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9.社交界デビュー当日
しおりを挟む誘拐未遂事件?の後、邸に戻るとディールと一緒にちゃんとイズと妹のナタリーが居た。
ナタリーは早速医者に診て貰うと、重度の栄養失調だった。その他は特に重たい病気もなく、三食しっかり食べて規則正しい生活を送れば、良くなると言われ一先ず安心した。
カイとイズもそうだけど、三人は年齢的に見ても、細過ぎた。
両親に捨てられる前から裕福ではなかったと言っていたから、それも原因だと思うけど、やっぱり子どもの稼ぎでは限界もあっただろう。ろくに食べていなかったみたいだ。
父上には、誘拐未遂事件の事は言わずに、三人を邸で働かせてほしいとお願いしたら、すんなりと許可してもらえた。
父上にそれ以上何も言われなかったので、ディールが上手く言ってくれたのだろう。手合わせはしてもらったが、本気は出さなかった。私、優しい。
母上の方は凄く喜んでいて、三人達をお風呂へ入れて綺麗にし、綺麗な服と食事を用意した。
三人の年齢を聞くと、カイは10歳で、イズは7歳、ナタリーに至ってはまだ5歳だった。ナタリーは控えめで可愛らしくて、私が着なかったフリフリの服を母上は喜んで着せていた。妹が出来たみたいで、私も嬉しい。
「お、お嬢!こんなに良くしてもらって良かったのか。俺達、まだ働いてもいないのに、ナタリーも医者に診て貰って、新しい服と食事まで」
「良いのよ。今日から貴方達は、ローレンス家の一員になるのだから、それにその服は母上が残していた私と兄上達の服なの。ピッタリみたいね。今は貴方達に合う服を置いていないから新しい服はまた用意するから少しの間はそれで我慢して頂戴」
カイ達の様子を見に来た私を、カイが見つけてるや否や、カイは困った様に私に問いかけ来た。ニッコリと微笑みながら私がそう言うと、カイは目を見開き横に大きく首を振った。
「お嬢、本当にありがとう、ご、ございます。この恩は一緒忘れません。何でもやります。こき使ってく、下さい」
「勿論、そのつもりよ。その代わり、三人ともちゃんと健康的に元気になったら、バリバリ働いてもらうからね。その分、ちゃんとお給金も払うし」
何だかんだ言っても、三人達はまだ子どもで、幼くして両親に捨てられて、弟と妹を守らなくてはいけないと思ってしっかりしていたカイは、子どもながら大人顔負けにしっかりし過ぎていた。
やっと、弟と妹を安全な所で暮らせられると思ったのか、今までの緊張感が解けてカイは泣いてしまった。釣られて、イズとナタリーも泣き出して、終いには釣られて私まで泣いてしまった。
側から見たら、カオスな状況だったと思う。
何も知らない母上が、私達の元にやって来て、優しく慰めてくれた。ちゃっかり私も母上に甘えていました。
それからというもの、カイとイズは使用人に教えてもらいながら、仕事を始めた。
ナタリーは食が細くなってしまっていたので、一度に沢山は食べれず、完全に回復するには少し時間がかかりそうだけれど、順調に少しずつ回復している。
カイはあの日以来、私と一緒に朝から筋トレに参加している。
何でも、私とカイは4歳しか変わらないのに、私が普通の大人以上に強いから、自分も強くなりたいと志願して来た。
そんな褒めても何も出ないよ。まあ、私の知識が許す限り、叩き込んでやろうじゃない。私はユラ以来、久しぶりだったので意外と乗り気だった。
カイ達が来てから一週間が経とうとしていた。
とうとう、待ちに待ってない舞踏会の日になりました。本当帰りたい。ローレンス領地へ帰りたい。
レティシアは何がそんなに嬉しいのか、昨晩から泊まりに来ている。
昨夜は私のベッドで一緒に寝たのだけれど、寝る前もずっと明日の舞踏会の話をしていた。
「リディは良いわよね。コルセット要らずだもの」
同じ部屋で支度をしながら、私の身体を見てレティシアは溜め息を吐いた。
「何なら、レティも一緒に身体鍛える?レティにも簡単に出来るのもあるわよ」
「ん~、少し考えるね」
私の提案にレティシアはすぐに頷かない。まあ、レティシアは鍛えなくても、細いし、括れだってちゃんとあるのにね。
君はそのままで良いのだよ。それ以上可愛いくなると変な虫が寄ってくるからね。
私は可愛いレティシアを変な虫から守る為にも鍛えているからね。見よ!この鍛え抜かれたボディを!
鍛えても柔らかさと弾力は衰えない私の成長途中のお胸様にコルセット要らずの括れに完璧に割れたお腹。
しまった!無意識にポージングを取ってしまった。ユラが白い目で見てる!こっちを見てる!
「さ、さあ、気を取り直してレティ。締めるから息を吐いてね。せーの」
「はうっ」
「あら、意外と簡単なのね」
レティシアがいつも時間がかかるというコルセットの紐を締める作業を、私がやりたいとお願いするとレティシアは快諾してしてくれた。
レティシアはベッドの縁にしがみ付き、私が力を込めて一気に紐を絞ると、レティシアは苦しさのあまり声が漏れてしまう。
やっぱり、いつ見ても苦しそうなので、私は絶対コルセットはしないと固く誓う。
そのまま、手際良く紐を結んで背中をポンと叩くと、レティシアは小さい悲鳴を上げた。
「い、痛いわ、リディ。でも、今までコルセットを巻いて来た中でリディが一番上手だったわ。一気に締まる感じが凄く凄いし!いつもより細く見えるもの!」
お姫様はご満悦の様で、鏡の前に立ってコルセットで括れた部分を見ていた。
「喜んでくれて何よりよ。またいつでも言ってくれれば、コルセットくらい巻いてあるわ。あっ、でも私が出来るならユラでも出来るでしょう?」
「…ええ、まあ」
私の言葉にユラはあからさまに嫌そうな顔をしている様に見えた。相変わらず、無表情だから怒ってるのかわからない。
「じゃあ、これからはユラにお願いするわね!」
「畏まりました」
レティシアはユラに笑顔でお願いすると、ユラは表情を変えずに一礼をした。
それから私達は支度を済ませると、兄上達の待つ部屋へ向かった。
「失礼します。お嬢様達をお連れしました」
「入れ」
ユラが扉をノックすると、部屋から父上の声が聞こえて来て、ユラは扉を開けて私とレティシアは中へと入って行った。
「あら、お父様とお母様もういらしたのね」
「伯父様、伯母様、御機嫌よう」
部屋に入ると、父上と母上、兄上達にレティシアの両親達も準備を済ませて、すでに来ていた。
「まあ、リディア。とても綺麗よ!レティシアも!まあ、それがレティシアの言っていたドレスね!素敵だわ。ねぇ、レイリー」
「本当だね。リディアとレティシアが揃うとより一層華やかなになるね」
レティシアの母上で私の母上と瓜二つの顔をした姉のユーシアはそう言って、興奮気味に夫のレイリーの中肩を叩いた。ユーシアの言葉にレイリーも笑顔で頷く。
レティシアはドレスを褒められて満足気だった。
貴女の為に考えたドレスだもの。似合って当然!
レティシアの着ているドレスは、先日私が仕立て屋と一緒に考えたドレスで、子ども過ぎず、かと言ってあまり露出度の少ないドレスになっている。
大体の女性のドレスは大きく開いた胸元が特徴的なのだけど、レティシアは従来と同じ胸元の大きく開いた淡い水色のドレスに肌が露出している胸元から首元、そして腕までをわざと白のレースで透け感を出した仕様にしている。
胸元から下は淡い水色一色のみで、そこに金色の糸で刺繍が施されたシンプルな作りになっている。
一般的にスカートの膨らみはウエストから膝までの長さで鉄の骨組みで膨らみを作っていたのだけれど、それじゃあ重た過ぎるし、転んだ時にレティシアが怪我をしてしまう為、膨らみは少し半減するものの軽量化の為に紙に絵を描いて新たにパニエを作ってもらう事にした。
パニエも二段や三段など何種類か作ってもらい、着た時のドレスの感じに合わせて決定した。
天使みたいーーーいや、天使の可愛いさ!
私、渾身の力作と言えよう!
とは言え、素人が記憶を思い出しながら仕立て屋にお願いして作った物なので、あとはプロの方が改良したら、もっと良いものが作れるだろう。
人柄も良い人だったので、これからもご贔屓にしたい。
レティシアの姿を見てうんうんと頷いていると父上に呼ばれた。
「リディア、こちらにおいで」
「はい。父上」
「本当、とても似合っているわ。リディア」
「そうだな。綺麗だ」
父上の側へ行くと、母のルーラは笑顔で私の頭を撫でてくれた。母上は私と同じ銀色に輝く長い髪に兄と同じ菫色の目をしている。
子どもを三人産み、母上はもう四十手前らしいけど、そうは見えなかった。父上とは全く正反対の性格で、ちょっとドジな所もあるけど、優しく美しい自慢の母上だ。
今だに不思議なのが、性格も何もかも違い、正反対過ぎる父上と母上が結婚したのか。政略結婚ではない事は、ヨシュアから聞いた。
今でもそれは私と兄上達の最大の謎だ。
ちなみに兄上達も、私とレティシアをべた褒めしていた事は言うまでも無い。安定のシスコンなので。
私達は馬車に乗り込むと、舞踏会の会場である王宮へと向かった。
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