬車に戻ったのだった。
◆
石造りの保管庫の前では、レガードと、ジーニアスがイドレ国の兵と対峙していた。
イドレ国の兵士と、レガードはお互いに目を合わせて固まっていた。
「兄ちゃん、昨日の……」
イドレ国の兵の中には、昨日腕相撲の実況をしてた男がいた。レガードもまさか、昨日関わった男と会うとは思わずに、奥歯を噛んだ。実況をしていた男は、レガードを睨みつけながら言った。
「何しに来たのか知れねぇが、戻った方がいいぜ」
レガードは言葉はわからなかったが、剣を抜いた。実況をしていた男もレガードが剣を抜くのを見て、「くっ!!」と、怖い顔で剣を抜くと、レガードに向かって剣を振り下ろした。
「……剣を抜いたこと後悔しろ!!」
レガードは男の剣を受けながら、真っすぐに男を見た。
言葉はわからなかったが、レガードは全力で相手をする必要があると言うことだけはわかった。
だが、どうしてもいつものように剣を弾き飛ばすことができない。
レガードが、実況をしていた男の剣を合わせたまま止まっていると、横から別の兵士がレガードを攻撃してきた。
「レガードさん!! 危ない!!」
間一髪のところでレガードを狙って来た実況していた男とは別のイドレ国兵の剣は、ジーニアスの鞭で阻まれた。
ジーニアスは、レガードの側によると、不意打ちをしようとした男にベルン国の言葉で言った。
「不意打ちは、よくないと思いますよ」
そして鞭を再び振り上げて、その男の剣を弾き飛ばした。
レガードは息を大きく吸って声を上げた。
「ジーニアスさん!! ありがとうございます」
レガードは、ジーニアスにお礼を言うと、力を入れて、実況をしていた男の剣をそのまま地面に叩きつけて武器を破壊した。
「破壊……だと……とんでもねぇな!!」
実況していた男は、佇んだままレガードを見つめた。
レガードは、他の兵士に剣を向けながらジーニアスに向かって言った。
「ジーニアスさん、私は間違っていました。昨日のことを思うと、攻撃することを躊躇してしまって……でも、剣を向けたら、そんなことを言っている場合ではない。未熟でした……もう、迷いません!!」
そう言って、レガード本来の強さで一人ずつ確実に、兵を地面に倒していった。
その光景を見て実況をしていた男が、今度はハイマ国の言葉で言った。
「腕っぷしだけじゃなく……剣も……強ぇな……しかも、兄ちゃん、その言葉……ハイマの人間か?」
レガードは、実況の男を見ると「ええ」と言って、その男に剣を向けた。
「降参してはもらえませんか?」
実況していた男は両手を上げながらハイマ国の言葉で言った。
「降参だ……剣も破壊されて、仲間も全滅……すきにしてくれ」
レガードは、「わかりました」というと、男を縄で縛った。
こうしてレガートたちは、公爵率いる地下組織を無事に解放し、ジルベルトを公爵の組織に合流する手助けをしたたのだった。
◆
小高い丘の上の教会は、とても頑丈な石造りで、側面から丸太などで破壊しようとしても簡単には破壊できない。
つまり、ラウルとアドラーが、守るべき入口はたった一つ。
――教会の入り口だけ守り切ればいい。
ラウルとアドラーは、教会の入口に立ち、互いの背を守るように兵と剣を交えていた。
この教会の入り口は、六段くらいの階段があり、教会の扉の前には、畳六畳ほどの空間があった。
アドラーとラウルは、扉の前の広い空間で兵を待ち構えていた。
階段の上で待つと向こうまで兵の動きが良く見えるし、階段によって、少しだけ相手の動きを制限できるという利点もあった。
ここは船とは違い、足場も悪くはない。とはいえ、広い場所で複数の兵の攻撃を同時に受けることになる。
そこでラウルとアドラーは自然と、お互いが背中合わせにして、死角である背を守るように剣を振っていた。
その場からほとんど動かずに戦うというスタイルは、腕力も技術も体力もあるラウルは得意としていたが、アドラーは本来、足の速さを生かしてスピードを乗せた攻撃を得意としていたので、少々苦手だった。
だが……。
アドラーは、シーズルスの不審船で戦った時から、ずっと足の反動に頼らない攻撃の訓練をしていた。
あの時、アドラーは、己の足に頼りすぎていることを実感し、克服するために、ただひたすら訓練を重ねた。
この旅の間中、訓練には、ラウルや、リリア、ヒューゴ、レガードたちもずっと付き合ってくれたのは、アドラーにとってとても幸運なことだった。
剣技、体力、腕力全てを備えたラウルの攻撃を毎日のように受け、ハイマ国騎士団の若き天才剣士レガード力のある予測不能の柔軟な攻撃を受け続けて、アドラーはいつしか、足だけに頼らない力の使い方を覚えた。
今も兵士が獰猛な猛獣のように、剣を振り上げながら、アドラーに怒声を浴びせながら攻撃してきた。
「我々イドレ国の兵相手に、調子に乗るな!!」
アドラーは、襲い掛かって来た男の剣を斜め下から弾き飛ばして、その隙に男の顎に一撃を入れ、襲い掛かってきた男はゆっくりと倒れた。
アドラーが覚えたことは、相手の攻撃を利用した反撃の方法だった。
ラウルとレガードの隙のない強力な攻撃を受け続けたアドラーはいつしか、強大な二人の力を利用して相手の隙をつけないか、という考えに至ったのだった。
そして、試行錯誤の末に、今の技を習得した。
そんなアドラーは、次々に襲い掛かる兵の力の乗った剣の攻撃力を利用して、反動で攻撃を交わしつつ、その隙に相手の力を利用して、致命傷を負わせると戦法で、これまでよりも楽に兵を倒していった。
元来、剣の技術の高いアドラーにとって、この戦法は驚くほど相性のいい戦法だった。
面白いほど、相手の攻撃を交わせるし、相手の攻撃の反動を使えば、筋力のないアドラーでも強力な攻撃を繰り出すことが出来た。
――大丈夫だ。クローディア様を守れる!!
アドラーは、手ごたえを感じて、一心不乱に剣を振ったのだった。
アドラーを背にして、剣を振るラウルも、相手の人数が多くなると、どうしての力でねじ伏せるという方法を取ってしまって、体力や剣をすり減らしてしまっていたが、今は、自分でも驚くほど、冷静に周りを見て攻撃をいなしていた。
これも、アドラーの速さと緻密な攻撃を受け続け、リリアの人の動きをよく観察して、裏をかくような繊細な攻撃を毎日のように受けた成果だった。
力だけではなく、戦場で求められる観察力と、それを実際に使いこなすための冷静さを、アドラーとリリアの剣から教えられた。
今も、ラウルは目の前にいる兵士たちの動きを冷静に分析していた。
少し手前の男の剣を右にずらせば、右から攻撃をしようとして来る男の攻撃を交わすことができる。
そうしている間に左から襲い掛かる男の剣を振り落として、右斜め後ろの男の剣を付き返せば、数人がその反動で、重心が傾き数人が倒れて、攻撃が止む。
そう考えて、ラウルは、手前の男の剣を右にずらして、左の男の剣を振り落とし、右斜め後ろの男の剣をおもいっきり突いた。
すると数名の兵士が、倒された兵の衝撃で五段ほどから、階段の下まで落ちて、ラウルへの攻撃が一時止んだ。
――よし、冷静に周りを見れている。クローディア様の元には誰一人として行かせはしない。
ラウルは、自分の剣が確実に成長していることを感じた。
ふと、ラウルは背中に体温を感じた。ラウルは少しだけ口角をあげながら声を上げた。
「アドラー、大丈夫か?」
すると、息を整えながらアドラーが答えた。
「大丈夫ですよ。そちらは?」
アドラーは、向かって来た兵の剣を自分の剣で滑らせ、その反動で兵士の剣を振り落としながら答えた。
ラウルは、襲い掛かる兵の剣先を攻撃することで、その弾いた反動で後ろの兵の攻撃を防ぐという高度は防衛を見せながら口を開いた。
「問題ない」
そんなラウルの言葉にアドラーも答えた。
「私も問題ありません!!」
こうして、二人は襲い掛かる兵を倒していったのだった。
一斉に襲い掛かる数十人の訓練された兵士を二人で相手をするというのは、至難の業だが、アドラーとラウルは、そんな偉業をやり遂げようとしていたのだった。
読まなくても繋がりますので、興味のある方だけどうぞ。
アンドリューたちを守るために、ベルン国の騎士団長のネイは静かに、イドレ国の兵に向かって歩いて行った。そして、ひるむことなく兵の前で立ち止まると、兵を見上げながら言った。
「何か用か?」
イドレ国の兵は、馬車から出て来たネイに向かって吐き捨てるように言った。
「……こんなガキが乗っているよな馬車に、国王が乗っているわけがないな……だが一応、中を調べさせてもらう。どけ!!」
イドレ国の兵士がネイに向かって手を振り上げると、ネイは男の前から消えて、後ろから男の首に剣を当てながら声を上げた。
「イドレ国の兵というのは、随分と野蛮なのだな。ガキだと思う相手にいきなり手をあげるのか? ……民を守るべき兵が、弱き者に平気で手を上げる。これがベルン国なら……重罪だ。……で、そのガキに後ろを取られる気分はどうだ?」
兵士は、顔を歪ませながら口を開いた。
「おまえ……何者だ?」
ネイは、男に剣を当てたまま口を開いた。
「我が名は、ネイ・ガーラン。ベルン国の騎士団長。卑怯な手で王宮をかすめ取ったイドレ国兵士諸君。剣を交えるのは初めてだな。折角だ。わが剣、受けて貰おう」
ネイはそう言うと、剣を当てていた兵を後ろから手刀で気絶させると、素早く剣を抜くと、他の兵士に向かって剣を縦横無人に操り、次々に剣と、手につけていたナックルを駆使して、イドレ兵をなぎ倒した。
そして、気が付くと五、六人いたイドレ国の兵士は皆、地面に叩きつけたのだった。
ネイの戦法は剣と拳にナックルを付けての二重攻撃。彼の見た目に似合わず、随分と凶悪な戦闘スタイルなのであった。
ネイは最後の男を地面に倒すと、剣を鞘に戻した。
「守るべき者のない戦いなど……虚しいだけだ」
ネイは、そう言うと倒れたイドレ兵をその場に置いて、馬車に戻ったのだった。
◆
石造りの保管庫の前では、レガードと、ジーニアスがイドレ国の兵と対峙していた。
イドレ国の兵士と、レガードはお互いに目を合わせて固まっていた。
「兄ちゃん、昨日の……」
イドレ国の兵の中には、昨日腕相撲の実況をしてた男がいた。レガードもまさか、昨日関わった男と会うとは思わずに、奥歯を噛んだ。実況をしていた男は、レガードを睨みつけながら言った。
「何しに来たのか知れねぇが、戻った方がいいぜ」
レガードは言葉はわからなかったが、剣を抜いた。実況をしていた男もレガードが剣を抜くのを見て、「くっ!!」と、怖い顔で剣を抜くと、レガードに向かって剣を振り下ろした。
「……剣を抜いたこと後悔しろ!!」
レガードは男の剣を受けながら、真っすぐに男を見た。
言葉はわからなかったが、レガードは全力で相手をする必要があると言うことだけはわかった。
だが、どうしてもいつものように剣を弾き飛ばすことができない。
レガードが、実況をしていた男の剣を合わせたまま止まっていると、横から別の兵士がレガードを攻撃してきた。
「レガードさん!! 危ない!!」
間一髪のところでレガードを狙って来た実況していた男とは別のイドレ国兵の剣は、ジーニアスの鞭で阻まれた。
ジーニアスは、レガードの側によると、不意打ちをしようとした男にベルン国の言葉で言った。
「不意打ちは、よくないと思いますよ」
そして鞭を再び振り上げて、その男の剣を弾き飛ばした。
レガードは息を大きく吸って声を上げた。
「ジーニアスさん!! ありがとうございます」
レガードは、ジーニアスにお礼を言うと、力を入れて、実況をしていた男の剣をそのまま地面に叩きつけて武器を破壊した。
「破壊……だと……とんでもねぇな!!」
実況していた男は、佇んだままレガードを見つめた。
レガードは、他の兵士に剣を向けながらジーニアスに向かって言った。
「ジーニアスさん、私は間違っていました。昨日のことを思うと、攻撃することを躊躇してしまって……でも、剣を向けたら、そんなことを言っている場合ではない。未熟でした……もう、迷いません!!」
そう言って、レガード本来の強さで一人ずつ確実に、兵を地面に倒していった。
その光景を見て実況をしていた男が、今度はハイマ国の言葉で言った。
「腕っぷしだけじゃなく……剣も……強ぇな……しかも、兄ちゃん、その言葉……ハイマの人間か?」
レガードは、実況の男を見ると「ええ」と言って、その男に剣を向けた。
「降参してはもらえませんか?」
実況していた男は両手を上げながらハイマ国の言葉で言った。
「降参だ……剣も破壊されて、仲間も全滅……すきにしてくれ」
レガードは、「わかりました」というと、男を縄で縛った。
こうしてレガートたちは、公爵率いる地下組織を無事に解放し、ジルベルトを公爵の組織に合流する手助けをしたたのだった。
◆
小高い丘の上の教会は、とても頑丈な石造りで、側面から丸太などで破壊しようとしても簡単には破壊できない。
つまり、ラウルとアドラーが、守るべき入口はたった一つ。
――教会の入り口だけ守り切ればいい。
ラウルとアドラーは、教会の入口に立ち、互いの背を守るように兵と剣を交えていた。
この教会の入り口は、六段くらいの階段があり、教会の扉の前には、畳六畳ほどの空間があった。
アドラーとラウルは、扉の前の広い空間で兵を待ち構えていた。
階段の上で待つと向こうまで兵の動きが良く見えるし、階段によって、少しだけ相手の動きを制限できるという利点もあった。
ここは船とは違い、足場も悪くはない。とはいえ、広い場所で複数の兵の攻撃を同時に受けることになる。
そこでラウルとアドラーは自然と、お互いが背中合わせにして、死角である背を守るように剣を振っていた。
その場からほとんど動かずに戦うというスタイルは、腕力も技術も体力もあるラウルは得意としていたが、アドラーは本来、足の速さを生かしてスピードを乗せた攻撃を得意としていたので、少々苦手だった。
だが……。
アドラーは、シーズルスの不審船で戦った時から、ずっと足の反動に頼らない攻撃の訓練をしていた。
あの時、アドラーは、己の足に頼りすぎていることを実感し、克服するために、ただひたすら訓練を重ねた。
この旅の間中、訓練には、ラウルや、リリア、ヒューゴ、レガードたちもずっと付き合ってくれたのは、アドラーにとってとても幸運なことだった。
剣技、体力、腕力全てを備えたラウルの攻撃を毎日のように受け、ハイマ国騎士団の若き天才剣士レガード力のある予測不能の柔軟な攻撃を受け続けて、アドラーはいつしか、足だけに頼らない力の使い方を覚えた。
今も兵士が獰猛な猛獣のように、剣を振り上げながら、アドラーに怒声を浴びせながら攻撃してきた。
「我々イドレ国の兵相手に、調子に乗るな!!」
アドラーは、襲い掛かって来た男の剣を斜め下から弾き飛ばして、その隙に男の顎に一撃を入れ、襲い掛かってきた男はゆっくりと倒れた。
アドラーが覚えたことは、相手の攻撃を利用した反撃の方法だった。
ラウルとレガードの隙のない強力な攻撃を受け続けたアドラーはいつしか、強大な二人の力を利用して相手の隙をつけないか、という考えに至ったのだった。
そして、試行錯誤の末に、今の技を習得した。
そんなアドラーは、次々に襲い掛かる兵の力の乗った剣の攻撃力を利用して、反動で攻撃を交わしつつ、その隙に相手の力を利用して、致命傷を負わせると戦法で、これまでよりも楽に兵を倒していった。
元来、剣の技術の高いアドラーにとって、この戦法は驚くほど相性のいい戦法だった。
面白いほど、相手の攻撃を交わせるし、相手の攻撃の反動を使えば、筋力のないアドラーでも強力な攻撃を繰り出すことが出来た。
――大丈夫だ。クローディア様を守れる!!
アドラーは、手ごたえを感じて、一心不乱に剣を振ったのだった。
アドラーを背にして、剣を振るラウルも、相手の人数が多くなると、どうしての力でねじ伏せるという方法を取ってしまって、体力や剣をすり減らしてしまっていたが、今は、自分でも驚くほど、冷静に周りを見て攻撃をいなしていた。
これも、アドラーの速さと緻密な攻撃を受け続け、リリアの人の動きをよく観察して、裏をかくような繊細な攻撃を毎日のように受けた成果だった。
力だけではなく、戦場で求められる観察力と、それを実際に使いこなすための冷静さを、アドラーとリリアの剣から教えられた。
今も、ラウルは目の前にいる兵士たちの動きを冷静に分析していた。
少し手前の男の剣を右にずらせば、右から攻撃をしようとして来る男の攻撃を交わすことができる。
そうしている間に左から襲い掛かる男の剣を振り落として、右斜め後ろの男の剣を付き返せば、数人がその反動で、重心が傾き数人が倒れて、攻撃が止む。
そう考えて、ラウルは、手前の男の剣を右にずらして、左の男の剣を振り落とし、右斜め後ろの男の剣をおもいっきり突いた。
すると数名の兵士が、倒された兵の衝撃で五段ほどから、階段の下まで落ちて、ラウルへの攻撃が一時止んだ。
――よし、冷静に周りを見れている。クローディア様の元には誰一人として行かせはしない。
ラウルは、自分の剣が確実に成長していることを感じた。
ふと、ラウルは背中に体温を感じた。ラウルは少しだけ口角をあげながら声を上げた。
「アドラー、大丈夫か?」
すると、息を整えながらアドラーが答えた。
「大丈夫ですよ。そちらは?」
アドラーは、向かって来た兵の剣を自分の剣で滑らせ、その反動で兵士の剣を振り落としながら答えた。
ラウルは、襲い掛かる兵の剣先を攻撃することで、その弾いた反動で後ろの兵の攻撃を防ぐという高度は防衛を見せながら口を開いた。
「問題ない」
そんなラウルの言葉にアドラーも答えた。
「私も問題ありません!!」
こうして、二人は襲い掛かる兵を倒していったのだった。
一斉に襲い掛かる数十人の訓練された兵士を二人で相手をするというのは、至難の業だが、アドラーとラウルは、そんな偉業をやり遂げようとしていたのだった。
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