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コルネリウス ルート(兄ルート)
Ⅰ お見合い相手が決まらない!!
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コルネリウスルート(兄ルート)
↓
↓
↓
スタート
――――――――――――――――――
ここは、セルーン公爵の一室。
穏やかな午後の光が差し込む明るい室内。座り心地抜群のソファーに、最高品質の紅茶。そして、その紅茶に合うように作られた洗練されたお菓子。そんな幸せな空間を絵に描いたような場所で、私と兄にピッタリと寄り添い……非常に――厳しい現実と向き合っていた。
「この方はどうです? 経済力は抜群ですよ」
私は、サイドテーブルの上に山積みになっている、お見合い相手が書かれた釣書を見ながら言った。すると兄が自分の見ていた釣書から顔を上げて、私の持っていた釣書を覗き込みながら真剣な顔をした。
「いいか、フォルトナ。……結婚では、確かに経済力は重要だが、それだけでは、その男から経済力が消えたら、一緒にいる気が失せてしまうだろう?」(※あくまで兄個人の意見です)
兄はまるで悪戯をした子供を聡し、諫めるように言った。私は兄のいうことは最もなので、深く頷いて別の釣書を見せた。
「なるほど……。ではこの方は? 家柄、経済力はそれほど高くはないですが、顔が好みです」
私の見せた釣書を見た兄が眉間にシワを寄せ深い溜息を付いた後に、私の方を向いて、両肩をガッシリと持ちながら言った。
「フォルトナ。……残酷なようだが、一つ重要な――真実を教えてやる」
「残酷な……真実?!」
私は、ゴクリと息を飲んで兄の真剣な瞳を見つめた。そして、兄は十分に間を取った後に言った。
「いいか、フォルトナ。よく……聞け。人は――歳を取るんだ!! 年月は、人の容姿を容赦なく変質させる力を持っているんだ!! 容姿など最も失われる可能性のある物の一つだ!!」(※あくまで兄個人の意見です)
私の前職は美容関係だ。人が歳を取ることなど痛いほど知っている。いつまでも美しい人は影で努力しているのだ。男性だって最近では気にかけている人も多いが、全ての男性が美容について、気にかけているわけではない。
「……!! ……確かに!!」
私たちは顔を見合わせてしばらく固まった後に、また無言で釣書を見た。
そして、またしても私は釣書を兄に見せた。
「ではこの方はどうです? 経済力も容姿も家柄もよくバランスが取れております」
今度は納得してくれると思っていたのに、兄はまたしても残念な生き物をみるような視線を向けながら言った。
「……フォルトナ……よく見ろ。この男、一見良さそうに見えるが、経済力は親の手腕のおかげだし、家柄だって生まれた場所のせいだ。この容姿だって、親のおかげだ。この男には自分で何かをしたという実績が何一つない!! 親がいなくなっても同じ繁栄を続けられる保障はない。それならば、この男を見ろ」(※あくまで兄個人の意見です)
私は、兄の見せてくれた釣書を覗き込みながら返事をした。
「はい」
兄は、私の腰を抱き寄せて、真剣に釣書の男性について教えてくれた。
「いいか、フォルトナ。この男は、あまりいい家の出身ではないが、在学中から人脈を作り、事業を起こしている。現在はまだ、フォルトナを任せられるだけの経済力がないが、この男の方がいざという時フォルトナを守ってくれるかもしれない」(※あくまで兄個人の意見です)
なんと!! ずっと苦い顔をして、どの男性もダメ出ししていた兄が、ようやく釣書の男性を褒めた。こんなことは初めてだった。最近では私のお見合い相手を探すというよりも、とにかく兄のお眼鏡に適う人を探す、という任務のような時間になっていた。もう、完全に、私に探す気はなく『兄がいいならそれでいいか』という、半分ヤケになった状況だった。
だから私はこの貴重な男性に決まったと思ってほっとしていた。
「まぁ、ではこの方に……」
私は身を乗り出して、兄を方を見ながら言った。頷いてくれると思ったのに、兄の眉間のシワがますます酷くなった。
「ダメだ……急激にのし上がった男は、野心家だ。浮気するかもしれないし、天狗になって破滅するかもしれない」(※あくまで兄個人の意見です)
私たちはまたしても見つめ合った後に、力を抜いてソファーに沈み込むように座り直した。
「……そう……ですか……」
私が疲れてしまって遠い目をしながら言うと、兄が身体を乗り出して、大きな声を上げた。
「フォルトナ、よく聞くんだ!! 結婚とはすなわち、お前の人生の設計図の大部分を占めることになる重要な事柄なのだ!! 男という異性の枠を越えて『人として尊敬できる』や『人として愛情がある』というような、いざという時自分の内面を支えられるだけの心の重りみたいな物が必要なんだ!!」(※あくまで兄個人の意見です)
兄はそう言うと、頭を抱えて釣書の山を見ていた。私はそんな兄をぼんやりと見ていた。
(この話、昨日も聞いたな~~~)
ちなみに今は、婚約者を決めているのではない。
お見合い相手を決めているのだ。
私としては、気になる人にお会いしてみればいいのではないか、と思うのだが、兄は会わせるところからかなり慎重に検討している。
(石橋を叩き過ぎて、橋が壊れるのでは??)
私は悩む兄の横顔をじっと見つめた。
初めは塩対応だった兄だが、最近では痒いところに手が届くほど、私を世話を焼いてくれる。(決して手下とかそういう関係では……ない)しかも、私の両親も『コルネリウスは大変優秀だ』と信頼を置いているし、陛下も『コルネリウスならセルーン公爵家安泰だな』とおっしゃっていた。
堅実な兄が公爵家を継げば、公爵家に今後の問題はないだろう。
……ということは、つまり――兄は経済力は抜群。しかも公爵家ならば、家柄も問題ない。
さらに、兄は現時点で大変美しい顔をしているが、剣や乗馬の訓練も欠かさず、身体は引き締まっているし、普段は質素に生活しており、食生活も申し分ない。容姿だってそれほど大きく変わる要素は今のところはない。それに兄は元々は公爵家の人間ではなく、努力で実力を認められて、公爵家に養子に入ったのだから、親の力も多少はあったのだろうが、自身のスペックも高い。
「ああ~~今日も決まりそうにない!! いい加減、早く決めないと2人の殿下がうるさいのに!! 」
私の釣書を見ながら頭を抱える兄を見ながら思った。
(私の婚約者が見つからないのは、兄がこんなにハイスぺだからなのでは?)
そんなことを思いなら時計を見た。
「兄上!! そろそろ夜会の用意をしなければ!!」
私の言葉に兄も顔を上げながら言った。
「もうこんな時間か……。今日も決まらなかったな……仕方ない、今は夜会の準備をしよう」
「はい。兄上」
こうして、今日もお見合い相手さえも決まらないまま、夜会に行くことになったのだった。
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ここは、セルーン公爵の一室。
穏やかな午後の光が差し込む明るい室内。座り心地抜群のソファーに、最高品質の紅茶。そして、その紅茶に合うように作られた洗練されたお菓子。そんな幸せな空間を絵に描いたような場所で、私と兄にピッタリと寄り添い……非常に――厳しい現実と向き合っていた。
「この方はどうです? 経済力は抜群ですよ」
私は、サイドテーブルの上に山積みになっている、お見合い相手が書かれた釣書を見ながら言った。すると兄が自分の見ていた釣書から顔を上げて、私の持っていた釣書を覗き込みながら真剣な顔をした。
「いいか、フォルトナ。……結婚では、確かに経済力は重要だが、それだけでは、その男から経済力が消えたら、一緒にいる気が失せてしまうだろう?」(※あくまで兄個人の意見です)
兄はまるで悪戯をした子供を聡し、諫めるように言った。私は兄のいうことは最もなので、深く頷いて別の釣書を見せた。
「なるほど……。ではこの方は? 家柄、経済力はそれほど高くはないですが、顔が好みです」
私の見せた釣書を見た兄が眉間にシワを寄せ深い溜息を付いた後に、私の方を向いて、両肩をガッシリと持ちながら言った。
「フォルトナ。……残酷なようだが、一つ重要な――真実を教えてやる」
「残酷な……真実?!」
私は、ゴクリと息を飲んで兄の真剣な瞳を見つめた。そして、兄は十分に間を取った後に言った。
「いいか、フォルトナ。よく……聞け。人は――歳を取るんだ!! 年月は、人の容姿を容赦なく変質させる力を持っているんだ!! 容姿など最も失われる可能性のある物の一つだ!!」(※あくまで兄個人の意見です)
私の前職は美容関係だ。人が歳を取ることなど痛いほど知っている。いつまでも美しい人は影で努力しているのだ。男性だって最近では気にかけている人も多いが、全ての男性が美容について、気にかけているわけではない。
「……!! ……確かに!!」
私たちは顔を見合わせてしばらく固まった後に、また無言で釣書を見た。
そして、またしても私は釣書を兄に見せた。
「ではこの方はどうです? 経済力も容姿も家柄もよくバランスが取れております」
今度は納得してくれると思っていたのに、兄はまたしても残念な生き物をみるような視線を向けながら言った。
「……フォルトナ……よく見ろ。この男、一見良さそうに見えるが、経済力は親の手腕のおかげだし、家柄だって生まれた場所のせいだ。この容姿だって、親のおかげだ。この男には自分で何かをしたという実績が何一つない!! 親がいなくなっても同じ繁栄を続けられる保障はない。それならば、この男を見ろ」(※あくまで兄個人の意見です)
私は、兄の見せてくれた釣書を覗き込みながら返事をした。
「はい」
兄は、私の腰を抱き寄せて、真剣に釣書の男性について教えてくれた。
「いいか、フォルトナ。この男は、あまりいい家の出身ではないが、在学中から人脈を作り、事業を起こしている。現在はまだ、フォルトナを任せられるだけの経済力がないが、この男の方がいざという時フォルトナを守ってくれるかもしれない」(※あくまで兄個人の意見です)
なんと!! ずっと苦い顔をして、どの男性もダメ出ししていた兄が、ようやく釣書の男性を褒めた。こんなことは初めてだった。最近では私のお見合い相手を探すというよりも、とにかく兄のお眼鏡に適う人を探す、という任務のような時間になっていた。もう、完全に、私に探す気はなく『兄がいいならそれでいいか』という、半分ヤケになった状況だった。
だから私はこの貴重な男性に決まったと思ってほっとしていた。
「まぁ、ではこの方に……」
私は身を乗り出して、兄を方を見ながら言った。頷いてくれると思ったのに、兄の眉間のシワがますます酷くなった。
「ダメだ……急激にのし上がった男は、野心家だ。浮気するかもしれないし、天狗になって破滅するかもしれない」(※あくまで兄個人の意見です)
私たちはまたしても見つめ合った後に、力を抜いてソファーに沈み込むように座り直した。
「……そう……ですか……」
私が疲れてしまって遠い目をしながら言うと、兄が身体を乗り出して、大きな声を上げた。
「フォルトナ、よく聞くんだ!! 結婚とはすなわち、お前の人生の設計図の大部分を占めることになる重要な事柄なのだ!! 男という異性の枠を越えて『人として尊敬できる』や『人として愛情がある』というような、いざという時自分の内面を支えられるだけの心の重りみたいな物が必要なんだ!!」(※あくまで兄個人の意見です)
兄はそう言うと、頭を抱えて釣書の山を見ていた。私はそんな兄をぼんやりと見ていた。
(この話、昨日も聞いたな~~~)
ちなみに今は、婚約者を決めているのではない。
お見合い相手を決めているのだ。
私としては、気になる人にお会いしてみればいいのではないか、と思うのだが、兄は会わせるところからかなり慎重に検討している。
(石橋を叩き過ぎて、橋が壊れるのでは??)
私は悩む兄の横顔をじっと見つめた。
初めは塩対応だった兄だが、最近では痒いところに手が届くほど、私を世話を焼いてくれる。(決して手下とかそういう関係では……ない)しかも、私の両親も『コルネリウスは大変優秀だ』と信頼を置いているし、陛下も『コルネリウスならセルーン公爵家安泰だな』とおっしゃっていた。
堅実な兄が公爵家を継げば、公爵家に今後の問題はないだろう。
……ということは、つまり――兄は経済力は抜群。しかも公爵家ならば、家柄も問題ない。
さらに、兄は現時点で大変美しい顔をしているが、剣や乗馬の訓練も欠かさず、身体は引き締まっているし、普段は質素に生活しており、食生活も申し分ない。容姿だってそれほど大きく変わる要素は今のところはない。それに兄は元々は公爵家の人間ではなく、努力で実力を認められて、公爵家に養子に入ったのだから、親の力も多少はあったのだろうが、自身のスペックも高い。
「ああ~~今日も決まりそうにない!! いい加減、早く決めないと2人の殿下がうるさいのに!! 」
私の釣書を見ながら頭を抱える兄を見ながら思った。
(私の婚約者が見つからないのは、兄がこんなにハイスぺだからなのでは?)
そんなことを思いなら時計を見た。
「兄上!! そろそろ夜会の用意をしなければ!!」
私の言葉に兄も顔を上げながら言った。
「もうこんな時間か……。今日も決まらなかったな……仕方ない、今は夜会の準備をしよう」
「はい。兄上」
こうして、今日もお見合い相手さえも決まらないまま、夜会に行くことになったのだった。
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