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共通 ルート
6 強制力には徹底抗戦?!
しおりを挟む「意外だった……」
「え?」
授業が終わった後に、隣で兄が私を見ながら言った。
何が意外だったのだろう?
私は、先ほどまで慎ましく授業を受けていたと思ったのだが……。
「とりあえず、食事に行こう、今日は一緒に食べるために、食事を届けさせたから、そろそろ、届いているはずだ」
「え? 届けさせた?」
私は、兄の提案に驚いてしまった。
フォルトナの記憶では、兄と学園で食事をすることは、なかったはずだ。
だからと言って、婚約者のルジェク王子と食べていたわけでもない。
フォルトナは、個室で一人で食事をしていたのだ。まぁ、いつも気を張っているフォルトナにとって、昼食を一人で過ごすのは、息抜きになっていたようだが……。
「ああ、急に言っても料理長も困ると思ってな。昼食の時間に合わせて、届けてもらったのだ」
まぁ、朝、突然『お弁当よろしく~~』と言っても料理長だって困るだろう。
いやいや、そうではなくて……。
もしかして、昼も兄は、私と食べる予定なのだろうか?
まぁ、ぼっちご飯は、寂しいので助かるが……。
「さぁ、行こう」
「ええ」
兄は、私の手を引くと足早に教室を抜け出したのだった。
☆==☆==
「ありがとう」
「え? いえ、そんな、とんでもない!!」
エントランスに、侍女が待っていたので、お弁当を受け取りながら、お礼を言うと、侍女はとても驚いていた。兄はお弁当を持つと、学園内でも人が余り来ない、のんびりとしたエリアに移動した。
「ここで昼食にするのはどうだろうか?」
この場所は、風景画の授業にも使われる庭で、いつも美しく整備してあった。
「いいですね。食べましょう」
「ああ」
そして、私たちは、ガゼボに座った。
イケメンもいいが、キレイな景色も癒される。
私が、庭に見とれている間に、兄がテキパキとお弁当を広げて、お茶を注いでくれようとしていた。
「兄上、私もお手伝いいたします」
慌てて兄を手伝おうとすると、兄が首を振った。
「構わない。休んでいてくれ」
え~~。
兄は、私に何もさせてくれない。
これでは、私はダメ人間になってしまう。
困った……。
そう思っていると、兄がカップのお茶を私の前に置きながら言った。
「先ほど、意外だったと言っただろう?」
「……ええ、そうですね」
そう言えば、教室で、兄にそんなようなことを言われたことを思い出した。
「私はてっきり、フォルトナは、ルジェク王子殿下のパートナーを他人に譲ることなどないと思っていた」
確かにゲームのフォルトナなら、絶対に譲ることはなかっただろう。
だが、結局は主人公が踊ることになるのだ。
それならば、ダンス上級者のクレアが踊った方がいいに決まっている。
「クレアさんのことを知っていたので……」
私がそう言うと、兄は困ったように笑った。
「私はこれまで、フォルトナのことを誤解していたようだ。本当にルジェク王子殿下のことを考えて過ごしていたのだな」
チョロ過ぎの兄が、私が自分のためにしたことを、『ルジェク王子殿下のため』と勘違いしてくれたようだ。本当に兄はチョロい。私は、思わず兄を心配しながら言った。
「兄上……悪い女性に騙されてはいけませんよ」
すると、兄は、私の口に、小さな生春巻きのような物を運びながら言った。
「ん? なんのことだ? 口を開けてくれ」
「ええー。自分で食べますよ……」
そう言うと、兄は必死な顔で言った。
「これは、手が汚れてしまいそうだから、これだけ。これと、メインと、デザートの果物だけ食べさせてたい」
結構な量ですね?
私は、仕方なく口を開けた。
「じゃあ、今日だけですから……」
「ああ」
こうして私は、兄の目覚めてしまった、『親鳥心』を満足させるために口を開けたのだった。
☆==☆==
食事が終わり、教室に向かうために廊下を歩いていると、私は、はっとした。
(あら? ここ庭のバラ園が見える廊下だ……もしかして!!)
バラ園の見える廊下には見覚えがあった。
ここで、ヒロインのクレアは、ルジェク王子とのダンスが決まって、この学園のダンスの先生に相談に行った後、フォルトナにぶつかるのだ。
フォルトナは、厳しいくクレアを叱りつけるのだが、そこに偶然、ルジェク王子が通りかかり、フォルトナから助けてくれるが……。
(あれ……普通に考えて痛そうよね……)
私は、窓際を歩いていた兄と、場所を交換することにした。私が窓側に移動すると、兄が眉を上げた。
「どうした?」
「いえ……窓際を歩きたいのですがいいですか?」
「ああ、景色が見たいのか? 歩きながら景色を見るとケガをする。少し止まっても問題ないだろう。フォルトナは、庭が好きなのだな……」
庭が見たかった訳ではないが、兄が嬉しそうなので、まぁいいか、と思うことにした。
しばらく、景色を見ていると、角からクレアが飛び出して来て、なんと兄とぶつかった。
「きゃあ! コルネリウス様?! 申し訳ございません!!」
兄は、ゲームの私と違い、倒れることはなく、クレアを胸の中で受け止めた。
クレアもだが、兄も心なしか、顔が赤くなっているようだ。
(あれ? もしかして……フォルトナとぶつかって、ルジェク王子殿下に助けられるイベントが、兄との出会いに、変化した??)
私が首を傾けていると、兄が肩を震わせながら大声を上げた。
「おい!! 君は一体、何を考えているんだ!! 学園の廊下を走るなど、これまでどんな教育を受けてきたのだ!! 幸い、私だから何もなかったものの、さきほどまではフォルトナがこちら側を歩いていたのだぞ?! フォルトナがケガでもしたら、どうするつもりだったのだ?!」
えええええ~~~~?!
まさかの兄の説教タイム突入?!
どうやら、兄は怒りで顔が赤くなっていたらしい。
「申し訳ございません!!」
クレアは、ずっとあやまっているが、兄の怒りはおさまらない。
そうしているうちに、向こうから、ルジェク王子殿下一行が歩いて来て、私たちに眉を寄せながら声をかけた。
「何をしている?」
すると、兄は「ルジェク王子殿下のお手を煩わせることでは、ございません」と言うと、クレアを氷のような瞳で睨みつけながら言った。
「いいか、二度目はない。ルジェク王子殿下のパートナーを務めるというのなら、なおさら、もう少し淑女としての自覚を持て」
「は、はい」
すると、ルジェク王子は「そうか、コルネリウスがそう言うのなら……この場は任せよう。皆行くぞ」っと言って通り過ぎてしまった。
兄は、ゲームの中のフォルトナと全く同じことを言って、主人公を注意した。
それなのに、王子はフォルトナの時は『フォルトナ、そう大きな声を出すな。他人の失敗を容認する寛容さも持て……。クレア嬢大丈夫か? あまり気にするな。失敗など誰にでもある』と言って、主人公を慰めるのに……。
主人公目線の時は、助けてもらえたことが嬉しかったが、フォルトナになると、大変気分が悪い!!
どうして、兄の時は任せて、通り過ぎて、フォルトナの時はヒロインのクレアを助けるって!!
私は、強制力を蹴散らしてやったというのに、すっかりやさぐれてしまったのだった。
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