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4 学園にはイケメンがたくさんいました
しおりを挟む鞄から授業で使う物を取り出して、ふと周りを見渡した。
(凄い……想像以上……)
私は、ポーカーフェイスを保ちながらも、今の状況に軽い眩暈を覚えていた。
ゲームでは、モブとして出ていた、ただのクラスメイトの面々も顔がいい。
教室から見える中庭を歩いている生徒も爽やかで顔がいい。
練習場のようなところに向かう生徒は、たくましい体つきで惚れ惚れするほどだ。
華やか系イケメン、可愛い系イケメン、ワイルド系イケメン、真面目眼鏡系イケメン、ミステリアス系イケメン、陽キャ系イケメン……ありとあらゆるイケメンが存在していた。
とにかく……。
ルジェク王子殿下に限らず、他にも素敵な男性は、たくさんいる!!
最近では、男性に会う機会がほとんどなかったので、イケメン判定が甘くなるフィルターが掛かっているかもしれないが、それでも恋愛リハビリを目的とした私には、かなりいい環境だ。
――ああ、目の保養……。
私が、ぼんやりと中庭を眺めていると、隣から凶悪なほどのイケメンの兄に話かけられた。
(あ……兄もやっぱりかっこいいよね……なぜか、子犬しか見えないけど……)
「外を眺めて、どうかしたのか?」
まさか、イケメン男性を観察してました、なんてことは言えないので、お茶を濁すことにした。
「いえ……。そうですね……景観がいいな……と」
嘘は言ってない。
素敵な男性が多いと世界が輝いて見えないだろうか?
「ああ、そろそろ季節が変わるからな……庭の整備をしたのかもしれないな」
兄が窓の外を見るために、私の顔のすぐ近くに、顔を近付けながら言った。
兄よ、顔が近い!! 恋愛リハビリ中の私に不用意に近付くのは止めてほしい、無駄に心臓が早くなってしまう。
今朝の一件から、兄は子犬しか見えなくなったのだが、やはり、これほど近づかれると戸惑ってしまう。今だって、頬が付きそうなほど、顔を寄せて庭を見ている。
ふと教室内の大きな柱時計を見ると、もうすぐ授業が、始まる時間だった。
「そろそろ、先生がお見えになる頃ですわね」
私が、時計を見ていると、兄が声を上げた。
「ああ、そうだな……ん? 殿下たちがお見えになったようだぞ」
「おはようございます」「おはようございます」と後ろの入口から多くの生徒のあいさつが聞こえたので、視線を向けると、確かに、イケメン集団が教室に入ってきた。イケメン王子に、イケメン騎士、イケメン宰相候補だ。
本気で発光しているかのように光を放っている集団を、イケメン以外で説明する語彙を持たない私を許してほしい。では、ここでも乙女ゲームの力を借りようと思う。
『黄金を彷彿させる輝く金色の髪、どこまでも続く真っ青な空をその瞳に移したような目を持ち、若干十六にしてすでに王の風格漂う、王子ルジェク。
偉大な大地に根を下ろし大きくそびえ立つ大樹の幹のような濃厚な茶色の髪に、大樹の葉のような瑞々しさと、壮観さを持った緑色の瞳、幼い頃から騎士団長を父に持ち厳し訓練を受け鍛えられた鋼のような身体を持つ騎士カイル。
琥珀のような瞳と髪は、光を受けて美しく輝きを変える。また、彼の片方の目に付けられたモノクルには、過去と未来を映しているのではないかと噂されるほどの聡明頭脳を持った天才宰相候補のダイアン』
現在、この教室には、悪役令嬢の私と、攻略対象が3人、そして隠しキャラの兄、そしてヒロインのクレアがいる。幼馴染の伯爵子息のライドは確か一学年下だったので、悪役令嬢の私ことフォルトナとの絡みはない。
攻略対象の面々は、皆、私の想像以上に顔がよかった。
三次元に期待は、していなかったが、実物は期待以上だ。みんな、かなりカッコイイ!!
特に推しのルジェク王子は、この世の者とは思えないほどの美しく、同じ人類だと思えないほどだ。
もうここまで美しいと、婚約者とか、恋愛対象ではなく、鑑賞対象という言葉が相応しい気がする。
あまりにも美しく荘厳なので、恐れ多くて、年に一度見れればいいレベルである。いや、数年に一度でもいいかもしれない。
私が、思わずポカンと、攻略対象を見つめていると、ルジェク王子殿下が、こちらに視線を向けて、驚いた顔をした。
(あ!! 今、ルジェク王子こっち見たぁ~~~~かっこいい~~~~!!! さすが、推し!!)
今の私の状況を例えるなら、推しのライブ会場に来て、勘違いだったとしても推しと目が合った~~と狂喜乱舞しているファン心理と同じだろう。一つ言えることは、もう完全に婚約者目線ではない。
兄がルジェク王子に向かって頭を下げたので、私も兄の真似をして、ルジェク王子に向かって頭を下げた。
すると王子は、ますます眉を寄せ、こちらに歩いて来たが、ガラリと扉が開き、先生が教室に入ってきたので、こちらに来るのを止めて、いつも王子一行様が座っている席に座った。
私は、先ほどのルジェク王子を見て思った。
(確かに推せるが、遠くから眺める程度が丁度いい)
私は、推しの妻はヒロインに譲り、遠くから推しを愛でながら、現実的な彼氏を探すことに決めたのだった。
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