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20.助っ人参上!!
しおりを挟むそこから、ダイナ王女の長い長いお話がありました。
簡単に説明すると、私は前世で神様に事故に見せかけて殺された。まあ、遅かれ早かれ、そう遠くない未来で私は病死してたみたいだから、思い切って連れて来たらしい。
私は今の暮らしの方が気に入っているから、たとえ故意的に此処へ転生させたのでも構わない。別に怒りもしないし、戻りたいとも思わない。
そして、ダイナ王女のいう神様のミカルとは、前世で私の家庭教師をしていた先生だったのだ。
私をこの世界へ転生させた、あの管理人もとい神様の眷属らしくて、本当は家庭教師の先生でも、人間でもなかった。
ってか、神様の眷属がゲームにハマって、その為にバイトしてゲーム買うお金を稼ぐってどうなの?
でも、そのおかげで私は先生と出会って、今に至るのだもの。管理人と先生には感謝だわ。
先生は私がこの世界に転生した後も、私の事を気に掛けてくれていたみたいで、様子を見にこちらの世界へ来てくれたらしい。
「だから、ダイナ王女様は私の事や乙女ゲームの事がお詳しかったのですね」
私がそう言うと、ダイナ王女は目を輝かせたと思えば、急に立ち上がると身を乗り出して、私の手を握りしめる。
「ええ、幼い頃からミカル様に聞かされていましたので、ですから姉が花嫁候補の儀に行かないと言ってくれた時は、感謝致しましたの。私自身がこの国へ足を運び、直接リディア様の手助けが出来ると」
「姉?」
その言葉に私は首を傾げた。
「あっ、申し遅れましたわ。私の本当の名はアルスノウ国第二王女、エレイン・ミカル・アルスノウでございますの」
「えっ、第二王女様?!」
「姉であるダイナ・アルスノウ第一王女の代わりに参りました」
そんなのアリ?!
ここで、新たに新事実が発覚した。アルスノウ国の第一王女様が、まさかの本人じゃないという。それも替え玉が第二王女様。
「ええ!!第二王女様なのですか?じゃあ、第一王女様のダイナ王女様は?」
「本来、この国に来る筈だったのは私の姉である第一王女のダイナお姉様でした。それなのに、お姉様ったら、前日になってやっぱり行きたくないとおっしゃって……」
「ええ!!」
まさかの前世でいうドタキャンってヤツでございますか。エレイン王女は困った様に笑いながら話しているけど、バレたら大問題よ?
「元々、姉は人前に出る事がお嫌いで、アルスノウでも表舞台には滅多に出ません。アルスノウ国の国王陛下であるお父様が持って来た縁談も全てお断りしていまして……それで、今回の花嫁候補の儀につきましては、他国が絡んでいますので、そう簡単にお断りする事は出来ません。なので、姉の代わりに私が此処へ参り、姉のフリをしていますの」
「な、なるほど」
よくバレないなぁ。表舞台に滅多に出ない事が功を奏したのね。
「申し訳ありません。話が逸れてしまいましたわ。リディア様、私が貴女を此処へ呼んだ理由は、ミカル様と私も貴女に協力しようと思いまして、今日はお呼びしましたの」
「協力?」
エレイン王女の言葉に私は首を傾げる。
「私はミカル様から大体のお話は聞いております。しかし、ミカル様も全てお話出来る訳ではありませんので、聞いていると言っても、近い未来にこの世界が崩壊してしまうといったザックリとした内容なのですけれど」
「そうですね。言えるとするなら、私は全力でレティシアを守る為にいると」
「リディア様の従姉妹であり、今回の花嫁候補に一番近しい存在のレティシア・ヴィンセント侯爵令嬢ですね」
「やっぱり、レティは花嫁候補の中でも一番有力株なのね」
「ええ、ご一緒に受けております、花嫁修業も他の候補達に比べて評価は高いと思います。礼儀作法もマナーも全て完璧で優雅にこなしています」
「流石、レティシア!」
レティシアの事を褒められて、思わず声に出てしまった。
「取り乱してしまって、申し訳ありません」
「ふふっ、大丈夫ですよ。リディア様、何度もいうようで申し訳ありませんが、是非、私もリディア様とご一緒にレティシア様を守る為にご協力させて下さいませんか?」
先程からエレイン王女のいう協力は、正直有難い。でも、流石に一国の王女を協力者にするのはリスクが大きいのよねぇ。私も荷が重い。
「リディア様、一つ言い忘れていた事がありました」
「はい?」
エレインの言葉に私は首を傾げる。
「私もリディア様と同じ転生者ですの」
にっこりと笑いながら、またもや爆弾発言をかましてくるエレイン王女に、私は言葉にならず絶句した。
いやいや、エレイン王女。後出しが多過ぎない?!
「前世はリディア様と同じ日本で医療系の仕事をしていました」
「マジか」
同じ転生者で、今は懐かしい同じ日本人。思わず、本音が出てしまったが、エレイン王女は構わず話を続ける。
「私は事故で死んでしまったのですけど、前世での行いが良かったお陰で、たまたま、この世界に転生させてもらえる事になりまして。ですが7歳まで前世の記憶はなく、ごく普通の王女として暮していました。ある日神託があり、ミカル様から前世の記憶を戻してもらい、リディア様のお話と、この世界と乙女ゲームについて聞かせてもらいましたの。後は、最初にお話した通りです」
めっちゃ完璧人間じゃないですか。それに、ごく普通の王女って何?王女は王女でしょう。
「はぁ…」
「まあ、転生というだけで、本当は私に前世の記憶を戻すおつもりがなかったみたいで、神様がリディア様に協力する為に、急遽前世の記憶も戻して下さいましたの。それより、同郷仲間なのですから、敬語もおやめ下さいな。私の事も気軽にエレインとお呼び下さい」
笑顔で言ってくれるけど、貴女仮にも王女でしょうが。
「いやいや、同郷ですけど。ちょっと、軽過ぎないですか?!それに、王女殿下も敬語ですよね。私だけ敬語っておかしくないですか?!」
「前世の時から敬語で話すのが癖でして、お気になさらないで下さい」
「頭が追いつかない」
「ふふっ、一気に話してしまいましたものね」
頭を抱える私を横目に優雅に微笑みながら話すエレイン王女。その姿を見て、私は余計に頭が痛くなった。
「そう考え込まないで下さいな。リディア様にとっても良い話がありますの」
「まだ何かあるんですか?」
額に手を当てながら私はエレイン王女に問い掛ける。
もうこれ以上、何があるって言うのさ。
「お妃教育の時間、侍女は部屋には入る事が出来ませんよね」
「え、ええ」
そう、花嫁候補の儀では、お妃教育というものがある。そこで、知識、教養、礼儀作法などを学ぶのだが、その時間侍女は一緒にいる事が出来ず、部屋の外で待機するしかないのだ。
だから、レティシアの可愛らしい姿を見ている事が出来ない。これを知った時、私は屋根裏からレティシアの姿を見ようとして、ユラやディールに全力で止められた。
何でよ!見たいんだよ!!
「私はレティシア様とご一緒にお妃教育を受けております。お部屋もご一緒なので、レティシア様のお妃教育のご様子も知る事が出来ます」
羨ましぃいいいい!!レティが瞬きした回数も、欠伸をした姿も、悩んでいる時の顔も見ているなんて!!あの可愛らしい姿をずっと見れるなんて!!羨まし過ぎるわ!!
「そして、私がレティシア様のお妃教育でのご様子をリディア様に逐一、詳細に記した文書をお渡しし、その文書を元にリディア様に直接ご説明させて頂くのはいかがで「ご協力、よろしくお願い致します」
エレイン王女が話を言い終わる前に、私は即答でエレイン王女に協力してもらう事にした。
べ、別にレティシアの様子を知りたいとか、ご丁寧に詳細の書かれた文書まで貰えて、それを元に説明してもらえるのに釣られたとか、そんな不純な理由で協力してもらう訳ではない。
転生者であるエレイン王女が協力者になれば心強いし、そうすればレティシアの悪役令嬢断罪イベントが回避出来る。
これ以上ない、強力な助っ人だ!
「嬉しいですわ!リディア様、ご一緒にこの世界を、レティシア様をお救いしましょうね!」
「はい!可愛いレティシアの為に!」
レティシアを使って、エレイン王女に上手く丸め込まれたのは言うまでもない。エレイン王女は、ご機嫌な様子で私の手をぶんぶんと振り回していた。
「では、明日からレティシア様の様子をお伝えすれば宜しいでしょうか?」
「是非とも!あっ、エレイン王女殿下。私は今はレティシアに仕える普通の侍女でございます。ですので、リディアとお呼び下さい」
「では、リディちゃんと呼んでも構いませんか?」
「人目のつかない所であれば」
「仕方ありませんわね。では、私の事もエレインと呼んで下さいね!敬語もなしですよ」
「うっ、分かりました。善処します」
こうして、私は新しい仲間…いや、強力な助っ人を手に入れる事が出来たのだった。
その後、帰りが遅いとユラに責められ、前世の話は抜きにエレイン王女との出来事を説明したのは言うまでもない。
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