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8 研師の溜息(2)
しおりを挟む鉄はまず、虎の抜けない刀を抜いて見ることにした。
鯉口は切れるのに抜けないということは内部に問題があるのだろう。
(鞘を解体するか……)
鉄は鞘を解体して刀を鞘から取り出した。
(こりゃ~~ひでぇ!!)
鉄は虎の刀を見て頭を抱えた。
刃はボロボロで、朽ち果てている。
鉄は刀を置くと息を吐いた。
(この刀はもう……)
強度もなければ、刃もボロボロ。
研いだところで、刃先が無くなるだけだろう。
(元には戻らないなぁ、こりゃ~~)
鉄は虎の刀を研ぎ、見極めることにした。
バタン!!
ドーーーーン!!
「なんだ?」
刀を研いでいると大きな音がして、鉄は慌てて表戸の入口から外に飛び出した。
鉄が表に行くと、宗が木を切り倒したところだった。
「何やってんだ? 木なら用意してあっただろ?」
鉄の言葉に宗が頭を掻きながら言った。
「悪い……あれはもう使えない」
「え?」
鉄は宗が指を差している方に目を向けた。
そこには鉄が表戸を作るために木材を用意していた辺りだった。
「おい!! 宗!! これは何があったんだ?!」
鉄はその場の惨状を見て頭を抱えた。
表戸を作るように準備していた木材は割れたり、折れたり無残な様子になっていた。
「ははは……悪い。なぜだか壊れてちまって……」
宗は申し訳なさそうに頭を掻いた。
鉄は目を細めた。
そしてじっと宗を見つめた。
「宗……」
宗はゴクリと息を飲んだ。
鉄はさらに宗に近づき、宗の顔の近くに顔を寄せた。
「宗は……不器用だな」
すると鉄は割れたり折れたりした板を片付け出した。
「は? え? 怒鳴ったり、殴ったりしないのか? 材料がダメになったんだぞ?」
宗がオロオロしたように尋ねた。
「怒鳴られたり、殴られたりしたいのか?」
鉄が板を持ちながら首を傾げた。
「まさか!! でも、何も言われないのも落ち着かない」
宗の言葉に鉄が溜息をついた。
「だから、言ってやっただろ?」
「は?」
宗は思わず鉄を見ると、鉄はニヤリと笑った。
「不器用だって」
宗は以前、扉を壊した時のことを思い出した。
確かあの時の鉄は『そうか』としか言わなかった。そして宗に何か言ってくれと言われていた。
だから今回は『不器用』と言ってくれたのだ。
「鉄~~~~それはただの事実だ!! 説教になってないだろ~~~?!」
宗が叫ぶと鉄は眉間に皺を寄せて不機嫌そうに言った。
「事実っての突きつけられるのが一番こたえるだろうよ……人ってのはさ」
鉄はそう言うと、家の中に入って行った。
宗はポカンとした後、もう一度表戸を作り直すことにしたのだった。
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