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15 刀との相性(2)
しおりを挟む鉄はじっと3人の身体を見ていた。
「ハっさんは、普段何をしてんだ?」
鉄の言葉に八助が顎に手を当てて答えた。
「俺は、よく馬に乗ってんな」
「へぇ~。馬か……」
鉄が八助の刀を見ながら、感心したように言った。
八助の身体は下半身がかなり発達していて背中もしっかりとしていた。
きっと不安定な馬上でバランスを取るためにそれを支える下半身と背中の筋肉が発達したのだろう。
「どうした? 鉄」
宗が弾んだ声で尋ねた。
「いや……八っさんの刀のすり減り方がな……なんていうか変わった減り方だったんだが、これでわかった。
八っさんは下半身のがしっかりしてるから、無茶な体勢でも刀が使えちまうんだな……。
だから八っさんの場合……あんまり鋭利にしちまうとすぐ刀がかけちまう。この刀……これ以上鋭利にならねぇように気をつけなきゃな……」
鉄の呟きに八助は驚いた声を上げた。
「おお? そうなのか? 自分の裸なんて気にしたこともなかったし、脱ぐって言われても半信半疑だったが、これで命拾いするなら脱いだ甲斐があったな」
「俺はどうだ? 鉄?」
今度は虎がそわそわしながら話しかけてきた。
鉄は背の高い虎次郎を見上げながら尋ねた。
「虎は一体何やってんだ?」
「俺は、人の住まなくなった家を壊して……え~~。そうだな……もう使えねぇ木はまきにしたり、ん~~ああ!! 使える木は削ったり磨いたりしてるぞ」
虎次郎が思いだしながら答えた。
きっと家を解体するということには多くの行程があって説明するのは難しいのだろう。
実際は虎次郎の説明よりはるかに多くの行程があるはずだ。
虎次郎は身体が大きいだけではなく、腕も足も全体的に太い。
全身筋肉隆々だと言える。
しかも、虎次郎の利き腕だと思われる左腕はまるで鋼のように見えた。
家を壊したり、壊した家の柱を運んだりしていたらこの身体になるのも頷ける。
「ああ。それでその鎧みたいな身体なのか。
…………虎はもう刀は調達したのか?」
鉄が尋ねると、虎次郎が思い出したように言った。
「それだよ!!! 実は今日はな、それを鉄に相談に来たんだ。
俺は刀のことはからっきしでな?
選べって言われてもよくわかんねぇ~んだよ」
先程までの明るい表情を曇らせて虎次郎が言った。
以前持っていた刀はもう使えない。
それを指摘したのはほかならぬ鉄だった。
鉄としても、絶対に虎次郎を死なせたくはなかったので真剣な顔をした。
「ああ。なるほどな……虎、ちと身体に触るぞ?」
鉄は、あることを思い出して、虎次郎に触れることにした。
「おお!! 触れ!! 触れ!! 遠慮するな」
虎次郎は、ほら触れと身体を鉄に差し出した。
「お、おお」
鉄はなんとなく及び腰になりながらも、ずっと気になっていた利き腕だと思われる左腕から肩にかけてと背中を触った。
(こりゃ~あいつの身体に似てんな……)
鉄の頭に京にいた時によく鉄を尋ねてきていた常連客のことが浮かんだ。
そいつは不敬極まりないヤツで、よく鉄を肩にヒョイと担いでいたので、鉄はその常連客の身体は見たことはないが感触は知っていたのだ。
「ん~~~」
鉄は眉を寄せながら考えた。
「どうした?」
不安そうな虎次郎に向かって鉄は言った。
「なぁ? 虎……槍ってのはどうだ?」
「槍?」
虎次郎が片眉を上げて驚いた。
どうやら、虎次郎の武器の選択の中に槍という選択肢はなかったのだろう。
鉄は話を続けた。
「ああ。槍ってのは面白い武器でよ。
長さと勢いを生かして、力のない者でもそれなりに闘えたりするんだが、力のあるヤツの使う槍は直接も闘えるし、少し距離をとっても闘えるし、もし虎のような力を持った人間が使えば、まるで弓矢のように遠距離攻撃もできる。1人はもちろんだが、少々の人数に囲まれても虎の腕力でなぎ倒せると思うんだよな~~~。
まさに虎が持てば鬼に金棒ってなもんだ」
「お? そうなのか? そんなにすげぇ武器なのか? 槍ってのは!!」
「ああ。まぁ、すげぇ武器になるかどうかは、人にもよるがな……。
あと、薙刀てのもあるが……虎は利き腕が異様に発達しているからな~~。
これを生かして弓矢のように槍を使って遠距離攻撃できたら、身をまもれるんじゃねぇかと思うんだよな~~~。」
鉄の言葉に虎次郎の顔が明るくなった。
「おお!! それはいいな!!
それなら、俺は刀より槍の方がいいかもな」
「ああ。おそらくだが……虎と刀の相性はよくないと思うぞ?
刀ってのはもちろん力も大事だけどな……力任せってのはこれまたダメな代物なんだよ」
鉄の言葉に八助が目を大きく開けて言った。
「武器に相性があんのか……。
考えたこともなかった…」
鉄は「はは」と笑った。
「そりゃあ~あるさ。
八っさんも刀もいいとは思うが、薙刀が向いてそうだしな。
訓練っての試せるならどっちか試してみてもいいんじゃねぇかと思う。
馬との相性がいいなら、相手の間合を取れる薙刀の方が便利だしな」
八助が真剣な顔で頷いた。
「明日の稽古で早速薙刀試してみるか!!」
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