上 下
4 / 50
共通 ルート

4  学園にはイケメンがたくさんいました

しおりを挟む



 鞄から授業で使う物を取り出して、ふと周りを見渡した。

(凄い……想像以上……)

 私は、ポーカーフェイスを保ちながらも、今の状況に軽い眩暈を覚えていた。

 ゲームでは、モブとして出ていた、ただのクラスメイトの面々も顔がいい。
 教室から見える中庭を歩いている生徒も爽やかで顔がいい。
 練習場のようなところに向かう生徒は、たくましい体つきで惚れ惚れするほどだ。
 華やか系イケメン、可愛い系イケメン、ワイルド系イケメン、真面目眼鏡系イケメン、ミステリアス系イケメン、陽キャ系イケメン……ありとあらゆるイケメンが存在していた。

 とにかく……。

 ルジェク王子殿下に限らず、他にも素敵な男性は、たくさんいる!!

 最近では、男性に会う機会がほとんどなかったので、イケメン判定が甘くなるフィルターが掛かっているかもしれないが、それでも恋愛リハビリを目的とした私には、かなりいい環境だ。

 ――ああ、目の保養……。

 私が、ぼんやりと中庭を眺めていると、隣から凶悪なほどのイケメンの兄に話かけられた。

(あ……兄もやっぱりかっこいいよね……なぜか、子犬しか見えないけど……)

「外を眺めて、どうかしたのか?」

 まさか、イケメン男性を観察してました、なんてことは言えないので、お茶を濁すことにした。

「いえ……。そうですね……景観がいいな……と」

 嘘は言ってない。
 素敵な男性が多いと世界が輝いて見えないだろうか?
 
「ああ、そろそろ季節が変わるからな……庭の整備をしたのかもしれないな」

 兄が窓の外を見るために、私の顔のすぐ近くに、顔を近付けながら言った。
 兄よ、顔が近い!! 恋愛リハビリ中の私に不用意に近付くのは止めてほしい、無駄に心臓が早くなってしまう。
 今朝の一件から、兄は子犬しか見えなくなったのだが、やはり、これほど近づかれると戸惑ってしまう。今だって、頬が付きそうなほど、顔を寄せて庭を見ている。
 ふと教室内の大きな柱時計を見ると、もうすぐ授業が、始まる時間だった。

「そろそろ、先生がお見えになる頃ですわね」

 私が、時計を見ていると、兄が声を上げた。

「ああ、そうだな……ん? 殿下たちがお見えになったようだぞ」

 「おはようございます」「おはようございます」と後ろの入口から多くの生徒のあいさつが聞こえたので、視線を向けると、確かに、イケメン集団が教室に入ってきた。イケメン王子に、イケメン騎士、イケメン宰相候補だ。
 本気で発光しているかのように光を放っている集団を、イケメン以外で説明する語彙を持たない私を許してほしい。では、ここでも乙女ゲームの力を借りようと思う。
『黄金を彷彿させる輝く金色の髪、どこまでも続く真っ青な空をその瞳に移したような目を持ち、若干十六にしてすでに王の風格漂う、王子ルジェク。
 偉大な大地に根を下ろし大きくそびえ立つ大樹の幹のような濃厚な茶色の髪に、大樹の葉のような瑞々しさと、壮観さを持った緑色の瞳、幼い頃から騎士団長を父に持ち厳し訓練を受け鍛えられた鋼のような身体を持つ騎士カイル。
 琥珀のような瞳と髪は、光を受けて美しく輝きを変える。また、彼の片方の目に付けられたモノクルには、過去と未来を映しているのではないかと噂されるほどの聡明頭脳を持った天才宰相候補のダイアン』
 
 現在、この教室には、悪役令嬢の私と、攻略対象が3人、そして隠しキャラの兄、そしてヒロインのクレアがいる。幼馴染の伯爵子息のライドは確か一学年下だったので、悪役令嬢の私ことフォルトナとの絡みはない。

 攻略対象の面々は、皆、私の想像以上に顔がよかった。
 三次元に期待は、していなかったが、実物は期待以上だ。みんな、かなりカッコイイ!!
 特に推しのルジェク王子は、この世の者とは思えないほどの美しく、同じ人類だと思えないほどだ。

 もうここまで美しいと、婚約者とか、恋愛対象ではなく、鑑賞対象という言葉が相応しい気がする。
 あまりにも美しく荘厳なので、恐れ多くて、年に一度見れればいいレベルである。いや、数年に一度でもいいかもしれない。

 私が、思わずポカンと、攻略対象を見つめていると、ルジェク王子殿下が、こちらに視線を向けて、驚いた顔をした。

(あ!! 今、ルジェク王子こっち見たぁ~~~~かっこいい~~~~!!! さすが、推し!!)

 今の私の状況を例えるなら、推しのライブ会場に来て、勘違いだったとしても推しと目が合った~~と狂喜乱舞しているファン心理と同じだろう。一つ言えることは、もう完全に婚約者目線ではない。

 兄がルジェク王子に向かって頭を下げたので、私も兄の真似をして、ルジェク王子に向かって頭を下げた。
 すると王子は、ますます眉を寄せ、こちらに歩いて来たが、ガラリと扉が開き、先生が教室に入ってきたので、こちらに来るのを止めて、いつも王子一行様が座っている席に座った。

 私は、先ほどのルジェク王子を見て思った。

(確かに推せるが、遠くから眺める程度が丁度いい)

 私は、推しの妻はヒロインに譲り、遠くから推しを愛でながら、現実的な彼氏を探すことに決めたのだった。




しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

お妃候補を辞退したら、初恋の相手に溺愛されました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のフランソアは、王太子殿下でもあるジェーンの為、お妃候補に名乗りを上げ、5年もの間、親元を離れ王宮で生活してきた。同じくお妃候補の令嬢からは嫌味を言われ、厳しい王妃教育にも耐えてきた。他のお妃候補と楽しく過ごすジェーンを見て、胸を痛める事も日常茶飯事だ。 それでもフランソアは “僕が愛しているのはフランソアただ1人だ。だからどうか今は耐えてくれ” というジェーンの言葉を糧に、必死に日々を過ごしていた。婚約者が正式に決まれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる!そう信じて。 そんな中、急遽一夫多妻制にするとの発表があったのだ。 聞けばジェーンの強い希望で実現されたらしい。自分だけを愛してくれていると信じていたフランソアは、その言葉に絶望し、お妃候補を辞退する事を決意。 父親に連れられ、5年ぶりに戻った懐かしい我が家。そこで待っていたのは、初恋の相手でもある侯爵令息のデイズだった。 聞けば1年ほど前に、フランソアの家の養子になったとの事。戸惑うフランソアに対し、デイズは…

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。 俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。 そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。 こんな女とは婚約解消だ。 この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

悪役令嬢に転生したので、推しキャラの婚約者の立場を思う存分楽しみます

下菊みこと
恋愛
タイトルまんま。 悪役令嬢に転生した女の子が推しキャラに猛烈にアタックするけど聖女候補であるヒロインが出てきて余計なことをしてくれるお話。 悪役令嬢は諦めも早かった。 ちらっとヒロインへのざまぁがありますが、そんなにそこに触れない。 ご都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...