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最終章 令嬢の新たな時の流れ
7 生誕祭まであと2ヵ月(1)
しおりを挟む「ビアンカ・リョーシュ。貴殿の国への素晴らしい功績を称え、ここに表彰する」
課題を議会で発表してから1ヶ月後。
私の提出した課題が議会で採用されることが決まった。
他にもクリス様とゲオルグ様、ニック様とゴードン様もそれぞれの課題の採用も決まり、私たちは5人で陛下から表彰を受けた。
「今年のメンバーは皆、とても優秀でしたね」
議会の議長からも個人的なお言葉を貰ったし、王妃様も「私も鼻が高いわ」と言って上機嫌だった。その時に王妃様に『今後のために課題をまとめたいので、アルバート殿下の生誕祭まで王妃教育を休みたい』と願ったらすぐに許可を出してくれた。
それだけではなく、王妃様からは、
「実は今回の功績でビアンカちゃんへの議会の評価は最高なの。あなたが王妃に相応しいか、問題なく議会に通るわ。後は卒業後でも問題ないくらいよ。しばらくゆっくり休んで」
という労いのお言葉まで頂いた。
私は複雑な思いで「ありがとうございます」と言ったのだった。
◇
表彰された次の日。
私は殿下の側近のジル様に執務室に呼ばれた。
そして私はなぜ私がここに呼ばれたのか、理由を知っていた。
「ビアンカ様、お呼び立てして申し訳ございません」
頭を下げるジル様に向かって、私は口を開いた。
「いえ、それで用件とは?」
ジル様は本当に申し訳なさそうに言った。
「ビアンカ様、しばらく陛下から回ってくる殿下への書類関係のご公務をお手伝い頂けないでしょうか?」
(やっぱり……)
私は、ジル様にバレないようにため息をついた。
実は来月、陛下と王妃殿下は国を留守にされる。
そしてそれまでの一ヵ月と陛下たちが留守の間は、私とアルバート殿下に公務を担うように依頼されるが、ジル様は全てを私にお願いするのだ。
(前回は、アルバート殿下も帝王学でお忙しいと思っていたから引き受けたけれど……いつまでも私に頼っているわけにはいかないわよね……)
私はジル様を見ながら言った。
「ジル様、私がお受けするのは構いません。ですが、今、アルバート殿下がご公務を覚えなければ、後に苦労されるのはアルバート殿下ですわ。今回陛下から依頼されるものは難しいものはなく基本的な内容のものだけ……どうかこの機会にアルバート殿下にご公務を覚えて頂きたく存じます」
私はアルバート殿下に婚約破棄をされるのだ。
だが、それはもういいのだ。
でも、私と婚約破棄をした後に、苦労するのは殿下なのだ。
以前、私がすべて終わらせたが、本当に基本的な内容ばかりだった。陛下や陛下の側近がアルバート殿下の成長のために厳選してくれたのがよくわかる内容だった。
私の言葉を聞いたジル様は汗を拭きながら言った。
「ですが、担当文官の方も全てをビアンカ様にお伝えしてあるので、現段階ではビアンカ様にお願いして、卒業にゆっくりと殿下への指導を行うと……」
確かに私はすでに文官から、書類関係のご公務の内容の見方や書き方など全て教わった。きっと文官は王妃教育の進みが早い私に教えたのだろう。
私だってきっとアルバート殿下に一から教えるよりも、自分で全部した方が楽だとは思う。
だが……
「ジル様、明日から私がアルバート殿下に私の文官に教わった全てをお教えいたしますわ」
私はもう今後、殿下の隣を歩くことはない。
それは確定してる未来だ。
だが、私が一度公務の説明を受けてしまっている以上、私が婚約破棄をされた後に呼び出されて、アルバート殿下を指導しろと言われてたらどうなるだろう?
アルバート殿下は婚約破棄を言い出した相手に、私は婚約破棄をされた相手に教えることになる。
今以上に私はアルバート殿下とは関わりたくないだろうし、きっと殿下もそうだろう。
それなら、今が一番いい。
私の提案を聞いたジル様がさらに眉を下げながら言った。
「……ビアンカ様のおっしゃることもわかります。……ですが、現在、アルバート殿下は宰相閣下の監視下で帝王学の予定を組まれて進めておりまして……」
そういえば、ギルバート様はバスロ伯爵領で殿下の振る舞いを見て帝王学に力を入れることを決められた。
「わかりました。私がこれから宰相閣下とお話をしてみます。こちらも急務ですので」
私が立ち上がろうとするとジル様は真剣な顔で言った。
「なぜそれほどまでに殿下にさせようとされるのですが? これまでだって、ビアンカ様は殿下のご公務を代わりに請け負って下さったではありませんか? お言葉ですが、アルバート殿下に一から物を教えるなど、膨大な時間と労力がかかります。ビアンカ様がやった方が絶対に早くて手間がありません!!」
たぶんそれはその通りだろう。
私が自分でやった方が早くて、手間がかからないだろう。
これまでは周囲も私もどこかのんびりと構えていた。
卒業したら、ゆっくり覚えてくれるだろう。
そのうち覚えてくれるだろう。
だが……私がこの立場で彼に何かを伝えられるリミットはあとたった2ヶ月しかないのだ。
もう、これ以上、後回しには出来ない。
私はジル様を見ながら答えた。
「そうですね……あえていうのであれば……これが私の『愛』……でしょうか?」
アルバート殿下やツェツィーリアの口にする『愛』と、私の『愛』は根本的に違う。
私ずっと『殿下のために』、という思いを『愛』だと思っていた。
だから自己満足だが婚約破棄をされる前に、私の持っている殿下への『愛』である公務の知識を全て本来の持ち主である彼に返してお別れをしたい。
「……え?」
ジル様は唖然としながら私を見ていた。
そして次の瞬間破顔した。
「ビアンカ様、アルバート殿下への深い愛に感謝いたします」
どうやら、ジル様には私の愛は理解してもらえたようだった。
(肝心のアルバート殿下には全く伝わらなかったけど……)
私はジル様にあいさつをした。
「ではいってまいります」
そして私は、すぐに宰相の執務室に向かった。
◇
お城の北側にある宰相の執務室に付き、護衛の騎士に「ギルバート様にお会いしたい」と伝えた。
するとしばらくして、宰相の執務室の隣の部屋からギルバート様が出て来た。
「ビアンカ様、どうされたのですか?」
驚くギルバート様に私は真っすぐに彼を見ながら言った。
「ギルバート様にお願いがあります」
「とにかくどうぞ」
それから、私は部屋に入るとギルバート様にアルバート殿下に私の持っている公務の知識を伝えたいということを話した。
「公務を全てビアンカ様が……」
ギルバート様はそのことを知らなかったようで、とても驚いた後に言った。
「わかりました。そちらを優先して下さい。私もこれからは殿下のご公務の進捗状況の確認に伺いましょう」
「え? よろしいのですか?」
ギルバート様は深く頷き真剣な顔で言った。
「はい。全力であなたをサポートいたします」
こうして私は殿下に書類仕事などの公務を教えることになったのだった。
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