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コルネリウス ルート(兄ルート)
Ⅵ 夜会のメリットとリスク(2)
しおりを挟むとりあえず、私は2人に会場に戻るように、やんわりとお願いしてみることにした。
「ルジェク王子殿下。リオン王子殿下。本日の主役であるお2人が、いつまでもこんな所に居ては良くないので、そろそろ会場に戻った方がいいですよ」
するとその言葉を待っていたと言うように、リオン王子殿下が声を上げた。
「そうなのだ!! さすがは、フォルトナだ。私は、フォルトナに2人で会う時間を作ってほしいと願い出ている。この場合、フォルトナが首を縦に振らなければ、私は会場に戻れない!!」
私は、思わずリオン王子殿下をじっと見つめた。
(え? え? 何これ、これって脅し?)
顔に出さずに頭の中で混乱していると、ルジェク王子殿下も困ったように言った。
「ふむ。そうだな。私もフォルトナと2人っきりで話がしたい。以前の私たちは、会話が足りなかった。そうだろう? フォルトナ!」
(このセリフ……元彼から復縁を迫られた時と同じだと?! ……おかしい。国も立場も年齢も顔も何もかも違うのに!! セリフが同じってどういうこと?? どうしてこうなった???)
私が別の意味で混乱していると、リオン王子殿下が何か悪そうなことを閃いたというようにニヤリと笑った。私はその顔を見て、背中が寒くなった。
「フォルトナ、恥ずかしがり屋のフォルトナのために良い考えがある!! 私とのお見合いはダブルお見合いにしよう!」
(ダブルお見合い? 何、そのダブルデートをパクった感満載のイベント?!)
「あの……ダブルお見合いとは……どういう……?」
「私とフォルトナ。そして、私の妹と、フォルトナの兄コルネリウスの同時お見合いだ!!」
私だけじゃなく、兄も……?
「え?」
なぜだろう……リオン王子殿下の妹と言えば、隣国の王族。つまりは、リアルお姫様だ。兄にリアルお姫様とのお見合いに話など、兄妹として祝福するべきことだ。
それなのに私は、まるで石になったように動けなくなった。
私が固まっていると、ルジェク王子殿下も頷きながら言った。
「なるほど……コルネリウスが見合いか……遠回りそうに見えて、そちらの方が話が早そうだな。ふむ。私も全面的にコルネリウスの見合いを支援しよう」
「え?」
思わぬ展開に、私の思考回路は完全に止まってしまった。
――兄が……お見合い?
「これは、コルネリウスのためでもあるのだ。妹なら、兄の幸せを願うべきだろう?」
「兄の……幸せ」
――兄の……幸せ……?
なんとなく毎日側に居て、私を気にかけてくれる兄のことを私はいつの間にか空気のように『自分にとって当たり前』存在になっていた。だが……。
(そうか……。私たち、兄妹だからこんなに一緒にいるのか……。そうか……。そうだよね……)
「では、フォルトナ、この話。コルネリウスのためにも受けてくれるな?」
私は、言葉を出さずに、静かに頷くことで返事をした。
「そうか!! よかった。フォルトナ」
なぜだろう。声を出したいのに出せない。私は自分でも自分のことがわからなくて、思わず声を出さなくなった喉に手を当てたのだった。
――――――――
明日は兄視点です。
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