成功条件は、まさかの婚約破棄?!

たぬきち25番

文字の大きさ
上 下
13 / 28
成功条件は、もちろん婚約破棄の阻止!

しおりを挟む



それから数か月後の午後。
私は一仕事終え、伸びをしていると、カルが楽しそうに話しかけてきた。

「しかし、まさかあのグラソン殿がここまで好意的になるとは思いませんでしたね。」

そして昨日、アリエッタと共に出席した夜会の様子を思い出した。

「そうだな・・。
この分ならアリエッタ発案の水路の建設はスムーズに議会を通るだろうな。」
「ふふふ。そうですね。
グラソン様がこちら側なのです。問題ないですよ。」

ここ数カ月、アリエッタが繋いでくれた縁や、アイディアのおかげで、私の王宮や議会での地位は、うなぎのぼりだった。

すると、カルが楽しそうに笑い出した。

「初め、あのメモの『不特定多数の方と遊び回る』との文字を見た時は肝が冷えましたが、まさかここまで顔繋ぎにご尽力頂けるとは夢にも思いませんでした。」

それを聞いた私も思わず、笑ってしまった。

「ははは。そうだな。
だが、これも私との婚約破棄のためなのだろうか?
そう思うと悲しいな・・。」

するとカルが穏やかな顔をした。

「アリエッタ様は、殿下のことがお嫌いなわけではないと思いますよ?
ただ、このように目的を設定してしまったので、それに突き進んでいるだけかと思いますよ?」
「ああ。おまえのその言葉を信じて、彼女が頑張っている今は見守るよ。」
「それがよろしいかと。」
「早く彼女に触れたい・・・。
夜会の時のエスコートだけなど耐えられない。」

すると、カルに鋭い顔で睨まれた。

「ダメですよ。アリエッタ様のお邪魔です。
殿下。王妃教育は大変なのですよ?
それに皆様との顔繋ぎも大変です。
それに公務までお手伝い頂いております。
歴代の王妃様はここまでされておりません。
アリエッタ様だからこそ、ここまで殿下をお助け出来るのですよ?
ですから、アリエッタ様とお約束された卒業式までは絶対に手を出してはなりません。
そんなことしたら、不義理と見なされ、婚約破棄の阻止なんて出来ませんよ?」

私は思わず頭を抱えた。
カルのいう通り、彼女を応援している者たちは大勢いる。
今や、国内だけではなく、国外でも彼女を支持する者は多い。
その全てを敵に回してしまったら、いくら王太子の私と言えども、世論には勝てないだろう。
それだけ彼女は頑張っているのだ。

「わかっている!!
だからいつだって我慢しているだろ!!
どんなに彼女の唇が魅力的でも、髪が気持ちよさそうでも、肌が吸いつくようにすべすべでも耐えているじゃないか!!
少しくらい私の忍耐を褒めろ!!」
「殿下も偉いですよ。その調子です。」
「あ~なぜ卒業式などと言ってしまったのだ・・私は・・3年・・長い・・。」

思わず弱音をはく私にカルが気を使ってくれた。

「何かお飲み物を持ってきて貰いましょうか?」
「ああ。甘めのミルクティーを頼む。」
「はい。」

そして、私はアリエッタに触れるのを3年も耐え忍んだのだった。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

【完結】愛していないと王子が言った

miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。 「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」 ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。 ※合わない場合はそっ閉じお願いします。 ※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

笑わない妻を娶りました

mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。 同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。 彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

顔も知らない旦那さま

ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。 しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない 私の結婚相手は一体どんな人?

妾に恋をした

はなまる
恋愛
 ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。  そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。  早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。  実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。  だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。  ミーシャは無事ミッションを成せるのか?  それとも玉砕されて追い出されるのか?  ネイトの恋心はどうなってしまうのか?  カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?  

処理中です...