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成功条件は、やっぱり婚約者の愛?!

5 アリエッタside

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殿下を見送ると、お兄様が驚いた顔をして言った。

「アリエッタ・・・殿下に愛されているのだな」

私はお兄様を見て笑った。

「ですからずっとそう申し上げていたではありませんか」

するとお兄様は声を出して笑った。

「あははは」

お兄様がこんなに大笑いするのは珍しいので私は驚いてしまった。

「突然、どうされたのです?」

するとお兄様が笑いで涙を目に溜めて言った。

「いや、まさかアリエッタもクラリスと同じように愛されているとは思わなくてな!!
しかもあれは世間では『溺愛』と言われるたぐいのものだ!!
まさか、『氷の貴公子』と呼ばれた殿下のあのような顔が見られるとは!!
あはは。これなら大丈夫そうだな」

そしてお兄様は私を見て微笑んだ。

「アリエッタ、幸せにな」

私は思い切り微笑んだ。

「はい」





そしてお披露目式当日。

私が控え室にいると、お姉様とお兄様がいらっしゃった。

「アリエッタ・・・凄い人だ!
お披露目式というのは凄いのだな」

お兄様の言葉にお姉様が頷いた。

「ええ。こんなに大勢の人初めて見たわ。
私の旦那様も『クラリス!!私は公爵家の権力全てを使って君のために最高の席を手に入れてきたよ』とおっしゃっていたわ」

するとお兄様が眉を下げた。

「残念だが、私は端の席だ。だからオペラグラスを持ってきた。
今回は、陛下と王妃様以外は国外の王族の方もいらっしゃるので、貴族席は皆話し合いで席順を決めたらしいぞ」
「ええ。旦那様も『会場が野外でよかった。そうでなければ席の取り合いで怪我人が出たかもしれない』とおっしゃっていたのよ」

私は困った顔で2人を見た。

「それは・・プレシャーなのですが・・」

するとお兄様が笑顔で言った。

「アリエッタがプレシャー?!
あはは。それはないな」

するとお姉様も扇で口元を隠して笑った。

「ふふふ、ええ。アリエッタ。それは気のせいよ。
あなたの演技楽しみにしてるわ!!」

ーードン!!

突然、扉が開いて、お父様が顔面蒼白な顔で入ってきた。

「アリエッタ!!
大丈夫か?凄い人だぞ?!
いいか。観客はかぼちゃだと思え。
それより、手のひらに『人』という字を書いて飲み込めばいいのか?」

するとお兄様がお父様の肩に手を置いた。

「父上が落ち着いて下さい。
アリエッタに緊張するなどという繊細な感情はありません」

するとお姉様も頷いた。

「そうですわ。お父様、アリエッタは緊張とは無縁ですわ」

するとお父様も顔を上げた。

「そうだな。アリエッタにそんな繊細さはないな!!
繊細な私は緊張で今にも倒れそうだがな!!」

(・・・悪意のない悪口はつらい!!)

私が家族の会話に人知れず傷ついていると、お兄様が私の肩に手を置いた。

「お前が本番で失敗するなどありえない。
行ってこいアリエッタ」

お姉様もにっこりと微笑んだ。

「ふふふ。あなたの勇姿を客席から見ていますわ。
いってらっしゃい」

するとお父様も笑った。

「アリエッタ!!行ってこい」
「はい」

私は立ち上がると3人の方を見た。

「行ってまいります!」






そして、私は演技に集中した。
自分でもこれまでで一番最高の演技が出来たと思えたのだった。



演技が終わると会場から割れんばかりの拍手を頂いた。

(無事に終わった。よかった!!)

私が皆様に頭を下げると、殿下が花束を持って現れた。
そして私の肩を抱き寄せると、皆様の方を見て大声で言った。

「私はこの才気溢れる女性を伴侶にすることをここで誓おう!!」


すると会場から大きな歓迎の声や拍手が聞こえた。
殿下は私を見ると、微笑んでくれた。

「美しかった。
こんなありきたりな言葉しか浮かばない自分がイヤになるが、美しいと、ただそう思った」
「ふふふ。ありがとうございます。光栄です」

殿下の顔が寄ってくると、また大きな声が聞こえた。

「皆!!次期王妃に大きな拍手を!!」

声の主は国王陛下だった。
私と殿下は急いで頭を下げた。

そして顔を見合わせて小さく笑った。

こうして私のお披露目式は無事に終わったのだった。




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