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第三章 チームお飾りの王太子妃、隣国奪還

136 チームお飾りの正妃の戦略会議(5)

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 ガルドとレイヴィンによるベルン国の国王と王妃の救出と、リリアとレオンの陽動作戦が決まると、ジルベルトが声を上げた。

「では、ガルド殿とレイヴィン殿への抜け道の案内と、王都内に四カ所ある地下組織への連絡は私が担当いたします」

 ジルベルトの言葉に、レオンが声を上げた。

「ジルベルト。地下組織と接触した時、ベルン王都内の状況や、兵力など、我々がこの作戦を実行する前提の情報が大きく変わっていないか、同時に判断してほしい」

 レオンの言う通り、私たちが持っている情報を得た時から、実際に現地で確認すると、ベルン王都内の状況が変わっている可能性もある。
 細かな変化は問題ないにしても大きく変わっていては、作戦に支障をきたす可能性がある。
 するとジーニアスが声を上げた。

「では、私はジルベルト殿に同行して情報に相違ないかの確認をいたします。幸いベルン国の言葉も習得しておりますので、ジルベルト殿は組織の代表の方に今後の説明をして頂き、私がその間に他の方々からお話を聞いて情報の整理をいたします」

 ジーニアスが情報を取り扱ってくれるなら、これほど信頼できることはないが、ジルベルトもジーニアスもイドレ国の兵が多い王都内に入って大丈夫だろうか?
 二人を守るために兵をつけたいが、そんなことをすれば目立ってしまうだろう。
 途中までは、ガルドとレイヴィンが同行するので、大丈夫だろうが……。
 私が頭を悩ませていると、レイヴィンが腕を組みながら言った。

「ある程度、腕のいい同行者が必要ではないですか? 一人で数人を相手にできるような……途中までは死神……ガルド殿と私も同行しますが……ベルン国の王都内を四箇所も回るのでしょう?」

 どうやらレイヴィンも私と同じ結論になったようだった。
 人数を確保できないということは、実力ある人物に同行して貰う必要がある。
 この中だと、ラウルか、アドラーだろうか……。
 私が真剣に考えていると、ラウルがレガードを見ながら尋ねた。

「レガード、頼めるか」

 騎士団でレガードの剣を見た時に、とても優雅に舞っているように見え、騎士団でも一際目を引く剣だったことを思い出した。レガードならきっと、ジルベルトとジーニアスを守ってくれるだろう。
 レガードは姿勢を正しながら答えた。

「はっ」

 ラウルがレガードを見ながら「頼む」と言って頷くと、今度はロニを見ながら言った。

「では、何かあった場合の伝達を、ロニ。頼むぞ」

 ロニもレガードのように姿勢を正しながら答えた。

「はっ」

 その後、ヒューゴが皆を見ながら言った。

「では、私はアンドリュー王子殿下に付き添います」

 私はヒューゴを見ながら頷いた。

「お願いね」

 そして、今度はウィルファンを見ると、目が合った。ウィルファンは少し目を細めると声を上げた。

「では、ベルン国の兵士を牢から出すのは私にお任せ下さい。作戦については、ジルベルト殿から事前に彼らに説明をお願いいたします」

 ウィルファンが彼らを牢から解放してくれるのなら助かる。
 私がほっとしていると、ブラッドが声を上げた。

「では、私とアドラーとラウルは、クローディア殿の護衛をする。それぞれで、細かな動きを確認してくれ」

 ブラッドの言葉を聞いて皆が頷いた。

「皆、ありがとう。お願いします。……でも、無理はしないで……」

 私がそう言うと、それぞれ「かしこまりました」「わかっている」などと返事をしてくれたのだった。

 こうして、ベルン奪還の詳細が決まったのだった。
 
 




 同時刻。ハイマ国国王エルガルドの執務室には、レナン公爵がいた。
 二人とも、目の下に黒い影を落とすほど疲弊した様子だった。
 そんな中、エルガルドが声を上げた。

「レナン公爵。ブラッドから、何か連絡は入ったか?」

 国王エルガルドの問いかけに、レナン公爵は首を振った後に答えた。

「いえ……陛下、密偵からの報告はいかがでしたか? ロウエル元公爵からの手紙の内容はわかりましたか?」

 ブラッドがハイマを出発する前に『問題があった場合のみご連絡いたします』と言ってハイマ国を出た。

 そして、未だにブラッドからは、なんの連絡も来ない。

 さらにブラッドは、出国前にエルガルドの命がなくとも、騎士団に応援要請をする権限を主張し、エルガルドもそれを許した。エルガルドの側近の話によれば、騎士団はどうやらブラッドの要請にすぐに答えられるようにかなりの兵の準備をしているらしい。

「先程到着したが……密偵もたいした情報は持ち帰らなかった。ロウエル元公爵から、クローディア殿へ手紙も……ガラスの取引内容だったそうだ」

 エルガルドの言葉に、レナン公爵は眉を寄せた。

「ガラスの? なぜ、ガラスの取引内容をクローディア殿に騎士団の騎兵隊所属の者を使ってまで届けさせたのでしょうか? 何か二人の中で事前に話をしていたのでしょうか?」

 レナン公爵の言葉にエルガルドは深いため息をつきながら答えた。

「そう考えるのが自然だが……」

 エルガルドが密偵を派遣したが、クローディア一行は辺境伯邸に少々長く留まっていると情報しかなかった。
 ダラパイス国の辺境伯は、クローディアの母の親戚筋の家だ。
 少々長く留まっても不思議ではない。
 それにエルガルドの密偵は優秀だ。その者でも特別な情報は持ち帰らなかった。

「陛下、それよりもフィルガルド殿下の研究施設についての補助を……」

 レナン公爵の言葉に、エルガルドもすぐにクローディアたちのことから、頭を切り替えたのだった。




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