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第三章 チームお飾りの王太子妃、隣国奪還
【番外編】お気に入り3000感謝SS
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※こちらは、本編ではありません。
皆様への感謝を込めた番外編になりますので、気になる方だけお読み頂けますと有難いです。
本日からは、読者の方に頂いた感想を元にしたお話です。
ご提案ありがとうございます!
o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺
みんなで枕投げ(?)をします♪
ほのぼの回(?)になる予定です。
※お気に入り3000感謝SS※
【枕投げ死闘(デスマッチ)1】
……どうぞ!!
――――――――
ダラパイス国の辺境伯のお屋敷にしばらくお世話になることになった私は、アドラーとラウルと、ガルドとリリアとジーニアスとヒューゴとエルファンと一緒に、朝食を終えて渡り廊下を歩いていた。すると懸命に剣の稽古をしていたレガードとロニ《本編では129話(※変更の可能性あり)に登場予定:ハイマ国騎士団騎兵部隊最速の男ロニ・ダ―レン》を見つけた。
「レガード、ロニ。お疲れ様」
私が声をかけると、レガードが爽やかな笑顔で嬉しそうに答えた。
「クローディア様、お声がけありがとうございます」
一方、ロニは、かなり息があがっており、息を整えながら「クローディア様、お声をかけて下さり……あり……がとう……ございます……倒れるかと思いました……」と答えていた。どうやらレガードの訓練は厳しいものだったようだ。
私が二人に声をかけるために立ち止まっていると、エルファンがレガードたちとは違う方向を見て「みんな、ありがとう。お疲れ様」という声をかけていた。
エルファンの声のかけた方を見ると、辺境伯の屋敷で働く男性たちが、汗を流しながら懸命に白い綿に似た素材の植物を桶の中で踏んでいた。そして、その横には大量の綿のような物が積み上がっている。
私は不思議に思ってエルファンに尋ねた。
「ねぇ、エルファン。あれは、何をしているの?」
私の素朴な疑問にエルファンは丁寧に答えてくれた。
「クローディア様。あれは、たわという植物なのですが、あの植物を踏んだり、袋に入れて投げたりして潰しているのです。え~~と、実際に見た方がいいかな。ちょっと待っててくださいね」
エルファンは、植物を踏みながら作業をしている人たちの所に行くと、何かを持って来てくれた。
「これを作っているのです」
私は、エルファンに渡された物を見て驚いてしまった。柔らかいのに弾力があるこの感触に私は覚えがあった。
――これって、低反発素材に似てる!!
どうやらこのたわという植物を潰すと、低反発クッションのような素材が出来るようだった。
「あのふわふわした植物を潰すとこんな風になるのね!! これ……色々使えそうね」
私の言葉にエルファンは嬉しそうに頷きながら言った。
「この素材の価値がお分かりになるのですか?! さすがクローディア様!! そうなのです。この素材はとても役に立ちます。でも、潰し過ぎると弾力が無くなり、足りないと綿ようにふわふわなままで……なかなか加減が難しくて、人の手で潰すしか方法がなく、数があまり出来ないのです」
私は、近くに干してある数十個の袋を見ながら言った。
「ねぇ、エルファン。この袋の中にあのたわを入れて投げても同じようになるの?」
エルファンは大きく頷きながら言った。
「そうです。踏むのが疲れたら、たわを袋に入れて地面に投げつけたりして、潰します」
たわは、まるで綿花のように柔らかさだ。それを袋に入れたら、きっと少し大きめの枕のような形になるだろう。
そうまさしく枕だ……。
この袋を投げる?
私の頭にはあの有名な光景が浮かんだ。
これって――。
私は一緒にいたみんなを見ながら言った。
「ねぇ、みんな、枕投げ……しない?」
「枕投げ???」
――みんなで枕投げ……それは禁断の蜜のような響きを持つ背徳感に溢れた遊び。
みんなでやりたいと思ってもなかなか許されることがない禁断の遊びだ。
だが、今、その枕投げをすることが、お世話になっている人に恩を返すことに繋がるのだ。
つまり!!
あの、禁断の遊び――枕投げを推奨されている!!
こんなシチュエーションを用意されたら……やるよね?
私は上機嫌で、首を傾ける皆に、簡単に枕投げの説明したのだった。
◆
「確かに合理的ですね。袋を投げ合って、この反発する素材になれば、お世話になっているお礼にもなりますし、鍛錬にもなるかもしれませんね」
ジーニアスが真っ先に私の意図を理解して頷いてくれた。
「ですが、いくら柔らかな素材を使ったとしても、クローディア様にそんな危険な事をさせるなんて……」
アドラーが眉を寄せながら言った。すると、ラウルが少し考えて口を開いた。
「では、クローディア様は審判をされてはいかがですか? 最終的に相手の陣地に枕を全て投げ入れるか、寝たくなるほど疲れた時点で終了なのですよね?」
ラウルの説明は、的を得てわかりやすい説明だった。
私は枕投げの経験がない。だから、おぼろげなイメージしかなかったので、ラウルが私のぼんやりとした言葉で枕投げを理解してくれて助かった。
もしかしたら、正式な枕投げのルールが存在しているのかもしれないが、生憎と私はそのルールを知らなかったので。今回は、枕がどちらか一方に全部投げ込まれたら終わり、というわかりやすいルールに乗っ取り枕投げを行うことにした。
「そうよ!!」
私が同意すると、ガルドがあっさりと頷いて私を見ながら慈愛に満ちた瞳を向けながら言った。
「ああ、なるほど。枕を相手の陣に入れればいいのですね。ん……それなら、退屈かもしれませんが、クローディア様は審判をされた方が良いでしょうね。エルファン殿も見ていてくださいね」
本音を言えば私も枕投げに参戦したかったが、雰囲気を味わえるだけでもいいと思うことにした。エルファンも頷いてくれた。
「わかった! それなら私が審判をするわ。早速、袋にたわを入れましょう!!」
「はい!」
こうして、私たちは十五個ほど用意してあった枕より少し大きい袋の中に全てのたわを詰めると、地面に線を引いて、両方に半分ずつくらい置いた。
「それじゃあ、チームを決めましょう!!」
私たちがチームを決めようとしていると、書庫から出て来たレオンとブラッドとレイヴィンが通りかかった。
そして、私たちを見てレオンが不思議そうに言った。
『クローディア、朝から何をしているんだ? その地面に書いてある線と、置いてあるものはなんだ?』
レオンの問いかけに私は枕投げをすることになった経緯と、内容を説明したのだった。
◆
説明を終えると、ずっと黙っていたレイヴィンの身体がゆらりと揺れた。
「素晴らしい!! 素晴らしいです、クローディア様!! 辺境伯の恩に報いるためにも、ぜひ私も参戦させてください。そして、私は、ぜひとも死神に攻撃……いえ、ガルド殿とは違うチームになりたいです。死神……ガルド殿を……私の枕で……寝かせます!!」
レイヴィンが、狂ったように笑った後に、ガルドを見ながら言った。
ど、どうしよう!!
怖い、怖い。
あれ? これ、枕投げの話だよね?
なんか、寝かせるに沈めるって、不穏な送り仮名見えなかった??
どうやら、先ほど私が言った枕投げの本来の目的である『枕投げは、最終的には疲れて眠くなるのを目標にしている気がする』という言葉がレイヴィンには間違った解釈で伝わったようだ。急いで否定しようとすると、ラウルが慌てて声を上げた。
「レイヴィン殿、悪いがそれはあきらめてくれ。……ガルド殿を、寝かせるのは、私だ」
ラウルまで、ガルドを枕を当てて不穏な送り仮名をつけて寝かせるって言ってる?!
あれ?
でも寝かせるって……なんだか、本来の枕投げの趣旨で合っているような……?
これで正解?
「では、私もぜひ、ガルド殿に正面から挑みたいです!!」
レガードも闘志を燃やしながら言い放った。
参謀、副団長、若手の実力者から挑戦を受けたガルドは困ったように笑いながら言った。
「枕投げ……やったことはないですが……恩返しにも、訓練にもなりそうですから、私もできるだけのことはいたします。ご期待に答えて、私も三人を寝かせるつもりでやりましょう」
レイヴィンが怖いくらいに笑いながら言った。
「ふっはは、面白い!! スカーピリナ国参謀の名にかけて――死神を絶対に寝かしつける!!」
枕投げに参謀の名をかけっちゃったよ、それでいいの?!
レイヴィン~~!!
君、大丈夫?!
君の上司すぐ近くにいるけど、枕投げに参謀の名をかけちゃって、叱られない??
私がレイヴィンを心配していると、彼の上司であるレオンがアドラーに通訳して貰った後に言った。
『あはは、随分と敵が多いな、死神。では私はお前のチームに入ろう。おい、側近。お前がいないと言葉がわからない。俺のチームに入れ!』
私は思わずレオンを二度見した。
え?
レオンも参戦するの?
あれ、あなた様は、スカーピリナ国の王様ですよね~~?!
枕投げに参戦しちゃうんですかぁ~~?!
しかも、アドラーを強引に仲間に引き入れたし!!
アドラーは、眼鏡を上げると小さく息を吐きながら言った。
「仕方ありませんね……では、リリアはクローディア様と……」
アドラーの言葉を聞いたリリアは一度目を閉じた後に、再びゆっくりと目を開きながら言った。
「いえ、いい機会です。剣ではまだまだお兄様には敵いませんが、スピードなら私も負けません!! 私はお兄様と対峙します!! 必ずや枕を全てそちらの陣地に投げ入れて見せますわ!!」
リリアもどうやら参戦するようで、やる気に満ち溢れていた。
枕投げ、やっぱりすごい!
アドラーは、じっとリリアを見た後に凛々しい顔で言った。
「リリア……わかった。……受けて立とう!」
リリアの言葉を聞いたロニが、「確かにスピードなら、レガードにも勝てるかもしないな……」と呟くと、アドラーの方に入った。
「私は、こちらのチームに入ります。副団長、レガード。速さでは、負けません!」
火花が飛び散る中、ジーニアスは枕をじっと観察していた。
「ジーニアスさん、どうしました?」
ヒューゴの問いかけに、ジーニアスが顔を上げて答えた。
「いえ、先ほどの素材。確かに貴重な物です。踏んだり投げたりする以外に効率的な生産方法がないものかと考えておりました」
ジーニアスの言葉に、ヒューゴが「なるほど」と言うと、少し考えた後に言った。
「では、クローディア様のおっしゃるように枕投げという新しい方法を試してみるのはいいのではありませんか? 問題点や改善点が見つかれば、効率化につながるかもしれませんよ?」
ヒューゴの言葉にジーニアスも頷いた。
「そうですね。では、私はこちらのチームに入ります」
ジーニアスはガルドの側に立っていたので、ガルドのチームを選んだ。
「では、私は人数が合うようにあちらに入りましょう」
ヒューゴは、ジーニアスと反対のラウルのチームに入った。
みんながチームに分かれると、ブラッドが私の隣に歩いて来て、いつもより近い距離で立ち止まった。
「ブラッドは入らないの?」
ブラッドを見上げて尋ねると、ブラッドが飄々とした態度で答えた。
「ああ。あなたに何かあった時、守る役も必要だろう。それに人数も丁度いいからな……」
確かに、人数も五対五で丁度いい。
それに私だけここで見ているのは少しだけ寂しかったので、ブラッドも参加しないと聞いて仲間が出来た気がした。
「じゃあ、ブラッド!! 一緒に判定手伝ってね!! それでは、枕投げよ~~い、始め~~~!!」
こうしてガルド、レオン、アドラー、ロニ、ジーニアスチームと、レイヴィン、ラウル、レガード、リリア、ヒューゴチームで辺境伯のお手伝いのために、枕投げが始まったのだった。
皆様への感謝を込めた番外編になりますので、気になる方だけお読み頂けますと有難いです。
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みんなで枕投げ(?)をします♪
ほのぼの回(?)になる予定です。
※お気に入り3000感謝SS※
【枕投げ死闘(デスマッチ)1】
……どうぞ!!
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ダラパイス国の辺境伯のお屋敷にしばらくお世話になることになった私は、アドラーとラウルと、ガルドとリリアとジーニアスとヒューゴとエルファンと一緒に、朝食を終えて渡り廊下を歩いていた。すると懸命に剣の稽古をしていたレガードとロニ《本編では129話(※変更の可能性あり)に登場予定:ハイマ国騎士団騎兵部隊最速の男ロニ・ダ―レン》を見つけた。
「レガード、ロニ。お疲れ様」
私が声をかけると、レガードが爽やかな笑顔で嬉しそうに答えた。
「クローディア様、お声がけありがとうございます」
一方、ロニは、かなり息があがっており、息を整えながら「クローディア様、お声をかけて下さり……あり……がとう……ございます……倒れるかと思いました……」と答えていた。どうやらレガードの訓練は厳しいものだったようだ。
私が二人に声をかけるために立ち止まっていると、エルファンがレガードたちとは違う方向を見て「みんな、ありがとう。お疲れ様」という声をかけていた。
エルファンの声のかけた方を見ると、辺境伯の屋敷で働く男性たちが、汗を流しながら懸命に白い綿に似た素材の植物を桶の中で踏んでいた。そして、その横には大量の綿のような物が積み上がっている。
私は不思議に思ってエルファンに尋ねた。
「ねぇ、エルファン。あれは、何をしているの?」
私の素朴な疑問にエルファンは丁寧に答えてくれた。
「クローディア様。あれは、たわという植物なのですが、あの植物を踏んだり、袋に入れて投げたりして潰しているのです。え~~と、実際に見た方がいいかな。ちょっと待っててくださいね」
エルファンは、植物を踏みながら作業をしている人たちの所に行くと、何かを持って来てくれた。
「これを作っているのです」
私は、エルファンに渡された物を見て驚いてしまった。柔らかいのに弾力があるこの感触に私は覚えがあった。
――これって、低反発素材に似てる!!
どうやらこのたわという植物を潰すと、低反発クッションのような素材が出来るようだった。
「あのふわふわした植物を潰すとこんな風になるのね!! これ……色々使えそうね」
私の言葉にエルファンは嬉しそうに頷きながら言った。
「この素材の価値がお分かりになるのですか?! さすがクローディア様!! そうなのです。この素材はとても役に立ちます。でも、潰し過ぎると弾力が無くなり、足りないと綿ようにふわふわなままで……なかなか加減が難しくて、人の手で潰すしか方法がなく、数があまり出来ないのです」
私は、近くに干してある数十個の袋を見ながら言った。
「ねぇ、エルファン。この袋の中にあのたわを入れて投げても同じようになるの?」
エルファンは大きく頷きながら言った。
「そうです。踏むのが疲れたら、たわを袋に入れて地面に投げつけたりして、潰します」
たわは、まるで綿花のように柔らかさだ。それを袋に入れたら、きっと少し大きめの枕のような形になるだろう。
そうまさしく枕だ……。
この袋を投げる?
私の頭にはあの有名な光景が浮かんだ。
これって――。
私は一緒にいたみんなを見ながら言った。
「ねぇ、みんな、枕投げ……しない?」
「枕投げ???」
――みんなで枕投げ……それは禁断の蜜のような響きを持つ背徳感に溢れた遊び。
みんなでやりたいと思ってもなかなか許されることがない禁断の遊びだ。
だが、今、その枕投げをすることが、お世話になっている人に恩を返すことに繋がるのだ。
つまり!!
あの、禁断の遊び――枕投げを推奨されている!!
こんなシチュエーションを用意されたら……やるよね?
私は上機嫌で、首を傾ける皆に、簡単に枕投げの説明したのだった。
◆
「確かに合理的ですね。袋を投げ合って、この反発する素材になれば、お世話になっているお礼にもなりますし、鍛錬にもなるかもしれませんね」
ジーニアスが真っ先に私の意図を理解して頷いてくれた。
「ですが、いくら柔らかな素材を使ったとしても、クローディア様にそんな危険な事をさせるなんて……」
アドラーが眉を寄せながら言った。すると、ラウルが少し考えて口を開いた。
「では、クローディア様は審判をされてはいかがですか? 最終的に相手の陣地に枕を全て投げ入れるか、寝たくなるほど疲れた時点で終了なのですよね?」
ラウルの説明は、的を得てわかりやすい説明だった。
私は枕投げの経験がない。だから、おぼろげなイメージしかなかったので、ラウルが私のぼんやりとした言葉で枕投げを理解してくれて助かった。
もしかしたら、正式な枕投げのルールが存在しているのかもしれないが、生憎と私はそのルールを知らなかったので。今回は、枕がどちらか一方に全部投げ込まれたら終わり、というわかりやすいルールに乗っ取り枕投げを行うことにした。
「そうよ!!」
私が同意すると、ガルドがあっさりと頷いて私を見ながら慈愛に満ちた瞳を向けながら言った。
「ああ、なるほど。枕を相手の陣に入れればいいのですね。ん……それなら、退屈かもしれませんが、クローディア様は審判をされた方が良いでしょうね。エルファン殿も見ていてくださいね」
本音を言えば私も枕投げに参戦したかったが、雰囲気を味わえるだけでもいいと思うことにした。エルファンも頷いてくれた。
「わかった! それなら私が審判をするわ。早速、袋にたわを入れましょう!!」
「はい!」
こうして、私たちは十五個ほど用意してあった枕より少し大きい袋の中に全てのたわを詰めると、地面に線を引いて、両方に半分ずつくらい置いた。
「それじゃあ、チームを決めましょう!!」
私たちがチームを決めようとしていると、書庫から出て来たレオンとブラッドとレイヴィンが通りかかった。
そして、私たちを見てレオンが不思議そうに言った。
『クローディア、朝から何をしているんだ? その地面に書いてある線と、置いてあるものはなんだ?』
レオンの問いかけに私は枕投げをすることになった経緯と、内容を説明したのだった。
◆
説明を終えると、ずっと黙っていたレイヴィンの身体がゆらりと揺れた。
「素晴らしい!! 素晴らしいです、クローディア様!! 辺境伯の恩に報いるためにも、ぜひ私も参戦させてください。そして、私は、ぜひとも死神に攻撃……いえ、ガルド殿とは違うチームになりたいです。死神……ガルド殿を……私の枕で……寝かせます!!」
レイヴィンが、狂ったように笑った後に、ガルドを見ながら言った。
ど、どうしよう!!
怖い、怖い。
あれ? これ、枕投げの話だよね?
なんか、寝かせるに沈めるって、不穏な送り仮名見えなかった??
どうやら、先ほど私が言った枕投げの本来の目的である『枕投げは、最終的には疲れて眠くなるのを目標にしている気がする』という言葉がレイヴィンには間違った解釈で伝わったようだ。急いで否定しようとすると、ラウルが慌てて声を上げた。
「レイヴィン殿、悪いがそれはあきらめてくれ。……ガルド殿を、寝かせるのは、私だ」
ラウルまで、ガルドを枕を当てて不穏な送り仮名をつけて寝かせるって言ってる?!
あれ?
でも寝かせるって……なんだか、本来の枕投げの趣旨で合っているような……?
これで正解?
「では、私もぜひ、ガルド殿に正面から挑みたいです!!」
レガードも闘志を燃やしながら言い放った。
参謀、副団長、若手の実力者から挑戦を受けたガルドは困ったように笑いながら言った。
「枕投げ……やったことはないですが……恩返しにも、訓練にもなりそうですから、私もできるだけのことはいたします。ご期待に答えて、私も三人を寝かせるつもりでやりましょう」
レイヴィンが怖いくらいに笑いながら言った。
「ふっはは、面白い!! スカーピリナ国参謀の名にかけて――死神を絶対に寝かしつける!!」
枕投げに参謀の名をかけっちゃったよ、それでいいの?!
レイヴィン~~!!
君、大丈夫?!
君の上司すぐ近くにいるけど、枕投げに参謀の名をかけちゃって、叱られない??
私がレイヴィンを心配していると、彼の上司であるレオンがアドラーに通訳して貰った後に言った。
『あはは、随分と敵が多いな、死神。では私はお前のチームに入ろう。おい、側近。お前がいないと言葉がわからない。俺のチームに入れ!』
私は思わずレオンを二度見した。
え?
レオンも参戦するの?
あれ、あなた様は、スカーピリナ国の王様ですよね~~?!
枕投げに参戦しちゃうんですかぁ~~?!
しかも、アドラーを強引に仲間に引き入れたし!!
アドラーは、眼鏡を上げると小さく息を吐きながら言った。
「仕方ありませんね……では、リリアはクローディア様と……」
アドラーの言葉を聞いたリリアは一度目を閉じた後に、再びゆっくりと目を開きながら言った。
「いえ、いい機会です。剣ではまだまだお兄様には敵いませんが、スピードなら私も負けません!! 私はお兄様と対峙します!! 必ずや枕を全てそちらの陣地に投げ入れて見せますわ!!」
リリアもどうやら参戦するようで、やる気に満ち溢れていた。
枕投げ、やっぱりすごい!
アドラーは、じっとリリアを見た後に凛々しい顔で言った。
「リリア……わかった。……受けて立とう!」
リリアの言葉を聞いたロニが、「確かにスピードなら、レガードにも勝てるかもしないな……」と呟くと、アドラーの方に入った。
「私は、こちらのチームに入ります。副団長、レガード。速さでは、負けません!」
火花が飛び散る中、ジーニアスは枕をじっと観察していた。
「ジーニアスさん、どうしました?」
ヒューゴの問いかけに、ジーニアスが顔を上げて答えた。
「いえ、先ほどの素材。確かに貴重な物です。踏んだり投げたりする以外に効率的な生産方法がないものかと考えておりました」
ジーニアスの言葉に、ヒューゴが「なるほど」と言うと、少し考えた後に言った。
「では、クローディア様のおっしゃるように枕投げという新しい方法を試してみるのはいいのではありませんか? 問題点や改善点が見つかれば、効率化につながるかもしれませんよ?」
ヒューゴの言葉にジーニアスも頷いた。
「そうですね。では、私はこちらのチームに入ります」
ジーニアスはガルドの側に立っていたので、ガルドのチームを選んだ。
「では、私は人数が合うようにあちらに入りましょう」
ヒューゴは、ジーニアスと反対のラウルのチームに入った。
みんながチームに分かれると、ブラッドが私の隣に歩いて来て、いつもより近い距離で立ち止まった。
「ブラッドは入らないの?」
ブラッドを見上げて尋ねると、ブラッドが飄々とした態度で答えた。
「ああ。あなたに何かあった時、守る役も必要だろう。それに人数も丁度いいからな……」
確かに、人数も五対五で丁度いい。
それに私だけここで見ているのは少しだけ寂しかったので、ブラッドも参加しないと聞いて仲間が出来た気がした。
「じゃあ、ブラッド!! 一緒に判定手伝ってね!! それでは、枕投げよ~~い、始め~~~!!」
こうしてガルド、レオン、アドラー、ロニ、ジーニアスチームと、レイヴィン、ラウル、レガード、リリア、ヒューゴチームで辺境伯のお手伝いのために、枕投げが始まったのだった。
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