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アイク ルート(先生ルート)
Ⅴ 偶然ですね……
しおりを挟む次の日の放課後……
アレク先生の部屋で、ルジェク王子が集計の結果を見ながら呟いた。
「まさか……こんな結果になるなど……」
生徒からの希望を集めた結果、演劇が一番表を集めた。
しかもルジェク王子や兄やカイル様やダイアン様、クレアさんになんと私にまで出演希望が来た。
特に、ルジェク王子とクレアさんのダンスはみんなが鑑賞できるような場で披露されたわけではないので、『ぜひ演劇の中で踊ってほしい』という要望が多かった。
ルジェク王子はみんなの顔を見ながら言った。
「恐らくこんな機会でもなければ、一生演劇をする機会などだろう。皆、やってみないか?」
ルジェク王子の言葉にみんなが頷いた。
決まったらすぐにダイアンが口を開いた。
「では、私は図書館で脚本を探してきましょう」
私は、どうしてもやりたいことがあったのですぐに声を上げた。
「はい!! 私にみんなの髪型と化粧と衣装を任せて下さい!!」
私は燃えていた。
いや……正確には萌えていた。
だって!!
こんなイケメンと美少女に好みの服を着せて、好きに化粧ができるのだ。
こんなチャンス二度とない!!
幸い私の家はかなりリッチな公爵家!!
ちなみに私の月々のお小遣いは膨大。
でも、使い道がほとんどないので毎月貯めている。
今、使わずにいつ使うというのだ!!
公爵家令嬢に転生してハッピー!!
「では私もフォルトナを手伝おう」
兄も頷き、みんなの了解を得て私は無事にみんなの衣装とヘアメイク係になったのだった。
こうして私たちは演劇をすることが決まったのだった。
◇
そして週末。
「な、なぜそこにコルネリウスがいるのだ!?」
私は予定通りルジェク王子とオペラを見に行くと、入り口に兄が立っていた。
「これは、ルジェク王子殿下。ごきげんよう。ここにいるのです。オペラを楽しむために決まっているではありませんか……」
優雅に笑う兄が怖すぎる。
またしても、ルジェク王子殿下は兄との会話に盛り上がりを見せていた。
退屈だった私は、周囲を見渡すと、アイク先生が落ち着いた雰囲気の花束を持ってやってきた。
アイク先生だ……
私は静かに二人から離れると、アイク先生の元に向かった。
「きげんようアイク先生」
アイク先生は嬉しそうに微笑みながら言った。
「これは、フォルトナ様。こんにちは」
「お一人ですか?」
「は、はい。実は教え子が本日、初舞台を踏むというので見に来ました」
アイク先生がとても嬉しそうに笑うので私まで自然と笑顔になる。
「まぁ、それはおめでとうございます」
「ありがとうございます。これからあいさつに行こうかと……ですが、緊張しています」
私はアイク先生に尋ねた。
「私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
「え? あ、嬉しいです。緊張していたので……ですが、フォルトナ様はよろしいのですか?」
私はチラリと二人を見た。
まだまだ話が盛り上がっている。
「離れることを伝えて参りますわ」
そして私は二人の元に行くと、「少し失礼します」と言った。
ルジェク王子殿下も兄もお手洗いだと思ったようで「ゆっくりで構わない」と言った。
「お待たせいたしました~~」
「では行きましょうか」
「はい」
私はアイク先生と楽屋に向かった。
◇
「先生来て下さってありがとうございます!!」
先生と一緒に会いに行くと、とても美しい顔の男性が出て来た。
この世界、イケメン度が高すぎる……
私が眩しいと思っていると、アイク先生が花束を渡して言った。
「楽しみにしていますね」
「はい!!」
……え?
アイク先生が彼と言葉を交わしたのはそれだけだった。
そして男性は私を見て驚いたように声を上げた。
「え? フォルトナ様!? どなたかとお約束ですか?」
「いえ、アイク先生が楽屋に行かれるということでご一緒いたしました」
「あ、本日はロイヤルボックス席にお客様がお見えになると座長がおっしゃっておりましたが、ルジェク王子殿下とフォルトナ様でしたか……お会い出来て光栄です。お楽しみ下さいませ」
「ええ、ありがとうございます。初舞台、楽しみにしています」
「はい!! ありがとうございます」
その後すぐに私たちは楽屋を去った。先生より、私の方が彼と長く話をしたように思う。
先生はほとんど話をしていない。
「先生、よかったのですか?」
「はい」
私はなんとなく不思議に思った。
その後先生は自分の席に行き、私は先生と別れた。
「フォルトナ、行きましょう」
ようやく兄と別れてルジェク王子殿下と席に座ると、私たちはぎょっとした。
私たちの席からよく見える位置に兄がいた。
兄はオペラグラスを持って私と目が合うと、嬉しそうに手を振っていた。
私も兄に手を振り返した。
「コルネリウス、私たちを監視するつもりか!?」
私は、会場の豪華さに圧倒されていた。
そして客席を見ると、アイク先生を見つけた。
男女で来ている人々が多い中、男性一人で座る先生はある意味目立っていた。
しかし、先生はそんなことを気にする素振りもなく、キラキラした瞳で舞台を見つめていた。
私はなぜかそんな先生から目が離せなかったのだった。
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