悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番

文字の大きさ
上 下
46 / 50
アイク ルート(先生ルート)

Ⅴ 偶然ですね……

しおりを挟む

 次の日の放課後……

 アレク先生の部屋で、ルジェク王子が集計の結果を見ながら呟いた。

「まさか……こんな結果になるなど……」

 生徒からの希望を集めた結果、演劇が一番表を集めた。
 しかもルジェク王子や兄やカイル様やダイアン様、クレアさんになんと私にまで出演希望が来た。

 特に、ルジェク王子とクレアさんのダンスはみんなが鑑賞できるような場で披露されたわけではないので、『ぜひ演劇の中で踊ってほしい』という要望が多かった。

 ルジェク王子はみんなの顔を見ながら言った。

「恐らくこんな機会でもなければ、一生演劇をする機会などだろう。皆、やってみないか?」

 ルジェク王子の言葉にみんなが頷いた。
 決まったらすぐにダイアンが口を開いた。

「では、私は図書館で脚本を探してきましょう」

 私は、どうしてもやりたいことがあったのですぐに声を上げた。

「はい!! 私にみんなの髪型と化粧と衣装を任せて下さい!!」

 私は燃えていた。
 いや……正確には萌えていた。

 だって!!
 こんなイケメンと美少女に好みの服を着せて、好きに化粧ができるのだ。
 こんなチャンス二度とない!!

 幸い私の家はかなりリッチな公爵家!!
 ちなみに私の月々のお小遣いは膨大。
 でも、使い道がほとんどないので毎月貯めている。
 今、使わずにいつ使うというのだ!!

 公爵家令嬢に転生してハッピー!!

「では私もフォルトナを手伝おう」

 兄も頷き、みんなの了解を得て私は無事にみんなの衣装とヘアメイク係になったのだった。

 こうして私たちは演劇をすることが決まったのだった。





 そして週末。

「な、なぜそこにコルネリウスがいるのだ!?」

 私は予定通りルジェク王子とオペラを見に行くと、入り口に兄が立っていた。

「これは、ルジェク王子殿下。ごきげんよう。ここにいるのです。オペラを楽しむために決まっているではありませんか……」

 優雅に笑う兄が怖すぎる。
 またしても、ルジェク王子殿下は兄との会話に盛り上がりを見せていた。
 退屈だった私は、周囲を見渡すと、アイク先生が落ち着いた雰囲気の花束を持ってやってきた。

 アイク先生だ……

 私は静かに二人から離れると、アイク先生の元に向かった。

「きげんようアイク先生」

 アイク先生は嬉しそうに微笑みながら言った。

「これは、フォルトナ様。こんにちは」

「お一人ですか?」

「は、はい。実は教え子が本日、初舞台を踏むというので見に来ました」

 アイク先生がとても嬉しそうに笑うので私まで自然と笑顔になる。

「まぁ、それはおめでとうございます」

「ありがとうございます。これからあいさつに行こうかと……ですが、緊張しています」

 私はアイク先生に尋ねた。

「私もご一緒してもよろしいでしょうか?」

「え? あ、嬉しいです。緊張していたので……ですが、フォルトナ様はよろしいのですか?」

 私はチラリと二人を見た。
 まだまだ話が盛り上がっている。

「離れることを伝えて参りますわ」

 そして私は二人の元に行くと、「少し失礼します」と言った。
 ルジェク王子殿下も兄もお手洗いだと思ったようで「ゆっくりで構わない」と言った。

「お待たせいたしました~~」

「では行きましょうか」

「はい」

 私はアイク先生と楽屋に向かった。







「先生来て下さってありがとうございます!!」

 先生と一緒に会いに行くと、とても美しい顔の男性が出て来た。

 この世界、イケメン度が高すぎる……

 私が眩しいと思っていると、アイク先生が花束を渡して言った。

「楽しみにしていますね」

「はい!!」

 ……え?

 アイク先生が彼と言葉を交わしたのはそれだけだった。
 そして男性は私を見て驚いたように声を上げた。

「え? フォルトナ様!? どなたかとお約束ですか?」

「いえ、アイク先生が楽屋に行かれるということでご一緒いたしました」

「あ、本日はロイヤルボックス席にお客様がお見えになると座長がおっしゃっておりましたが、ルジェク王子殿下とフォルトナ様でしたか……お会い出来て光栄です。お楽しみ下さいませ」

「ええ、ありがとうございます。初舞台、楽しみにしています」

「はい!! ありがとうございます」

 その後すぐに私たちは楽屋を去った。先生より、私の方が彼と長く話をしたように思う。
 先生はほとんど話をしていない。

「先生、よかったのですか?」

「はい」

 私はなんとなく不思議に思った。
 その後先生は自分の席に行き、私は先生と別れた。

「フォルトナ、行きましょう」

 ようやく兄と別れてルジェク王子殿下と席に座ると、私たちはぎょっとした。
 私たちの席からよく見える位置に兄がいた。
 兄はオペラグラスを持って私と目が合うと、嬉しそうに手を振っていた。
 私も兄に手を振り返した。

「コルネリウス、私たちを監視するつもりか!?」

 私は、会場の豪華さに圧倒されていた。
 そして客席を見ると、アイク先生を見つけた。
 男女で来ている人々が多い中、男性一人で座る先生はある意味目立っていた。
 しかし、先生はそんなことを気にする素振りもなく、キラキラした瞳で舞台を見つめていた。

 私はなぜかそんな先生から目が離せなかったのだった。



しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

魔力なしの役立たずだと婚約破棄されました

編端みどり
恋愛
魔力の高い家系で、当然魔力が高いと思われていたエルザは、魔力測定でまさかの魔力無しになってしまう。 即、婚約破棄され、家からも勘当された。 だが、エルザを捨てた奴らは知らなかった。 魔力無しに備わる特殊能力によって、自分達が助けられていた事を。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

処理中です...