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19 新たな刀
しおりを挟むシュッシュッシュッ。
刀を研ぐ音と、時折聞こえてくる鳥の声を聞きながら鉄は刀を研いでいた。
だがその静寂は長くは続かなかった。
ガラッ!!!
激しく表戸が開いた。
「鉄~~~!!!」
誰が来たのか見なくても鉄には入ってきた人物がわかった。
(やれやれ。今日も息災のようで、なによりだな・・。)
鉄は深く溜息をついた。
「おい!!宗!!もっと、丁寧に開けろって、いつも言ってるだろ?!
また表戸が壊れるじゃねぇか!!」
折角、源に立派な表戸を作って貰ったのだ。
また家を壊されるのは勘弁してほしい。
「ああ。悪い。悪い。」
宗が、頭を掻きながら答えた。
その姿を見た鉄は、小さく溜息をついた。
鉄に謝罪をした宗は、待合場にいる八助に視線を移した。
「ああ、八っさん!! 久しいな。息災だったか?」
宗は待合場に、どかりと座った。
「あはは!! この通りまだ生きてるな!! 宗こそ鎌倉殿の側仕えをしているって聞いてるが、しっかりやってるのか?」
「無論だ!!」
久ぶりに会ったという宗と八助は話に花を咲かせていたので、鉄は八助の刀を一気に仕上げた。
刀を研ぎ終わり、鉄は「ふぅ~」と息を吐いた。
(八っさんをしっかりと守ってくれよ!)
鉄は刀を持つと立ち上がり、八助の方に歩いてきた。
すると宗も八助も話をやめて鉄の方を見た。
「八っさん、終わったぞ。確認してくれ」
「ああ」
八助は丁寧に刀を受け取ると鉄が研いだばかりの刃先を眺めた。
「……別嬪になったもんだ」
そう呟いて頬を緩めた。
鉄は土間に腰かけると目を細めた。
「どうだ? 不便はないか?」
八助は立ち上がると人のいないところで刀をかまえた。
「ああ。相変わらず手に馴染む」
八助は嬉しそうな顔をすると、刀を鞘に仕舞った。
「これでもう一仕事出来そうだ。
じゃあな、鉄。宗も久しぶりに会えてよかったよ」
「俺もだ!! 八っさんも気を付けてな!!」
「ああ!! ありがとよ。宗も死ぬなよ」
八助は去り際に、鉄に宋銭を手渡した。
「鉄、また来る」
「ああ。待ってる」
鉄が真剣な顔で八助に告げると八助がまた笑った。
「鉄にそう言われちまうと、おちおち極楽にも行けねぇわな~~。
またな、鉄。宗」
「また」
「八っさん、またな~~~」
鉄と宗が見送る中、八助は足早に鉄の家を後にした。
「八っさん、随分と忙しいみたいだな……」
「そうみたいだな……それはそうと、腰の刀はなんだ?」
宗の呟きに鉄が答えた後、鉄は宗の腰にある見覚えのない刀に目をやった。
「おお~~!! さすがは鉄だな!! よく気が付いたな!!
実は今日はこれを見てほしくて持って来たんだよ!!」
鉄は頭に巻いていた手拭いを取るとガシガシと頭を掻いた。
「ああ、まぁ、刀を見てくれと言われれば見るけどな?
ちょっと裏で顔洗ってくるから、先に入って待っててくれ」
「おう!!」
鉄は伸びをすると裏の湧き水に向かった。
(はぁ~どうせ厄介な刀なんだろうしな)
なんとなくだが、宗があんな風に持ってくる刀はいわくつきの刀であることが多い気がする。
鉄は気合を入れるために、腰を曲げて頭ごと湧き水の流れ口に入れて顔を洗った。
「ふぃ~」
鉄は手拭いで顔と頭をゴシゴシと拭くと、宗の待つ家の中へと向かったのだった。
◇ ◇ ◇
家に入ると宗は、白湯の準備をして鉄を待っていた。
「ああ、すまねぇな」
「ああ!! 俺も喉が乾いてたんでな」
鉄は宗の入れてくれた白湯を口に含むと、宗が座っている土間に並んで座った。
「それで? 刀ってのは?」
鉄が宗の顔を覗き込むと、宗がニヤリと笑って鉄に刀を差し出した。
「これだ!!」
「お、おお……」
あまりにも楽しそうな宗の雰囲気にたじろぎながらも鉄は宗から刀を受け取った。
鉄は刀を受け取るとゆっくりと鞘から引く抜き言葉を失った。
(こ……こりゃあ……?!)
―――――――――――――――
生き刻を読んで下さり、ありがとうございます。
来週からは火曜更新となります。
曜日が代わりますが、どうぞよろしくお願い致します。
たぬきち25番
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