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アイク ルート(先生ルート)

Ⅱ 素晴らしき……会?

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 私はアイク先生の隣の席に座った。

「今は何をされているのですか?」

 手元を覗き込むとアイク先生が焦ったように言った。

「は、はい。王都内に生徒が安全に楽しめる場所はどこかあるのかを調査しておりました」

 調査!?
 え、そんなとこから?
 例年通りの場所とかないの??

 私は途方もない作業に頭を抱えた。

「アイク先生。例年訪れる場所などはないのですか?」

 私の問いかけにアイク先生が困ったように言った。

「あるのですが……なんでも湖の周りの遊歩道を整備して貴族の方々の保養地にしようと地面を掘ったところ……そこから温泉が噴き出したそうで……現在立ち入り禁止になっております」

 うわ~~ラッキー!!
 でもアイク先生にとってはアンラッキー!!

「なるほど……それで一から場所を探しているのですね」

 アイク先生は困ったように言った。

「はい。それに例年、生徒の皆様から『もっと有意義な時間を過ごしたい』との苦情が……内容も考える必要があります」

 私はアイク先生に尋ねた。

「ちなみに例年何をされているのですか?」

「自然観察です……」

「自然観察……」

 あ……それは好きな人には刺さるかもしれないけど、多くの人がどう楽しんでいいのかわからないかもな……

「数年前は音楽鑑賞などもあったのですが……以前途中で雨が降って楽器が全滅したことがありまして……屋根が近くにない場所での演奏会を引き受けて頂けなくなりました……」

 うわ……楽器……高そうだしな……屋外なら屋根ないよな~~

 私は少し考えながら言った。

「アイク先生、生徒会に協力を依頼したらよいのではありませんか?」

 アイク先生は首を傾けた。

「生徒会? もしかして他国ではそのようなものがあるのですか?」

 もしかして生徒会がないの~~~!?
 マジか……!!
 学生の時は大変そうだと思ったけど……なければないで、自然観察会をするという感じになったのか……
 生徒会のある場所で育ってよかったな……

 生徒会のない世界に来て始めて生徒会の素晴らしさを感じていると、クレアさんが近づいて来た。

「あの、フォルトナ様。どうされたのですか? 皆様図書館に移動されましたが……」

 クレアさんとは時々食事を一緒に摂ったり、こうして女性と男性が別れて授業をする時などは孤独なフォルトナと一緒にいてくれる。

「ああ、クレアさん。実は今、遊戯会の計画を立てるお手伝いをしていたの」

 私が何気なく告げると、クレアさんは両手を口元に当てながら言った。

「フォルトナ様、なんてお優しい!!」

 そして両手の拳を握りしめながら言った。

「ぜひ、私にもお手伝いさせて下さいませ!!」

 私がアイク先生を見るとアイク先生は嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとうございます」

 こうして私たちはマナーの時間の間中、遊戯会の相談をした。



 そして授業が終わる鐘が鳴った。

「ああ、終わってしまいました。フォルトナ様、クレアさんありがとうございました」

 アイク先生がお礼を言ったが、まだまだ何も決まっていない。

「先生は今日の放課後も計画を立てるおつもりですか?」

 私が尋ねるとアイク先生が困ったように笑いながら言った。

「ええ、決まるまではしばらく授業が終わったら計画を立てるつもりです」

 私は少し考えた後に言った。

「放課後、少しだけ残ってお手伝いしてもよろしいでしょうか?」

 放課後は、剣の自主練や図書館を利用する生徒や学生同士で勉強する生徒のために開放されているのだ。

「ええ!? よろしいのですか?」

 私は頷いた。

「はい。まだ全然決まっていませんもの。乗り掛かった舟、途中で投げ出して沈没させるわけにはいきませんわ」

 アイク先生は嬉しそうに微笑みながら言った。

「ありがとうございます。ではお願いします」

 アイク先生の笑顔……可愛い……

 ゲームの中でも、これまでもアイク先生はいつも困った顔をしていた。
 オロオロした顔が通常。
 そんな彼の笑った顔を初めて見た。

 私は思わずアイク先生に見とれて、気が付けば私も笑っていた。

「では、放課後に!!」

「はい」

 気が付けば私は放課後が待ち遠しいと思っていたのだった。







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