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ルジェク ルート(王子ルート)

Ⅰ 自由を手にした(はずの)悪役令嬢

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これより先は、ルジェクルートです。
準備はよろしいでしょうか?







スタートです!!
――――――――――――――――――








 ゲームが終わったら、どうなるのか?
 それは誰にもわからない。

 また、ゲームの結末を歪めてしまったらどうなるのか?
 それもまた、誰にも――わからない。




 私は先日、無事にゲームの当て馬役の悪役令嬢からの卒業を果たし、ルジェク王子との婚約を白紙に戻してもらった。
 まぁ……途中経過は、ゲームの内容とは大幅に変ってしまったが、それでも結果は変わらないので問題ない……はずだ。

 ルジェク王子は、ゲームのシナリオ通りに主人公クレアと文化交流祭に参加したし、婚約を白紙に戻したので、後は私が悪役令嬢として二人の仲を邪魔するように見せかけて、実は二人の仲を深めるために登場しなくとも、自然にルジェク王子とクレアは仲を深めてハッピーエンドを迎えるはずだ。
 これで私は、二人の仲を深めるスパイスである悪役令嬢というボランティア活動から解放され、推しのルジェク王子を教室の隅から眺めたり、年に数回夜会などで遠くから愛でたりという絶妙なポジションを確保した――はずだった。

 そう……。

 私には推しを遠くから愛でつつ、学園生活を満喫しながら、本命の彼氏を見つけるという生活が訪れるはずだったのだ……。

 それなのに!!!

「フォルトナ、司祭からようやく大聖堂のステンドグラスが新しくなったと連絡をもらったのだ。フォルトナは、大聖堂のステンドグラスを楽しみにしていただろう? 一緒に見に行こう!! 放課後は王妃教育もなく時間があるのだろう?」

 私は現在、『今日の昼食はフォルトナと二人だけで食べたい』というルジェク王子に連れられて、学園内でも少し隠れた場所にある、花に囲まれたかなり雰囲気のいいベンチで、ルジェク王子に手を握られていた。
 つまり、ルジェク王子とゼロ距離で、強制イベントが発生しそうな状況だった……。

 あれ? ちゃんとゲーム通りの展開なのに、なぜ強制イベントっぽいデートイベントが発生してるのかな?
 ――意味がわからない!!

 とりあえず、推しのルジェク王子の顔が良すぎて、心臓が早くなりすぎているのでこの状況から解放されたかった。

「ルジェク王子……あの……近いです。それに、確かに王妃教育はなくなりましたが、私にも予定が……あったような……なかったような……気がします」

 私がルジェク王子の余りの美しさに気を失わないように、少し王子から距離を取ろうとしながら言った。
 いつもならこうなる前に、兄がルジェク王子と私の間に入ってくれるが、生憎と兄は、リオン王子と共にガカール国に行っているためしばらく戻らない。
 ここは自分で解決する必要がある。

「そうか、フォルトナにはすでに予定があったのか……」

 ルジェク王子の言葉に私は何度も頷きながら言った。

「そうなのです!!」

 これであきらめてくれるよね?
 
 私が祈るようにルジェク王子を見ていると、ルジェク王子が笑顔で言った。

「では、ステンドグラスは今度にして、今日はフォルトナの予定に付き合おう!!」

 なんで?!
 どうして、そんな結論になっちゃったかな~~?

「いやいやいや、それはいけません!! 私の用事にルジェク王子を巻き込むなんて!!」

 少し『いや』が多かった気がするが、仕方ないのだ。私も必死だった。
 私が首を振ると、ルジェク王子は、私の手を取ったまま、まるで子犬のような瞳を私を向けながら言った。

「フォルトナはこれまでずっと、王妃教育が忙しく、全く一緒に過ごせなかったかっただろう? 私はずっとフォルトナと出掛けたいと思っていたのだ。婚約が白紙になったのは、絶望したが、このような機会でもないと、フォルトナとゆっくりと過ごすこともできない。フォルトナは私と共に過ごすのが不快なのか? もう私は何をしてもフォルトナの心は動かないのか?」

 ええええ~~~?
 どういうこと~~?!
 推しに迫られているのですが……これはどういうバグなの?!
 でも、バグだろうが、なんだろうが、推しに上目遣いで見つめられて、一緒に過ごしたいなんて子犬のような目で見つめられて……断れる?  いや、絶対にム・リ!!
 私は、ルジェク王子を見つめながら言った。

「今日は……旧図書館に行こうと思っておりました。その後でよろしければ、ご一緒いたします」

 私の言葉にルジェク王子は嬉しそうな顔で私髪をさらりと撫で、とろけそうなほど甘い瞳を向けながら言った。

「そうか、では放課後。楽しみにしている」
「……はい」

 私はなぜか、放課後にルジェク王子殿下と一緒に過ごすことになったのだった。



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