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成功条件は、絶対に婚約阻止!!
1 側近カルの婚約事情
しおりを挟むーーカリカリカリ。
執務室に規則的な羽ペンの音が響いていた。
今日は謁見や視察などのご公務はなく、アルベルト殿下は朝からずっと執務机に向かっていた。
こんにちは!!
ご無沙汰しております!!
皆様とお目にかかるのは、もう6年ぶりでしょうか?
早いものですね。
申し遅れました。
私は殿下の側近のカルことカルディアと申します。
実は殿下が泣き言一つ言わずに朝から執務机に座られていらっしゃるのにはある理由が……
ーーコンコンコン。
室内にノックの音が響いた瞬間!!
ガターーン!!
殿下は勢いよく椅子から立ち上がると「入れ!!」と大きな声を上げた。
入って来たのは護衛騎士だった。
「なんだ? もう生まれそうなのか?!」
実は今朝からアリエッタ様のお腹に規則的な痛みが……そう、つまり陣痛です。
先程から殿下は3人目のお子様が生まれてくるのを仕事に集中することで、ソワソワする気持ちを誤魔化しながらお子さんの誕生を待っているのです。
男性は基本的にお産に立ち会うことは出来ませんので、殿下はここでお仕事をされているのです。
殿下が護衛騎士に詰め寄ると、殿下の視線の先から可愛らしい声が聞こえた。
「もう!! お父様ったら、落ち着いて下さい」
「ベアトリス!! どうしたんだい?」
するとその途端に先程まで焦っていた殿下の顔が激甘パパの顔に変身した。
殿下はベアトリス様を抱き上げると頬ずりをしていた。
ベアトリス様とは、現在5歳の殿下のご息女様に有らせられます。
アリエッタ様と殿下のお2人によく似たとても可愛らしいお嬢様です。
きっと将来は美しくなられるでしょう。
殿下が正気を保って結婚式に参列できるか今から不安です。
「お父様、もう私もお茶会デビューを控えた淑女です。人前でそのようなことはやめて下さい」
つい最近までは、ベアトリス様から殿下に「好き好き」と頬ずりをされていたのに、ベアトリス様のご成長が眩しくて私は思わず目を細めてしまいました。
「うう……。そんなベアトリス……もうそんなことを言うようになってしまったのかい?」
殿下は本気で泣きそうなお顔をしています。
「そんなことよりお父様。降ろして下さい。私はカルに御用が合って来たのです」
「「え?」」
私がうっかり出した声と殿下の声が重なってしまいました。
(私に用とはなんだろう?)
私には全く心当たりがないので、首を傾げていると、殿下は私に恨みがましい視線を送られています。
(殿下……そんな顔で見ないで下さい。私も理由はわかりませんよ?)
殿下は、ベアトリス様をゆっくりと降ろされたので、私はベアトリス様の前に膝を着くと目線を合わせた。
「こんにちは、ベアトリス様。今日もとても可愛いですね。」
「ありがとう……カル」
ベアトリス様は笑顔になると私の前に、美しいガラス玉で出来たネックレスを差し出して下さいました。
「カル。これ、私が作ったのよ? カルにピッタリでしょ?」
よく見ると、夜空のような深い青に透明な粒と星のように輝く黄色のガラス玉が規則的に並んでいてとても綺麗な色合いでした。私は思わず口元が緩んでしまいました。
「これは素晴らしいですね。ベアトリス様は芸術的なセンスもお持ちなのですね」
私の言葉に殿下が私の手元を覗き込んでこられた。
「本当だ!! ベアトリス!! すごいぞ!! 今からでも絵画の教師を手配した方がいいだろうか? それとも刺繍の教師がいいだろうか?」
(殿下……とりあえずベアトリス様のお話をお伺いしましょうね)
殿下が興奮したように言っていましたが、私はそんな殿下に微笑みかけ、落ち着くように念を送るとすぐにベアトリス様をの方を向いた。
「こんな素敵な物どうされたのですか?」
すると、ベアトリス様が嬉しそうな笑顔になられました。
「本当に? カル? 本当に嬉しい? 気に入った?」
「はい。とても気に入りました」
「ふふふ。実は『影』にカルのことを色々調べてもらったの!! カル、今日がお誕生日なんでしょ?」
「「え?」」
私と殿下はまた声が重なってしまったのでした。
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